東芝グループは、経営理念において「人間尊重」を基本とし、顧客・株主・従業員など、すべてのステークホルダーを大切にすることを宣言しています。「世界人権宣言」をはじめ、人権や労働などに関する普遍的な原則を支持し、健全な事業活動を通じて人権を尊重していきます。
取り組むべきKPIと実績
サステナビリティ推進者向け
人権セミナー・ワークショップ実施率
2022年度実績 | 100 %※1 |
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2023年度目標 | 100 %※1 + ※2 |
2023年度実績 | 100 %※1 + ※2 |
2022年度実績 | 100 %※1 |
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2023年度目標 | 100 %※1 + ※2 |
2023年度実績 | 100 %※1 + ※2 |
東芝グループ行動基準(SOC)における
人権教育受講率
2022年度実績 | 99 % |
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2023年度目標 | 100 % |
2023年度実績 | 99.6 % |
2024年度目標 | 100 % |
2022年度実績 | 99 % |
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2023年度目標 | 100 % |
2023年度実績 | 99.6 % |
2024年度目標 | 100 % |
人権デューディリジェンスの取り組み
(a) 自社ビジネスにおける人権影響評価の実施率
2022年度実績 | 100 %※1 |
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2022年度実績 | 100 %※1 |
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(b) 実態調査及び是正、防止、軽減策の実施率
2023年度目標 | 100 %※2 |
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2023年度実績 | N/A ※3 |
グループ会社向けリスクアセスメントプログラム(RAP)を活用した実態状況のモニタリング実施率※4
2024年度目標 | 100 % |
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- 東芝、東芝エネルギーシステムズ(株)、東芝インフラシステムズ(株)、東芝デバイス&ストレージ(株)、東芝デジタルソリューションズ(株)、東芝テック(株)、東芝エレベータ(株)、東芝ライテック(株)、東芝プラントシステム(株)が対象
- 人権影響評価で高リスクと特定されたグループ会社
- 実施率の数値化困難なため、N/A とする(実際の取り組みは本文参照)
- RAP対象会社(東芝グループの80%)
2023年度の主な成果
- 人権影響評価の結果に基づく施策について、グループ会社に対する人権RAP(リスク・アセスメント・プログラム)によるモニタリングを強化した。
- 役員と国内外の全従業員向けに人権講演会(オンライン)を開催し、グループ全体での人権に関する理解深耕を図った。
- 英国・豪州の現代奴隷法対応は対象会社ごとの対応から東芝グループの姿勢を示す内容のジョイント・ステートメントとした。
人権の尊重に関する方針
東芝グループは、東芝グループ行動基準において人権の尊重を第1項に定めて、人権に配慮した企業活動を行うことを宣言しています。2022年3月には、東芝グループの人権に対する姿勢や取り組みをより明確化するため、「東芝グループ人権方針」を策定しました。企業活動が人権にインパクトを与えることを理解し、東芝グループの企業活動にかかわるすべてのステークホルダーの人権を尊重することで、企業としての責任を果たしていきます。
方針の策定にあたっては、国連グローバル・コンパクトの署名企業として、国際規範やガイドラインを参照しています。また、人権影響評価の結果や人権を専門とした外部機関の意見をふまえ、注力すべき人権項目を「1. 差別」、「2. ハラスメント」、「3. 安全健康」、「4. 強制労働」、「5. 児童労働」、「6. 個人情報・プライバシー」、「7. 腐敗」、「8. 結社の自由および団体交渉権」、「9. テクノロジー・AIに関する人権問題」、「10. 環境・気候変動に関する人権問題」と認識して取り組んでいます。
本方針は、東芝グループ行動基準及び東芝グループサステナビリティ基本方針を補完する関係にあり、役員・従業員を含む東芝グループで働くすべての者に適用し、かつ、すべての関係者(ビジネスパートナー、調達取引先及びその関係者)に対しても本方針を伝え、方針内容に沿った活動を求めていきます。
なお、本方針の運用責任は、サステナビリティ担当役員が担っています。
企業活動において参照している人権関連の国際的規範やガイドラインなど
- 世界人権宣言
- OECD多国籍企業行動指針
- 責任ある企業行動に関するOECDデュー・ディリジェンス・ガイダンス
- 国連ビジネスと人権に関する指導原則(UNGP)
- 国連指導原則報告フレームワーク
- 労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言
- 多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言(ILO)
- 子どもの権利条約
- 国連グローバル・コンパクト
- ISO26000(社会的責任に関する手引)
- GRIスタンダード
- RBA (Responsible Business Alliance:責任ある企業同盟) 行動規範
人権を尊重するための体制
東芝グループは人権をマテリアリティの一つに掲げて、人権尊重の取り組みを進めています。サステナビリティ担当役員監督のもと、経営企画部サステナビリティ担当が東芝グループに必要な人権に関する施策を立て、実行しています。また、人権に関する週次定例会議を開催し、人事・総務部門、グループ調達部、法務・コンプライアンス部の人権担当者とグループ会社での取り組みや課題などについて検討し、世界動向など関連する情報を共有しています。今後は人権と環境の関連性を理解して適切に対応していくために、環境部門とも連携していく予定です。
派遣社員や嘱託社員を含む東芝グループ従業員の人権と労働に関する具体的な取り組みと人権研修は、人事・総務部が担っています。
サプライチェーンにおける人権尊重への取り組みは、調達部門が「東芝グループの調達方針」に基づき、調達取引先(サプライヤー)に対して人権への配慮を依頼し、ともに企業の社会的責任を果たす取り組みを推進しています。
人権の課題やリスクについては、法務部門と対応する体制を整えています。
東芝グループとサプライチェーンの人権の取り組みは、サステナビリティ推進の一環として、代表取締役社長執行役員CEOを委員長とするサステナビリティ戦略委員会で審議し、必要な決定を行っています。なお、取締役会は同委員会で審議・決定した内容の報告を受け、監督しています。
人権デューディリジェンス
人権影響評価
東芝グループではUNGPに則り、人権デューディリジェンスを行っています。その一環として、米国のサステナビリティ推進団体であるBSR(Business for Social Responsibility)の協力のもと、事業別の人権影響評価(インパクト・アセスメント)を2014年度、2017年度、2022年度に実施しました。
人権課題への取り組み
2022年の人権影響評価で抽出された課題については、人権の国際規範やガイドラインなどに基づき負の影響の防止・低減、是正などの施策を講じて取り組んでいます。課題への取り組みを通じて、人権尊重の重要性を東芝グループ全体に深く根づかせ、人権を重視する企業として社会的責任を果たしていきます。
東芝グループの人権課題
対象 | 従業員/サプライヤー | お客様/地域社会 |
---|---|---|
人権課題 | 労働環境 | コミュニティ・先住民族に対する影響 |
社会的保護 | 製品のエンドユーザーに対する影響 | |
差別、ハラスメント、機会均等 | 製品の安全性と環境に対する影響 | |
結社の自由 | プライバシー保護 | |
児童労働 | サイバーセキュリティの影響 | |
強制労働、現代奴隷 | AI活用の影響 | |
外国人労働者 | ||
労働安全衛生 |
対象 | 従業員/サプライヤー | お客様/地域社会 |
---|---|---|
人権課題 | 労働環境 | コミュニティ・先住民族に対する影響 |
社会的保護 | 製品のエンドユーザーに対する影響 | |
差別、ハラスメント、機会均等 | 製品の安全性と環境に対する影響 | |
結社の自由 | プライバシー保護 | |
児童労働 | サイバーセキュリティの影響 | |
強制労働、現代奴隷 | AI活用の影響 | |
外国人労働者 | ||
労働安全衛生 |
● 労働環境の整備と基準の遵守
人事・総務部では、従業員の人権に配慮した労務管理を行い、労働基準を遵守する体制をとっています。人事・総務担当執行役員を責任者とするリスク・コンプライアンス委員会人事・総務分科会を半期ごとに開催し、「人権・ハラスメント」、「個人不正」、「安全衛生・労災」、「長時間労働」、「有期限雇用管理」、「労務トラブル」、「派遣法・職安法」などのテーマについて、課題やリスク、法令などの違反状況と改善策などを確認しています。また、同分科会では人権教育に関する各種施策やその実績について審議しています。今後も継続的に従業員の労働環境を整備し、従業員のディーセント・ワークを推進しています。
● 児童労働、強制労働など現代奴隷への対応
東芝グループでは、東芝グループ行動基準において児童労働と強制労働を認めていません。また、東芝グループ人権方針では児童労働、強制労働を重要項目に掲げ、サプライチェーン対応を含めて、禁止に向けた取り組みを進めています。
英国及び豪州の現代奴隷法に対しては、東芝グループとして「奴隷・人身取引に関する声明」※を公表しています。
- 本ステートメントには、東芝の子会社で東京証券取引所に上場している東芝テック(株)及びその子会社を含みません。東芝テックグループは、ステートメントを別途発行しています。
● 外国人労働者
外国人労働者や移民労働者、また外国人技能実習生は労働を搾取されたり、強制労働を強いられたりする立場に陥りやすいことから、東芝グループでは優先的に取り組むべき課題と認識しています。
国内グループ会社ではベトナムから外国人技能実習を受け入れており、2022年には実習生に直接インタビューを実施しました。インタビューはBSRに実施いただき、国内関連法令には不足なく対応していることを確認し、指摘事項は2022年度中に改善しました。受け入れ会社では実習生と定期的に対話を行い、2023年度は一部の実習生を寮で一人部屋とするなど、実習生の生活環境を向上させる対応を行っています。
外国人労働者の多くが負担しているといわれる採用手数料については、今後、国内外グループ会社での確認を進め、有識者の意見や国際規範をふまえて具体的な施策を検討していきます。
● 労働安全衛生
東芝グループでは、安全で快適な職場環境を整備し、従業員の心身の健康保持・増進をサポートしています。
● 地域住民に対する影響
東芝グループは、事業を継続して地域社会と共存していくためには、事業拠点周辺地域住民や先住民の権利を尊重することが重要と認識し、さまざまな施策を実施しています。新規プロジェクトの開始前には環境影響評価を行ったり、事業活動にともなって発生する環境負荷の影響を最小にするよう努めています。また、各国・地域の環境法規制を遵守し、地域の環境保全に万全を期し、地域住民の人権にも影響が及ぶ可能性のある環境に配慮しています。なお、地域住民や先住民からの人権にかかわる通報・相談については、救済の仕組み(グリーバンスメカニズム)を導入しています。
● 課題に関するその他の取り組み
モニタリング
東芝グループでは、人権RAP(リスク・アセスメント・プログラム)を活用して国内外グループ各社での人権の取り組みや実態を毎年モニタリングし、是正や再発防止につなげています。2023年度は144社(国内外連結対象会社の80%)を対象に実施しました。児童労働や強制労働、労働時間、賃金、安全健康管理、ハラスメント問題への対応など16問の調査を行った結果、67社へ追加調査が必要となりましたが、最終的にいずれの会社においても問題がないことを確認しています。人権RAPの取り組みは、リスク・コンプライアンス委員会人事・総務分科会へ報告し、同分科会で審議されます。また、同分科会の内容はその他の人事・総務部案件と合わせて、リスク・コンプライアンス委員会へ報告を行っています。今後もモニタリングは継続して、人権問題の発生を未然に防ぐ施策の一つとして強化していきます。
調達取引先の人権デューディリジェンスは調達部門が実施しています。その過程で見つかった人権課題リスクと対策などは経営企画部サステナビリティ推進担当、人事・総務部、法務・コンプライアンス部と共有して、バリューチェーン全体で人権に配慮する取り組みを図っています。
東芝グループでは、事業活動が人権に与える影響について今後も理解を深め、ステークホルダーエンゲージメントなどを通じて負の影響の防止・軽減に向けた取り組みを継続していきます。
人権を尊重するための研修・啓発
東芝グループでは、人権教育は課題解決に向けた重要施策の一つとし、人権尊重の更なる意識啓発をめざして、人権研修を実施しています。
「人権の尊重」e-ラーニング
国内外グループ会社の役員と従業員(派遣社員や嘱託社員を含む)を対象に、毎年「東芝グループ行動基準」の第1項「人権の尊重」と「東芝グループ人権方針」及び「東芝グループ調達方針」について毎年e-ラーニングを必修としています。2023年度は各方針の内容、児童労働や強制労働の課題、ビジネスと人権に関する世界の動向、企業が果たすべき責任、また、ハラスメントの禁止やダイバーシティ&インクルージョンの推進などを網羅しています。2023年度の受講率は国内外東芝グループで99.6%でした。e-ラーニングで受講できない従業員向けには、e-ラーニング教材を基にした冊子を配布し、グループ全体で人権尊重の理解浸透を図っています。
「ビジネスと人権」オンラインセミナー
毎年12月は東芝グループサステナビリティ月間※の行事として、世界人権デーの12月10日を含む人権週間のなかで、「人権週間記念講演会」を開催しています。2023年度は「ビジネスと人権-責任ある持続可能な事業活動に向けて-」と題し、国連開発計画(UNDP)ビジネスと人権リエゾンオフィサー佐藤暁子氏にご講演いただき、企業に求められる対応について理解促進を図りました。また、この講演のビデオには英語字幕を入れて社内ウェブサイトに掲載し、国内外のグループ会社役員・従業員が受講できるようにしました。開催後に実施したアンケートでは、受講者の85%以上から人権の理解が深まったという回答がありました。「人権を自分事化しようと思った」、「環境が人権に影響することが理解できた」というコメントがあった一方で、「慣れない用語が多くてわかりづらかった」といった意見もあり、今後、研修を検討する際の参考にしたいと考えています。
※東芝グループでは毎年12月をサステナビリティ月間と定めて、役員・従業員全員でサステナビリティを考えるためのイベントなど、さまざまな取り組みを行っている。
「ビジネスと人権」オンラインセミナー
人権を尊重する職場づくりに向けた研修
先述のe-ラーニングによるグループ全社共通教育に加えて、日本国内の東芝グループ会社では、「一般者・役職者研修」、「新入社員研修」、「資格昇格者研修」など各種研修のなかで、さまざまな人権問題を取り上げています。また、役職者にはハラスメント発生時の対応などを研修課題に入れて、人権を尊重し、差別のない職場づくりをめざしています。2023年度は170回(前年比20%増)実施し、のべ32,000人(前年比75%増)が参加しました。
ハラスメント相談窓口担当者向け研修
東芝グループでは、就業規則や労働協約においてセクシャルハラスメント、パワーハラスメントなど職場でのいじめや嫌がらせを含めたハラスメントを禁止し、その行為者に対しては懲戒に処することを定めています。
また、事業場やグループ会社ごとに相談窓口を設置し、窓口担当者向けの差別やハラスメントに関する研修を毎年実施しています。2021年度はパワーハラスメントをテーマに相談事案の特徴や事例を共有し、ケーススタディを通して相談窓口として意識すべき感情コントロールについてオンラインで研修を行いました。2022年度、2023年度はLGBT+をテーマとして、LGBT+に関する最近の動向や相談を受ける時のポイントについて、ケーススタディを交えながらオンラインで研修を行っています。
ハラスメント相談窓口担当者向け研修
人権リスクマネジメント事例集による啓発
社内ウェブサイト上に人権侵害に関連する外部事例を掲載し、従業員の意識啓発を図っています。リスク管理のポイントや、関連法令などをわかりやすくまとめて紹介しています。
通報・相談・救済のための窓口
東芝グループは、従業員や取引先からの人権にかかわる内部通報や相談を受け付ける窓口を設置しています。すべての窓口において、プライバシーに十分配慮した迅速かつ適切な対応を行い、守秘義務を徹底し、相談者への報復行為など不利益な取り扱いを禁止しています。
地域社会や顧客、直接取引関係のない2次以降の取引先を含むあらゆるステークホルダーからの人権に関する苦情・相談については、一般社団法人ビジネスと人権対話救済機構(JaCER)の「対話救済プラットフォーム」を活用しています。JaCERはUNGP(国連ビジネスと人権に関する指導原則)に準拠した非司法的な苦情処理プラットフォームを提供し、専門的な立場から会員企業の苦情処理・救済の支援・推進をめざす組織です。東芝グループは2022年10月よりJaCERの正会員となり、このプラットフォームを通して通報・相談の対応の公平性・透明性を図り、適切に対処しています。
従業員対象
- 「東芝相談ホットライン」
- 「東芝グループ海外ホットライン」
- 「ハラスメント相談窓口」
取引先対象
- 「クリーン・パートナー・ライン」
ステークホルダー対象
- グループ従業員からの人権に関する通報は、本プラットフォームではなく、東芝相談ホットライン(国内・海外)、ハラスメント相談窓口で受け付ける運用としています。
上記窓口を含む東芝グループの通報制度詳細と通報件数
ステークホルダーとともに進める活動
国際機関やNGO、人権推進団体が取り組む人権尊重の活動に積極的に参加し、今後も対話を通じて、東芝グループの人権への取り組みを強化していきます。
- GCNJ(グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン)
- BSR (Business for Social Responsibility)
- RBA(Responsible Business Alliance)
- JEITA(一般社団法人 電子情報技術産業協会)
- JP-MIRAI (責任ある外国人労働者受入れプラットフォーム)
- JaCER(一般社団法人ビジネスと人権対話救済機構 )