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自然共生社会の実現に向けて

東芝グループの事業活動は、水リスクの高い地域に立地する事業所や、製造時に多くの水や化学物質を使用・排出する事業所を有するなど、自然資本の存在と深く関係しあっていることから、私たちは「生態系への配慮」をマテリアリティの一項目として掲げ、「環境未来ビジョン2050」のもと、ネイチャーポジティブ※1に寄与する活動を展開し、自然と人間が調和して暮らし、生態系からの恵みを享受し続けられる社会の構築に貢献したいと考えています。

※1 生物多様性の損失を食い止め、反転させ、自然を回復軌道に乗せること。

ガバナンス

東芝グループは環境経営推進体制を構築し、「生態系への配慮」に向けた取り組みをグループ全体で推進しています。生物多様性保全や水資源・化学物質の適正管理に関する環境アクションプラン及び重点施策は東芝グループ地球環境会議で策定及び進捗確認を行い、その内容をサステナビリティ戦略委員会及び取締役会へ報告しています。

戦略

東芝グループは、当社の保有する製品・技術やソリューションの提供により世界各地の生態系保全に貢献していくことをめざします。また、長年にわたり環境アクションプランのなかで活動を推進してきた生物多様性保全並びに水資源・化学物質の適正管理を、今後も全社共通活動として推進していきます。
更に、「ダブル・マテリアリティ」の観点で「自然が事業活動に与える影響」及び「事業活動が自然に与える影響」の両面を評価していくために、2023年9月に自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)から発行された最終提言を参照し、LEAPアプローチ※2に基づく事業活動による自然への依存と影響の評価、将来的に発生する可能性がある自然に関するリスクと機会の特定、対応策の検討を進めています。

※2 TNFDが推奨するLocate(発見する)、Evaluate(診断する)、Assess(評価する)、Prepare(準備する)の4つのステップであり、自然との接点、自然との依存関係、インパクト、リスク、機会など、自然関連課題の評価のための統合的なアプローチ。


(1)自然資本への依存と影響の評価


<Step1:スコーピング>
事業戦略における中期計画で示されている事業領域の中から、以下の事業領域における国内外の生産拠点(直接操業)約60拠点を主な対象としました。なお、デジタルソリューション領域は、生産拠点を持っていないことから今回の評価対象から除外しています。

<対象>

  • エネルギーシステムソリューション領域
  • インフラシステムソリューション領域
  • ビルソリューション領域
  • デバイス&ストレージソリューション領域
  • リテール&プリンティングソリューション領域
  • その他(電池事業等)

<Step2:評価/ヒートマップ作成>
各生産拠点の事業内容における依存と影響を明らかにするため、TNFDのフレームワークで使用が推奨され、事業活動が生態系に及ぼす影響の有無とその大きさを分析するツール ENCORE※3を用いてスコアリングを実施し、表1及び表2に示すヒートマップを作成しました。
なお、評価にあたっては、各生産拠点の所有事業を国際標準産業分類(ISIC)に基づく分類に振り分け、自然との依存・影響関係を3段階(高・中・低)で評価し、一部結果においては、各事業の活動実態を基に東芝グループ内における相対的な評価を行い、補正を加えています。

※3 自然関連リスクへのエクスポージャー(曝露)を調査し、自然への依存と影響を理解するために役立つツール。評価にあたっては、2024年7月に更新された最新のデータベースを使用。ENCORE(UN Environment Programme (UNEP))

「依存」に関するヒートマップ(表1

「影響」に関するヒートマップ(表2

本結果により、当社グループの生産拠点において、水供給などの「供給サービス」や、固体廃棄物の浄化や大気と生態系による希釈、降雨パターンの調整などの「調整サービス」に「依存」していること、そして、工場での取水や温室効果ガス(GHG)・非GHG大気汚染物質の排出、土壌・水質の汚染、廃棄物の発生、騒音など自然の状態に「影響」を及ぼす可能性があることを再認識しました。


(2)優先拠点の抽出


続いて(1)の評価で識別した「依存」や「影響」の度合いが大きい項目に対して、関連するツール・指標を用いて活動場所(拠点住所)の評価を行い、事業規模や関連する環境データをふまえた優先拠点の抽出を行いました。なお、評価にあたっては、活動場所の自然状態や生物多様性の状態を示す共通指標(IBAT※4、Biodiversity Risk Filter※5)と、各項目の個別指標(Aqueduct※6, Biodiversity Risk Filter, Water Risk Filter※7)をそれぞれ評価し、両評価における最大値を用いています。
本結果により抽出した、自然への「依存」及び自然に及ぼす「影響」に関して東芝グループ内で優先的に考慮すべき項目と拠点数は以下のとおりです。この結果をふまえ、今後はLEAPアプローチに沿って将来的なリスクと機会を整理し、新たな気づきの発見や指標・目標の設定に努めていきたいと考えています。

<自然への依存>
項目 優先的に考慮すべき拠点(優先拠点)の数 優先拠点が立地する国
水供給 2拠点 日本
固体廃棄物の浄化※8 3拠点 日本、タイ
大気と生態系による希釈※9 1拠点 日本
降雨パターンの調整※10 1拠点 日本
<自然への依存>
項目 優先的に考慮すべき拠点(優先拠点)の数 優先拠点が立地する国
水供給 2拠点 日本
固体廃棄物の浄化※8 3拠点 日本、タイ
大気と生態系による希釈※9 1拠点 日本
降雨パターンの調整※10 1拠点 日本
<自然に及ぼす影響>
項目 優先的に考慮すべき拠点(優先拠点)の数 優先拠点が立地する国
水資源の利用 4拠点 日本、タイ
非GHG大気汚染物質の排出 3拠点 日本、アメリカ、中国
土壌汚染物質及び水質汚染物質の排出 13拠点 日本、アメリカ、中国、インド、ベトナム
固形廃棄物の発生と排出 2拠点 日本
<自然に及ぼす影響>
項目 優先的に考慮すべき拠点(優先拠点)の数 優先拠点が立地する国
水資源の利用 4拠点 日本、タイ
非GHG大気汚染物質の排出 3拠点 日本、アメリカ、中国
土壌汚染物質及び水質汚染物質の排出 13拠点 日本、アメリカ、中国、インド、ベトナム
固形廃棄物の発生と排出 2拠点 日本

なお、上記の結果は将来起こりうるリスクに対して優先的に考慮すべき拠点を抽出したものであり、現在リスクが発生している拠点を示すものではありません。東芝グループでは日本も含め世界各地の拠点において、汚染防止に向けた自主管理基準値の設定・管理など、リスク低減に向けた活動を徹底しています。

※4 地域毎の生物多様性や重要生息地に関する具体的情報を提供するツール。Integrated Biodiversity Assessment Tool (IBAT)(外部サイト)
※5 地域毎の生物多様性リスクを特定・評価するツール。WWF Biodiversity Risk Filter(外部サイト)
※6 グローバルな流域水リスクを特定・評価するツール。World Resources Institute(外部サイト)
※7 グローバルな流域水リスクに加えて操業上の水リスクを特定・評価するツール。WWF Water Risk Filter(外部サイト)
※8 微生物、植物、藻類などの生物が汚染物質を分解・低減・無害化することで環境汚染を浄化する自然の作用のこと。
※9 事業活動により発生するガス、液体、固形廃棄物が、水(淡水・塩水)と大気によって希釈される作用のこと。
※10 亜大陸スケールでの蒸発散を通じて降雨パターンを維持する植生、特に森林の作用のこと。

リスク管理

水や生物多様性等の生態系に関連したリスクも含め、経営に大きな影響を及ぼすビジネスリスクについては、事業遂行上の経営判断において、東芝グループの持続的成長と企業価値向上を目的とした経営判断基準、許容できるリスク範囲、事業撤退の考え方を明確化し、「ビジネスリスク検討会」において案件ごとにリスクチェックの実施、最大リスクの確認、モニタリング項目の設定を行っており、特に重要度の高い案件は経営会議で審議する仕組みとしています。ビジネスリスク検討会は月に複数回、案件が発生するごとに開催されます。
また、東芝グループの生産拠点は操業に水資源を利用しているため、水不足等の水リスクへの対応も重要課題の一つと考えています。そのため、事業継続性(BCP)の観点から、国内外の全生産拠点(約60拠点)を対象とした評価・分析を行い、その結果を拠点のリスク低減計画に反映するなど、管理の強化に努めています。

指標と目標

LEAPアプローチに基づく目標設定については、今後検討を進める予定です。
現在は東芝グループ環境アクションプランにおいて、生物多様性保全、水資源、化学物質に関する目標値を設定し、進捗を管理しています。