知的財産に関する取り組み

東芝グループのもつ知的財産(知財)を適切に管理し、活用していくことは、企業価値向上には欠かせないと考えています。
東芝グループでは、知財を戦略的に活用し、DE,DX,QXの実現とともに、社会課題解決の機会拡大と、企業価値の向上をめざしています。

2022年度の主な成果

  • 「Clarivate Top 100 Global Innovators™」に12年連続選出
  • 令和4年度全国発明表彰 「発明賞」受賞
  • リチウムイオン二次電池関連技術の特許総合ランキングで日本・米国・欧州全てにおいて1位を獲得
  • 「東芝グループ特許大会2022」を開催 特に優れた発明9件の表彰と、オンライン形式による特別講演、ウェビナーを実施

知的財産に関する方針と戦略


知的財産に関する方針

東芝グループでは、「知的財産権に関する法令を遵守すること」、「会社の知的活動の成果を知的財産権によって保護し、積極的に活用すること」、「第三者の知的財産権を尊重すること」を知的財産の基本方針として「東芝グループ行動基準」で定めています。

知的財産権に関する方針


1.東芝グループの基本方針

(1)特許法、著作権法その他知的財産権 注)に関する法令を遵守します。

(2)会社の知的活動の成果を知的財産権によって保護し、これを積極的に活用するとともに、第三者の正当な知的財産権を尊重します。
 

2.東芝グループ役員・従業員の行動基準

(1)事業競争力強化のため、知的財産権を積極的に獲得し、活用します。

(2)職務発明、職務考案、意匠の職務創作、プログラムその他の著作物の職務著作、半導体集積回路の回路配置に関する職務創作についての出願権または知的財産権は会社に帰属することを定めた諸規程を理解し、遵守します。

(3)知的財産権を適正に管理し、第三者による侵害に対して適切な措置を講じます。

(4)第三者の正当な知的財産権を尊重します。

注)  知的財産権:特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、回路配置利用権、営業秘密等をいいます。

知的財産に関する戦略

東芝グループでは、知財を戦略的に活用し、DE,DX,QXの実現とともに、社会課題解決の機会拡大と企業価値の最大化をめざしており、「全体を俯瞰した知財戦略の構想」、「知財の再構築」、「知財のオープン化」のサイクルを推進しています。
「全体を俯瞰した知財戦略の構想」は、DE/DXへの変革とデータの利活用を考慮し、環境変化、当社保有のコアバリュー(知的資産)状況、事業戦略などあらゆる視点から全体を俯瞰し、事業構想の上流段階から知財をどのように活用して顧客価値に結び付けていくのか構想します。この取り組みは、内部硬直性の打破にもつながる最も重要なステップになります。
「知財の再構築」は、構想した知財戦略の実行にあたり、特許、データ、ノウハウなどの知財アイテムの整備のステップになります。保有する知財アイテムを把握・整理した後に、不足する知財アイテムがあれば取得し、知財ポートフォリオの最適化を行います。これにより保有する知的資産の質を高めていくことができます。また、データやノウハウについては機密情報の管理が必要不可欠であるため、漏洩しないように管理(秘匿化)を徹底しています。
「知財のオープン化」は、知財を活用し、パートナーとの共創のステップになります。当社単独では到底解決できない社会課題においても、パートナーとの共創により成し得ることができます。このため、当社では、知財を起点としてパートナーとの共創を促進することで外部硬直性を打破し、社会課題解決の機会拡大及び企業価値の最大化につなげていきます。

東芝グループの知的財産戦略

特許出願のうち半数以上は、米国、中国を中心とした海外に出願し、グローバルな展開を行っています。また各事業領域においては、知財戦略に基づき最適なポートフォリオが構築できるように、出願アイテムを選定して出願しています。
過去3年間の特許出願数は以下の通りです。

特許出願数、内訳 (2020年4月~2023年3月)

特許庁は、2023年5月30日に、GXTI (Green Transformation Technologies Inventory)に基づく特許情報分析の結果を公表しました。当社はパテントファミリー件数(優先権主張年2010~2021年)において、上位8位(ファミリー件数:7,665件)であり、グリーン・トランスフォーメーション(GX)に関連する特許も多数出願しています。

保有特許は、毎年、すべての登録特許を対象に権利評価を行い、それぞれの事業領域に応じた最適なポートフォリオを構築しています。2023年3月現在の保有特許状況は以下の通りです。

保有特許数、内訳 (2023年3月現在)

知的財産に関する具体的な取り組み


知的財産戦略の推進体制

知的財産部門の組織体制は、コーポレート部門の知的財産室と研究所・主要グループ会社などの知的財産部門で構成されています。コーポレート部門の知的財産室は、東芝グループを横断する知的財産に関する戦略・施策の立案と推進、契約・係争対応、特許情報管理、著作権などの知的財産権法対応を行っています。一方、研究所・グループ会社知的財産部門は、それぞれの開発・事業領域における知的財産戦略を構想し、最適な知的財産ポートフォリオの構築と活用に取り組んでいます。米国と中国には知的財産担当者を駐在させ、グローバルに知的財産戦略を推進しています。
知的財産への投資などをはじめとする経営資源の配分や、事業ポートフォリオに関する戦略の実行に関して、各執行役から取締役会に対して取り組み状況を報告するとともに、監督・助言を受けています。

知的財産推進体制

知的財産に関する権利評価

東芝グループでは、毎年、存続中の登録特許及び登録意匠を抽出し、事業に最適なポートフォリオとすべく、権利評価を行って、権利維持の要否の判断をしています。権利活用の見込みがなく、権利を存続させる価値がなくなった登録特許及び登録意匠は放棄を行い、新たな注力領域の権利取得や権利維持に資源を充当していきます。
また、権利評価の結果は、優秀な発明や意匠を成した発明者や創作者への報奨に活用し、新たな発明・意匠の創出のためのインセンティブにつなげています。

知的財産に関する教育

国内東芝グループの従業員には、毎年、知的財産権に関する行動基準の再認識とともに、主に著作権関連の注意喚起を目的として、e-ラーニングによる教育を実施しています。2022年度の受講率は99.6%でした。

また新入社員には、新入社員研修(CEP:Corporate Entry Program)に組み込まれた知的財産権の一般的な教育を実施し、その後各事業部門に沿った教育を階層別に展開しています。

知的財産担当者については基礎教育プログラムを設けており、国内外の知的財産権の知識習得、及び明細書作成、中間処理の実習・OJTなどを通じて2年間で実務対応ができるように教育を行っています。

更に、中国、韓国、香港、台湾地域の現地法人においてはソフトウェアの適正利用などに関する著作権教育を行っています。米国の現地法人においては全従業員を対象にLMS(Learning Management System)を用いた知財教育などを実施し、地域に適した教育を行っています。

東芝グループ特許大会

東芝グループでは、毎年、東芝グループ特許大会を開催し、特に優れた発明を「優秀発明表彰」として表彰しています。
2022年度は4年ぶりに表彰授与式を開催し、事業に顕著な貢献をなした発明を称える「事業貢献賞」として5件、将来の事業貢献や社会への価値提供が期待される発明を称える「未来価値創造賞」として4件を表彰しました。

代表受賞者一同
島田CEOメッセージ

更に本大会では、「つなぐ知財・つながる知財」をテーマとして、知財マインドの醸成と知財活動の新たな発見を目的として、社外講師による特別講演や多数のWebinarを催しました。今後も引き続き、発明しやすい環境を整え、従業員の発明意欲の向上に努めていきます。

東芝ブランドの保護

東芝ブランドは、東芝グループの企業価値や東芝グループが提供する商品、役務などの価値を象徴するものです。東芝ブランドを確実に保護していくために、商標権の整備や模倣品排除を行っています。
東芝ブランドの模倣品を放置することは、東芝のブランド価値や社会的信用を脅かすだけでなく、お客様が純正品と誤認して模倣品を購入し、期待どおりの製品効能が得られないばかりか事故につながる可能性を生じさせます。そのため、模倣品排除に努めるとともに、国内外の模倣品対策団体とも連携し、現地の政府機関などに対し取締強化を積極的に働きかけています。

2022年度模倣品事件対応件数推移

2022年度の模倣品事件 国・地域別内訳

社外団体への参加と取り組み


WIPO GREENへの参画

東芝は、特許などの知的財産の活用を通じて世界の環境保全に貢献すべく、世界知的所有権機関(WIPO: World Intellectual Property Organization)が運営する、環境技術のグローバルな移転促進のためのプラットフォームWIPO GREENに、環境技術に関する特許権を登録しています。この取り組みを通じて、東芝の環境に関する技術や知的財産を世界へ展開し、気候変動をはじめとする環境に関する社会課題解決につなげることで、SDGsの達成に貢献できるよう、今後も活動していきます。

知的財産に関する社外からの評価


Clarivate Top 100 Global Innovators™ 2023に選出

英国情報サービス会社クラリベイトが、特許データ分析により世界の革新的な企業・機関のトップ100を選出する「Clarivate Top100 Global Innovators™」に、12年連続で選出されました。

令和4年度全国発明表彰「発明賞」受賞

「無線LANの干渉回避機能を有する気象レーダーの発明」(特許第6383134号)

無線LANからの干渉を回避するために開発した気象レーダーに関する発明が、令和4年度全国発明表彰「発明賞」を受賞しました。
この発明は、無線LANからの電波干渉を回避し、正確な気象観測を実現する気象レーダーに関するものです。
無線LANには、気象レーダーとの電波干渉を回避するためのDFS(Dynamic Frequency Selection)が搭載されていますが、古いタイプの無線LANではDFSが機能せず、気象観測に影響が出ています。そこで、無線LANからの信号を検出すると、特殊なパルスパターンを送信して無線LAN側のDFSを機能させ、電波干渉を回避できる気象レーダーを発明しました。
この機能を実装した気象レーダーを2021年に総務省に納入し、5GHz帯(C帯)気象レーダーと5GHz無線LANとの周波数共用により電波資源の有効活用に貢献しています。

リチウムイオン二次電池関連技術の特許総合力ランキングで日本・米国・欧州全てにおいて1位を獲得

当社は、株式会社パテント・リザルト(以下、パテント・リザルト社)が2022年9月に実施したチタン酸リチウム(LTO)を中心とする「リチウムイオン二次電池 酸化物系負極 関連技術」の特許調査において、日本・米国・欧州で特許総合力ランキング1位を獲得しました。パテント・リザルト社は、2016年にも同調査を実施しており、当社は日本・米国・欧州の3か国/地域全てにおいて特許総合力ランキング1位を獲得しています。
当社では、20年以上にわたり電池事業の競争力を高めていくことを目的として、LTOの研究開発によって生み出されたアイデアの1件1件について、事業計画に沿うものを選定し、質を高め戦略的に特許出願を行うことで、良質な特許ポートフォリオの構築を行ってきました。また取得した特許は、共創パートナーとのアライアンスに積極的に活用することで事業拡大・強化を行ってきました。パテント・リザルト社による2016年、2022年の調査において、特許の総合力として量と質の双方で高評価が得られ、日本・米国・欧州の全てにおいて、2位との差を大きく広げて特許総合力ランキング1位を獲得することができたのは、長年培ってきた高い技術力と良質な特許を作り上げ、活用していく当社の特許活動によるものと考えています。

日本 リチウムイオン二次電池 酸化物系負極関連技術 権利者スコアマップ

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