近年、不十分なインフラ管理による浄水の不足や、気候変動にともなう渇水や洪水の被害が問題となっています。数多くの事業を抱える東芝グループは、自然資本のなかで「水資源」に与える影響が大きい事業※を有しており、また、世界各地に活動の拠点があることから、「水リスク」への対応は、環境経営における重要な課題の一つです。そのため、企業活動に影響を及ぼす「水リスク」について評価・分析を行い、管理の強化に努めています。
また、東芝グループは、水受入量の抑制や水質汚濁の防止に向けた排水基準の管理徹底をすべての生産拠点で推進するほか、水リスクの低減に寄与する製品・サービスの提供を通じて各地域の水課題の解決に貢献します。
- 企業の自然への影響や依存度の大きさを把握するためのツール(ENCORE)を使い、土地・水・海の利用変化や、資源の利用、気候変動、汚染などの項目について事業領域別に影響度を評価。
水リスク評価
国内外のすべてのグループ生産拠点(約60拠点)を対象とし、水のリスクを「水量(水資源、地下水、渇水)リスク」、「水質リスク」、「水害リスク」、「規制・評判リスク」に分類し、評価を行っています。
評価にあたっては、まず、世界資源研究所(WRI)の水リスク評価ツール「Aqueduct」を用いた1次評価と、その結果を補完するためのアンケート調査を対象拠点に対して実施し、ハザードマップなどと合わせて、拠点ごとのデータを取得・整備したうえで、流域の水リスク(外部要因評価)を5段階(very High/High/Medium/Low/very Low)で評価しました。
次に、外部要因評価の結果がvery High又はHighを示したリスクレベルの高い拠点を対象に、取水量や排水量、生産高などの主要指標に基づく事業影響度(カテゴリ1~5)を加味して⾼リスク拠点(優先度1~4)を選定し、リスクの高い拠点を抽出しました。
水リスク評価フロー
高リスク拠点の分類
評価結果
それぞれの水リスクに対する評価結果の一覧は以下のとおりです。
※2023年度時点の評価結果。
対象拠点のうち、優先度1に抽出された拠点は下表に示す6拠点でした。これらの拠点では既に取水の抑制や、適切な排水処理、そしてBCP対策などを施し、リスクの低減に努めています。
優先度1に抽出された拠点
| 国 | 高リスクと評価された内容 | |
|---|---|---|
| 拠点A | 日本 | 水資源リスク、渇水リスク |
| 拠点B | 日本 | 排水水質に関する規制・評判リスク、洪水リスク |
| 拠点C | 日本 | 洪水リスク |
| 拠点D | 日本 | 洪水リスク |
| 拠点E | 日本 | 洪水リスク |
| 拠点F | フィリピン | 渇水リスク、排水水質に関する規制・評判リスク |
| 国 | 高リスクと評価された内容 | |
|---|---|---|
| 拠点A | 日本 | 水資源リスク、渇水リスク |
| 拠点B | 日本 | 排水水質に関する規制・評判リスク、洪水リスク |
| 拠点C | 日本 | 洪水リスク |
| 拠点D | 日本 | 洪水リスク |
| 拠点E | 日本 | 洪水リスク |
| 拠点F | フィリピン | 渇水リスク、排水水質に関する規制・評判リスク |
事業活動における水受入量の削減
東芝グループでは、水資源の有効利用を推進するために、「環境アクションプラン」において水受入量原単位の改善を目標に掲げています。
2024年度の水受入量は18.6百万m³、原単位は2022年度比で1.6%改善となりました。引き続き、蒸気排熱回収や冷却水の循環システム導入による水使用量削減をはじめ、工場内の排水や雨水を再利用するシステムの導入など、水資源の有効利用に取り組んでいきます。
事業活動における排水基準の徹底
排水に関しては法令による規制や自治体との協定、社内規定を遵守するために、規制よりも厳しい自主基準値に基づいて排水を管理しています。万が一、規制値を超える異常排水が発生した場合でも、構外に排水させないよう、緊急貯溜槽等に切り替える排水処理システムを設けています。
製品・サービスによる貢献
東芝グループは、新興国の都市部で増加する水不足や水質汚染などの問題に対応した水処理関連製品・サービスを提供し、持続可能な水循環システムの確立と環境先進コミュニティの創出に貢献していきます。

