イノベーション創出のための
研究開発の強化

東芝グループは、創業以来、事業を通じて社会課題の解決に取り組んでいます。グループの強みである技術と開発のダイバーシティを生かし、エネルギー、インフラ、デバイスといった事業領域を核にデータの力を重ね合わすことで、そのポテンシャルを最大限に発揮させながら、カーボンニュートラルとサーキュラーエコノミーを実現するイノベーション創出に向けた研究開発を強化しています。

取り組むべきKPIと実績

研究開発費対売上高比率(%)

2022年度目標 5.0 %以上
2022年度実績 4.7 
2023年度目標 5.0 %以上
2022年度目標 5.0 %以上
2022年度実績 4.7 
2023年度目標 5.0 %以上

2022年度の主な成果

  • 再エネ発電量予測精度向上及び蓄電池の活用によりインバランス量約7割削減を達成
  • 再生可能エネルギーから水素をつくる電気分解で、希少なイリジウムを1/10に抑えた電極の大型製造技術を確立
  • 東武鉄道の新型車両にリチウムイオン二次電池SCiB™を組み合わせた当社の車上バッテリシステムが採用
  • 米国の大学と国立研究所を結ぶ量子ネットワークに多重量子鍵配送システムを構築

研究開発の方針


世界では、再生可能エネルギー転換を中心としたカーボンニュートラル化が加速しています。また、自然災害の激甚化、社会インフラの老朽化、労働人口の減少、パンデミックや地政学リスクによるサプライチェーンの寸断やサイバー攻撃などの脅威から、インフラレジリエンスへのニーズが高まっています。東芝グループでは、デジタル化によってエネルギー・インフラ分野の進化を加速する「エネルギー×デジタル」及び「インフラ×デジタル」を戦略として掲げ、強い差異化デバイス、コンポーネントやCPS技術(サイバーフィジカル技術)の強みを生かし、直面する社会やお客様の課題に対し最適な解決策の提供に取り組んでいます。
「エネルギー×デジタル」においては、”つくる”、”おくる”、”ためる”、”かしこくつかう”のエネルギーチェーンの一貫したカーボンニュートラル化を推進します。「インフラ×デジタル」においては、“そなえる”、”みつける”、”まもる”、”つづける”のレジリエンス・ライフサイクルを通して、長年のプラント設計・運転・保守のノウハウとAIやセキュリティなどのデジタル技術を融合した商品・技術・サービスを提供します。強い差異化デバイスである半導体・ストレージにおいても、量産ラインの増強、化合物半導体開発の推進などを通した商品力強化を進めていきます。
東芝グループは、経営理念 「人と、地球の、明日のために。」 のもと、これらの取り組みを通して喫緊の社会課題である気候変動対応やインフラレジリエンスの解決に誠心誠意取り組んでまいります。

詳細は以下ウェブサイトをご覧ください。
 

研究開発体制


東芝グループの研究開発の体制は、東芝の研究開発部門と主要グループ会社の研究開発部門及び設計・技術部門からなり、研究開発を各部門で機能分担し効率よく進めています。東芝の研究開発部門では、中長期的な視点で基盤技術を深め、新規事業領域の研究や革新的かつ先行的な研究開発に取り組んでいます。

主要グループ会社の研究開発部門及び設計・技術部門では、事業ドメインの基盤技術を支え、事業計画に則った新たな商品や差異化技術の開発、及び顧客ニーズをとらえた商品化・量産化に取り組んでいます。これら部門の密接な連携により、市場に商品を送り出しています。

詳細は以下ウェブサイトをご覧ください。
 

研究開発費


東芝グループでは、イノベーション創出のための研究開発の強化をマテリアリティと定め、研究開発費対売上高比率をKPIに設定しています。
東芝グループの売上高に対する研究開発費率は、約5%で推移しています。

研究開発費対売上高比率

2018年度 2019年度 2020年度 2021年度 2022年度
2023年度
(目標)
2024年度
(目標)
4.5% 4.7% 4.9% 4.6% 4.7% 5.0%以上
5.0%以上
2018年度 2019年度 2020年度 2021年度 2022年度
2023年度
(目標)
2024年度
(目標)
4.5% 4.7% 4.9% 4.6% 4.7% 5.0%以上
5.0%以上

研究開発費(実績)

2018年度 2019年度 2020年度 2021年度 2022年度
1,675億円 1,589億円 1,505億円 1,519億円 1,564億円
2018年度 2019年度 2020年度 2021年度 2022年度
1,675億円 1,589億円 1,505億円 1,519億円 1,564億円

研究開発費内訳(2022年度)

社会課題の解決に貢献する研究開発事例


再エネ発電量予測精度向上及び蓄電池の活用によりインバランス量約7割削減を達成
貢献する社会課題 : 気候変動への対応


東芝は、経済産業省が公募する実証事業「令和4年度 再生可能エネルギーアグリゲーション実証事業※1」において、東芝エネルギーシステムズ株式会社がコンソーシアムリーダーとなり、再生可能エネルギー発電量を予測する新たな手法を開発しました。再エネ発電量の実績を確認しながら蓄電池を制御することで、インバランス※2量を平均約70%削減できました。再エネ発電量予測や蓄電池を活用した制御技術開発を進め、再エネアグリゲーション事業を通じて、再エネを活用した安定的かつ効率的な電力システムを実現し、気候変動への対応に取り組みます。

図1. 共同開発した実証システム(発電量の予測値/実績値の確認画面)

  • 正式名称は、「令和4年度 蓄電池等の分散型エネルギーリソースを活用した次世代技術構築実証事業費補助金(再エネ発電等のアグリゲーション技術実証事業のうち再生可能エネルギーアグリゲーション実証事業)」
  • インバランスとは、再エネ発電事業者が計画と実績の同時同量を達成できずに発生する電力の需要量(使われる分)と供給量の差分のこと。再エネ発電量が計画値から外れてインバランスが大きくなると、供給する電力の品質低下や停電などの要因となる可能性がある。また、インバランスによる調整コストとしてインバランス料金を支払う必要がある

再生可能エネルギーから水素をつくる電気分解で、希少なイリジウムを1/10に抑えた電極の大型製造技術を確立
貢献する社会課題 : 気候変動への対応


東芝は、再生可能エネルギー(以下、再エネ)の電力を水素などに変換し、貯蔵・輸送を可能にするPower to Gas(以下、P2G)技術において、レアメタルの一種であるイリジウムの使用量を従来の1/10に抑えた電極の大型製造技術を確立しました。P2Gでは、再エネの電力を利用して水を水素と酸素に電気分解(水電解)し、水素に変換します。水電解には、再エネ電力の変動への適応性が良く耐久性の高いPEM(固体高分子膜:Polymer Electrolyte Membrane)を用いた「PEM水電解」方式が注目されていますが、電極に用いる触媒に貴金属の中で最も希少なイリジウムを使用しており、実用化にはイリジウム使用量の削減が課題の一つでした。本技術により、カーボンニュートラル社会の実現に不可欠なP2Gにおいて、再エネ電力の変動に対応したP2G技術の早期実用化を見込むことができます。東芝は、東芝エネルギーシステムズ株式会社とともに、本技術による電極を用いたMEA(膜電極接合体:Membrane Electrode Assembly)を試作し、水電解装置メーカーによる外部評価試験を開始しています。今後はMEAとしての量産化に向け、歩留り向上・品質改善活動を行い、2023年度以降の製品化をめざします。

大型スパッタ成膜から切り出した電極写真

東武鉄道の新型車両にリチウムイオン二次電池SCiB™を組み合わせた当社の車上バッテリシステムが採用
貢献する社会課題 : 気候変動への対応


東芝インフラシステムズは、東芝のリチウムイオン二次電池SCiB™と車両用電源システム(SIV)を組み合わせた車上バッテリシステムを開発し、東武鉄道株式会社(以下、東武鉄道)がCO2排出量削減の取り組みとして2024年度から順次導入を開始予定の東武アーバンパークライン向け新型車両向けに採用されました。
列車がブレーキを掛けた際に発生する回生エネルギーを蓄電池に蓄え、空調などの補助電力の一部として活用することで、省エネ運転・CO2削減に貢献します。更に装置故障等の非常時には走行に必要なブレーキ用コンプレッサ等への電源の供給を行い、冗長性を確保します。
蓄電池には東芝のリチウムイオン二次電池SCiB™が使用されています。SCiB™は、高い安全性、2万回以上の充放電が可能な長寿命、-30℃の環境下にも耐え得る低温度動作などの優れた特性があり、特に安全性においては、外圧が加えられて内部短絡が生じても異常発熱や発火を起こしにくい構造となっています。
東芝インフラシステムズは、2014年にSCiB™を使用した地上用回生電力貯蔵装置(Traction Energy Storage System以下、TESS)を東武アーバンパークライン向けに納入しており、SCiB™を使用した車上バッテリシステムとTESSの組み合わせは初めてとなります。
東芝インフラシステムズは、今後も鉄道車両用の機器及びシステムの開発を進め、安全性と利便性の追求に加え、個々の鉄道事業者のコンセプトに沿ったカーボンニュートラルを共創していきます。

米国の大学と国立研究所を結ぶ量子ネットワークに多重量子鍵配送システムを構築
貢献する社会課題 : サイバーレジリエンスの強化


東芝アメリカ社と、量子インターネットの基盤技術開発を行う米国の研究開発推進機関Chicago Quantum Exchangeは、東芝の多重量子鍵配送(Quantum Key Distribution: QKD)システムを使用したQKDネットワークリンクを構築し、実証を開始しました。本リンクは、米国全体で構築が進められている量子ネットワークの一部区間を使用して構築され、シカゴ大学と米国エネルギー省アルゴンヌ国立研究所間を接続し、研究者が実証や研究に活用する予定です。今後も量子暗号通信技術の開発を進め、情報化社会に求められるサイバーレジリエンスの強化に取り組みます。

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