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東芝グループ マテリアリティ
東芝グループ マテリアリティ

イノベーション創出のための研究開発の強化

東芝グループは、創業以来、事業を通じて社会課題の解決に取り組んでいます。グループの強みである技術と開発のダイバーシティを活かし、エネルギー、インフラ、デバイスといった事業領域を核にデータの力を重ね合わせることで、そのポテンシャルを最大限に発揮させながら、カーボンニュートラルとサーキュラーエコノミーを実現するイノベーション創出に向けた研究開発を強化しています。

2023年度の主な成果

  • 佐賀市のCO2分離回収商用設備で、耐久性が高く環境にやさしいCO2吸収液の実証運転を完了
    ~新吸収液を用いたCO2分離回収設備の販売開始~
  • ベカルトと東芝、グリーン水素製造を促進するPEM水電解装置用MEA技術に関するパートナーシップ契約を締結
  • 「Green x Digitalコンソーシアム(事務局:JEITA)」主催の「仮想サプライチェーン上におけるCO2データ連携」実証試験フェーズ2にて、CO2データの算定・データ連携に成功
  • 研究開発新棟「イノベーション・パレット」で省エネとセキュリティを進化させる先進実証を開始

研究開発の方針

東芝グループは、「人と、地球の、明日のために。」の経営理念のもと、カーボンニュートラル・サーキュラエコノミー社会の実現、安心・安全な社会インフラの実現のために、確かな技術力に支えられた製品・ソリューション・サービスをつくりあげていきます。東芝グループの強みである技術のダイバーシティを最大限活用し、技術力の源となる技術人材の適切な動機づけ・育成に取り組みながら、コアとなる強いフィジカル技術を創出・発展させ、また、ソフトウェアディファインド(Software Defined)という考えに基づき、デジタル化(DE・DX・QX)を推進することで、つながるデータ社会の構築、新たな製品・ソリューション・サービスによりお客様の価値を創出し続けます。

詳細は以下ウェブサイトをご覧ください。
 

研究開発体制

東芝グループの研究開発の体制は、東芝の研究開発部門と主要グループ会社の研究開発部門及び設計・技術部門からなり、研究開発を各部門で機能分担し効率よく進めています。東芝の研究開発部門では、中長期的な視点で基盤技術を深め、新規事業領域の研究や革新的かつ先行的な研究開発に取り組んでいます。

主要グループ会社の研究開発部門及び設計・技術部門では、事業ドメインの基盤技術を支え、事業計画に則った新たな商品や差異化技術の開発、及び顧客ニーズをとらえた商品化・量産化に取り組んでいます。これら部門の密接な連携により、市場に商品を送り出しています。

当社グループが経営方針に掲げるデジタル化を通じたカーボンニュートラル・サーキュラーエコノミー(以下、CN・CE)の実現を加速するために、ドイツのデュッセルドルフに新しい技術拠点「Regenerative Innovation Centre(リジェネラティブ・イノベーションセンター)」を開所しました。

新技術拠点は、CN・CEにかかわる技術開発や社会実装を重視する欧州地域の中核の技術拠点として、先端的な技術開発、当社グループが保有する技術の社会実証、標準化活動などをパートナーとともに推進していきます。これらの取り組みを通じて、欧州コミュニティへ参画し、パートナーとの関係を深め、科学・工学・経済・社会などの多面的視点でCN・CEにかかわる社会課題の解決に取り組み、欧州地域及びグローバル社会におけるCN・CE実現への貢献をめざします。電池・半導体などの「デバイス分野」、再生可能エネルギー・水素・エネルギーマネジメントなどの「エネルギー分野」、CO2の除去にかかる回収・輸送・貯留・利活用などの「カーボンネガティブ分野」、そして、エネルギー・CO2データなどを活用した「デジタルプラットフォーム分野」などの技術分野での活動を計画しています。

本社研究組織体制図

研究開発費

東芝グループでは、イノベーション創出のための研究開発の強化をマテリアリティと定めています。
東芝グループの売上高に対する研究開発費率は、約5%で推移しています。

研究開発費対売上高比率

2018年度 2019年度 2020年度 2021年度 2022年度
2023年度
4.5% 4.7% 4.9% 4.6% 4.7% 4.9%
2018年度 2019年度 2020年度 2021年度 2022年度
2023年度
4.5% 4.7% 4.9% 4.6% 4.7% 4.9%

研究開発費内訳(2023年度)

社会課題の解決に貢献する研究開発事例

佐賀市のCO2分離回収商用設備で、耐久性が高く環境にやさしいCO2吸収液の実証運転を完了
~新吸収液を用いたCO2分離回収設備の販売開始~
貢献する社会課題 : 気候変動への対応


東芝エネルギーシステムズ(株)は、2023年3月から2024年3月まで、CO2分離回収設備に用いられる高性能なCO2吸収液の開発を佐賀市と共同で実施し、開発を完了しました。この実証運転で良好な試験結果を得られたことにより、新吸収液「TS-X™」を製品化し、CO2分離回収設備の拡販を進めていきます。
当社は、2016年に佐賀市清掃工場に納入したCO2分離回収商用設備※1を用いて、新吸収液を活用し、合計8,000時間以上の運転を行いました。設備は長期間使用するため、吸収液の性能向上によるCO2分離回収設備の維持管理費抑制が求められます。実証運転では、吸収液の劣化速度及び大気中へのアミン成分排出量について比較を実施し、新吸収液の劣化速度は従来の3分の1まで、アミン成分排出量は10分の1程度にまで低減することを確認しました。
また、当社製パイロットプラントでも新吸収液の性能試験を並行して行い、天然ガス火力発電のように排ガス中のCO2濃度が低い領域で、現行の吸収液に比べ、特に回収エネルギーを低減できることを確認しました。
当社は、カーボンニュートラルの実現に向け、CO2分離回収技術開発によりCCUS※2の社会実装を支えてまいります。

佐賀市清掃工場CO2分離回収設備の写真

(写真提供:佐賀市様 2021年3月撮影)

ベカルトと東芝、グリーン水素製造を促進するPEM水電解装置用MEA技術に関するパートナーシップ契約を締結
貢献する社会課題 : 気候変動への対応


東芝エネルギーシステムズ(株)とベカルト社は、戦略的協業契約及び固体高分子形水電解装置(以下、PEM電解装置)の主要部品である膜電極接合体(MEA)の製造技術ライセンス契約を含むグローバルパートナーシップを締結することで合意しました。
PEM電解装置は、電気を利用して水を酸素と水素に分解します。電力が再生可能エネルギー源の場合、温室効果ガスを排出することなく水素を製造することが可能です。本電解装置の触媒には、最も希少な金属の一つであるイリジウムが使用されています。そのため、イリジウム含有量を削減するソリューションは、これらの技術を大規模に採用するための重要なブレイクスルーとなります。
今回の契約締結により、PEM電解装置用MEAの主要部品であるチタン不織布(PTL)におけるベカルト社の優れた専門知識と、東芝グループの革新的な省イリジウム技術が組み合わされ、PEM電解装置の製造におけるイリジウム使用量の90%削減が可能となります。このイリジウム削減により、MEAの安定供給が可能となり、グリーン水素製造の拡大に貢献します。

東芝のMEAのイメージ画像

「Green x Digitalコンソーシアム(事務局:JEITA)」主催の 「仮想サプライチェーン上におけるCO2データ連携」実証試験フェーズ2にて、CO2データの算定・データ連携に成功
貢献する社会課題 : 気候変動への対応


東芝と東芝デジタルソリューションズ(株)は、一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)が事務局を務める 「Green x Digitalコンソーシアム」主催の「仮想サプライチェーン上におけるCO2データ連携」実証試験フェーズ2に参加し、CO2データの算定・データ連携に成功しました。

今回の実証実験では、同コンソーシアムの見える化ワーキンググループが策定したCO2データ※1算定方法と、「CO2可視化フレームワーク」及び「データ連携のための技術仕様」※2に基づき、仮想サプライチェーン上でCO2データの算定・送受信・可視化を行いました。これらは、国際的な取り組みであるWBCSD Partnership for Carbon Transparency(PACT)※3と連携し、グローバルレベルでの相互運用性を確保しつつ、更新されていくものとされています。

今後、東芝と東芝デジタルソリューションズ(株)は、今回得られた知見を土台にして、気候変動や環境問題に積極的に対応する製造業を支援する解決策を発案し、ユーザ企業が効率的にCO2データの流通に利用できる環境や、データ提供企業のメリットがわかる活用サービスを完備するサプライチェーンネットワーク環境を提供できるようめざします。

研究開発新棟「イノベーション・パレット」で省エネとセキュリティを進化させる先進実証を開始
貢献する社会課題 : 気候変動への対応、サイバーレジリエンス


東芝は、2024年1月に開所した研究開発新棟「イノベーション・パレット」の執務エリアにおいて、カーボンニュートラル及び安心・安全なセキュリティの実現に向け、人流などを推定して照明や空調などを快適かつ最適に制御する「省エネ実証」と、映像解析AI、ロボット、及び建物設備を連携させた「セキュリティ実証」を開始しました。省エネ実証では、運用デジタルツイン※1を活用して快適性とエネルギー削減を同時に実現し、照明や空調の最適化を行います。自社の設備に加え、他社の設備も含めた柔軟なサービスの検証が可能です。また、セキュリティ実証では、映像解析AIによる多数映像の同時監視や、セキュリティロボットと建物設備の連携による広範囲巡回により、警備の自動化と安心・安全を両立させています。研究開発新棟は、研究者などの執務空間にとどまらず、お客様やパートナーとの共創の場としても活用され、カーボンニュートラルや社会課題の解決に貢献していく予定です。

  • 運用デジタルツイン
    デジタルツインとは、センシング技術とAIを活用して実世界で起こっている事象をバーチャル上にリアルタイムに再現し、過去・現在・未来を、運用中にシミュレーションするもの。特に「運用デジタルツイン」では、現場の実機と連携し、ライブデータを用いたシミュレーション結果を現場の運用・制御に反映することが可能。