知的財産に関する取り組み

東芝グループのもつ知的財産(知財)を適切に管理し、活用していくことは、企業価値向上には欠かせないと考えています。
東芝グループでは、事業スキームの全体を俯瞰し、事業パートナーとの共創や知財の活用などさまざまな視点から知財戦略を策定し、知財情報分析や知財戦略に基づく知財化、競合を考慮した知財ポートフォリオの最適化など、知財力の強化により、企業価値の向上をめざしています。

2021年度の主な成果

  • 「Clarivate Top 100 Global Innovators™ 2022」(11年連続選出)及び 「Top100ベスト・プロテクティド・グローバル・ブランド2021に選出」。
  • 令和3年度全国発明表彰 「発明賞」受賞。
  • 「東芝グループ特許大会2021」を開催。特に優れた発明10件の表彰発表と、オンライン形式による特別講演、ウェビナー、パネルディスカッションを実施。

知的財産に関する方針と戦略


知的財産に関する方針

東芝グループでは、「知的財産権に関する法令を遵守すること」、「会社の知的活動の成果を知的財産権によって保護し、積極的に活用すること」、「第三者の知的財産権を尊重すること」を知的財産の基本方針として「東芝グループ行動基準」で定めています。強い技術・製品を支える知財力及び知財戦略構想の強化に取り組み、知的財産の積極的な活用を通じて社会課題解決の機会を拡大し、企業価値の最大化につなげていきます。

知的財産権に関する方針


1.東芝グループの基本方針

(1)特許法、著作権法その他知的財産権(注)に関する法令を遵守します。

(2)会社の知的活動の成果を知的財産権によって保護し、これを積極的に活用するとともに、第三者の正当な知的財産権を尊重します。
 

2.東芝グループ役員・従業員の行動基準

(1)事業競争力強化のため、知的財産権を積極的に獲得し、活用します。

(2)職務発明、職務考案、意匠の職務創作、プログラムその他の著作物の職務著作、半導体集積回路の回路配置に関する職務創作についての出願権または知的財産権は会社に帰属することを定めた諸規程を理解し、遵守します。

(3)知的財産権を適正に管理し、第三者による侵害に対して適切な措置を講じます。

(4)第三者の正当な知的財産権を尊重します。

注)  知的財産権:特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、回路配置利用権、営業秘密等をいいます。

知的財産に関する戦略

東芝グループでは、知的財産戦略の実行により、社会課題解決の機会拡大と企業価値の最大化をめざしています。
「エネルギー×デジタル」、「インフラ×デジタル」などによるサービス領域においては、社会課題解決の機会拡大とビジネスを成功させる知財戦略の策定が重要であり、サービス領域に限らず、サイバー領域、フィジカル領域を含めた事業全体を考慮したものでなければなりません。このため、東芝グループでは、事業スキームの全体を俯瞰し、事業パートナーとの共創や知財活用などさまざまな視点から知財戦略を構想することに注力しています。
また、知財戦略を実行していくためには、知財アイテム(特許、データ、ノウハウなど)の整備が不可欠になります。特にサイバー領域においては、データの取り扱いやノウハウが漏洩しないように機密情報として管理する秘匿化が重要となってくるため、データの利活用・保護の強化及びノウハウ管理(秘匿化)を徹底しています。
更に、知財戦略の基盤として、特にフィジカル領域においては、強い技術・製品を支える知財は必要不可欠です。このため、知財情報分析や知財戦略に基づく知財化、競合を考慮した知財ポートフォリオの最適化、他社特許クリアランスによる自由度の確保により、知財力強化に注力しています。

東芝グループの知的財産戦略

特許出願のうち半数以上は、米国、中国を中心とした海外に出願し、グローバルな展開を行っています。また各事業領域において、知財戦略に基づき最適なポートフォリオが構築できるように、出願アイテムを選定して出願しています。過去3年間の特許出願数は以下の通りです。

特許出願数、内訳 (2019年4月~2021年3月)

保有特許は、毎年、すべての登録特許を対象に権利評価を行い、それぞれの事業領域に応じた最適なポートフォリオを構築しています。

保有特許数、内訳 (2022年3月現在)

社外からの評価

Clarivate Top 100 Global Innovators™ 2022 及び
Top100ベスト・プロテクティド・グローバル・ブランド2021に選出

英国情報サービス会社クラリベイトが、特許データ分析により世界の革新的な企業・機関のトップ100を選出する「Clarivate Top100 Global Innovators™」に、11年連続で選出されました。また、同社が新しく発表した「Top100ベスト・プロテクティド・グローバル・ブランド」(商標、判例、ドメイン保護などの分析から世界で最も保護されている強いブランドを選出するアワード)においても、「TOSHIBA」が選出されました。

令和3年度全国発明表彰「発明賞」受賞
原子力発電所から排出される汚染水の処理技術の発明(特許第6158014号)

福島第一原子力発電所から排出される汚染水中の放射性核種を除去するために開発した吸着剤に関する発明が、令和3年度全国発明表彰「発明賞」を受賞しました。
結晶性制御による吸着性能向上と造粒制御による実用強度を両立させることにより、福島第一原子力発電所の汚染水中に含まれる放射性セシウム(Cs)と放射性ストロンチウム(Sr)の同時かつ高い吸着性能での除去を実現しました。この吸着剤は吸着性能が高く、従来品を使用した場合より少ない吸着塔数での処理が可能となります。放射性廃棄物発生量が少なくなり、環境負荷低減にも貢献する発明です。

知的財産戦略の推進体制


知的財産部門の組織体制は、スタフ部門の知的財産室と研究所・主要グループ会社などの知的財産部門で構成されています。スタフ部門の知的財産室は、東芝グループを横断する知的財産に関する戦略・施策の立案と推進、契約・係争対応、特許情報管理、著作権などの知的財産権法対応を行っています。一方、研究所・グループ会社知的財産部門は、それぞれの開発・事業領域における知的財産戦略を構想し、最適な知的財産ポートフォリオの構築と活用に取り組んでいます。米国と中国には知的財産担当者を駐在させ、グローバルに知的財産戦略を推進しています。
知的財産への投資などをはじめとする経営資源の配分や、事業ポートフォリオに関する戦略の実行に関して、各執行役から取締役会に対して取り組み状況を報告するとともに、監督・助言を受けています。

知的財産推進体制

知的財産に関する権利評価


東芝グループでは、毎年、存続中の登録特許及び登録意匠を抽出し、事業に最適なポートフォリオとすべく、権利評価を行って、権利維持の要否の判断をしています。権利活用の見込みがなく、権利を存続させる価値がなくなった登録特許及び登録意匠は放棄を行い、新たな注力領域の権利取得や権利維持に資源を充当していきます。
また、権利評価の結果は、優秀な発明や意匠を成した発明者や創作者への報奨に活用し、新たな発明・意匠の創出のためのインセンティブにつなげています。

知的財産に関する教育


国内東芝グループの従業員には、毎年、知的財産権に関する行動基準の再認識と共に、主に著作権関連の注意喚起を目的として、e-ラーニングによる教育を実施しています。2021年度の受講率は99.4%でした。
また新入社員には、新入社員研修(CEP:Corporate Entry Program)において知的財産権の一般的な教育を実施し、その後各事業部門に沿った教育を階層別に展開しています。
知的財産担当者については基礎教育プログラムを設けており、国内外の知的財産権の知識習得、及び明細書作成、中間処理の実習・OJTなどを通じて2年間で実務対応ができるように教育を行っています。
更に、中国の現地法人においてはソフトウェアの適正利用などに関する著作権教育、米国の現地法人においては新規入社者や全従業員を対象とした知財教育などを実施し、地域に適した教育を行っています。

東芝グループ特許大会

東芝グループでは、毎年、東芝グループ特許大会を開催し、特に優れた発明を「優秀発明表彰」として表彰しています。
2021年度は、事業に顕著な貢献をなした発明を称える「事業貢献賞」として6件、将来の事業貢献や社会への価値提供が期待される発明を称える「未来価値創造賞」として4件を表彰し、前年度と同様にオンラインで発表しました。更に本大会では、「つなぐ知財・つながる知財」をテーマとして、社外講師による特別講演や社内知財担当者によるウェビナーとパネルディスカッションを実施しました。
今後も引き続き、発明しやすい環境を整え、従業員の発明意欲の向上に努めます。

東芝ブランドの保護

東芝ブランドは、東芝グループの企業価値や東芝グループが提供する商品、役務などの価値を象徴するものです。東芝ブランドを確実に保護していくために、商標権の整備や模倣品排除を行っています。
東芝ブランドの模倣品を放置することは、東芝のブランド価値や社会的信用を脅かすだけでなく、お客様が純正品と誤認して模倣品を購入し、期待どおりの製品効能が得られないばかりか事故につながる可能性を生じさせます。そのため、模倣品排除に努めるとともに、国内外の模倣品対策団体とも連携し、現地の政府機関などに対し取締強化を積極的に働きかけています。

2021年度模倣品事件対応件数推移

2021年度の模倣品事件 国・地域別内訳

社外団体への参加と取り組み


WIPO GREENへの参画

東芝は、特許などの知的財産の活用を通じて世界の環境保全に貢献すべく、世界知的所有権機関(WIPO: World Intellectual Property Organization)が運営する、環境技術のグローバルな移転促進のためのプラットフォームWIPO GREENに、環境技術に関する特許権を登録しています。この取り組みを通じて、東芝の環境に関する技術や知的財産を世界へ展開し、気候変動をはじめとする環境に関する社会課題解決につなげることで、SDGsの達成に貢献できるよう、今後も活動していきます。

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