私たちは将来の成長エンジンの核となる技術を創造し、
持続可能な社会を目指します。

カーボンニュートラル社会の実現に向けて、火力発電は燃料転換やCO₂分離回収によるゼロエミッション化が進んでいます。火力発電の原理である熱エネルギーを蒸気タービンで運動エネルギー(回転エネルギー)に変換し、運動エネルギーを発電機で慣性力を持った安定した電力を創り出すという根幹技術は、再生可能エネルギーの普及の拡大により、一層重要性が高まっています。
東芝は、100年におよぶ蒸気タービン・発電機の歴史において、開発~製造~運転検証~メンテナンス評価~設計反映~開発のサイクルを絶え間なく行っています。カーボンニュートラル社会に貢献する高効率化・高信頼化・高度運用性など火力発電プラントの価値をさらに高める技術開発を進めていきます。

火力発電システムの研究開発事例

近年の火力発電においては、再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、起動・停止の迅速化、出力変化速度の向上、最低負荷運転の拡大といった調整運用に対応する技術が求められています。このような技術課題に対して、東芝は発電プラントにおける運転データ、最新の工学知見およびそれらを製品に実現する製造技術を基に研究開発を行っています。
蒸気タービンの研究開発事例を紹介します。


事例1:エロ―ジョン対策


調整運用により、低負荷運転時間が増えると蒸気タービンの翼は浸食が進むリスクが高まります。基本的な蒸気タービンの設計は、定格運転においてタービンの効率が最も高くなるように翼列を計画します。調整運用においては、翼列における蒸気の圧力・温度・流速条件が設計条件から変わるため、特にタービン下流の低圧・低温の領域で凝縮した蒸気の液滴が粗大化し、翼に衝突して浸食(エロージョン)させます。
この課題に対して、タービン翼列内の蒸気流を数値解析することで液滴の挙動を把握し、湿分分離・除去技術を適用することでエロージョンを抑止しています。

タービン翼列内蒸気流の液滴挙動解析

事例2:起動・停止時の熱応力


電力需要の変化に即応するため蒸気タービンを急速に起動させるとタービンロータに過大な熱応力が発生し機器の寿命を著しく消費させます。当社は熱応力をリアルタイムで予測し制限範囲に抑えながら起動時間を効果的に短縮する最適起動技術を開発し、国内外の多くの発電プラントに適用しています。
これに加えてタービン停止時に電気ヒータにより外部から加熱することで、停止後も機器温度を維持して、再起動時に機器に発生する熱応力を管理するヒートブランケットを開発し導入を進めています。このような技術開発により、再調整運用として求められるタービン再起動時間の短縮に加えて、機器の寿命消費を抑制し高い信頼性を実現しています。

ヒートブランケットなし(熱応力高)
ヒートブランケットあり(熱応力低)

カーボンニュートラルに貢献するサーマルエナジー技術

東芝は100年にわたり火力発電の根幹機器である蒸気タービンおよび発電機を中心に、火力発電システムの研究開発を続け、CO₂分離回収、蓄熱・エネルギーマネジメント等、カーボンニュートラル社会の実現に向けた取り組みも進めています。


CO₂分離回収技術



アミンCO₂バイナリー発電機


アミンCO₂バイナリー発電機は、CO₂分離回収技術(CCUS)で培ったアミン水溶液技術と、長年の発電技術が融合して生まれた新しい発電サイクルです。
このサイクルは、アミン水溶液中のCO₂が熱によって放出される際の吸熱反応を利用し、低温(150℃以下)の熱源から効率的に熱回収および発電を行います。
また、作動媒体であるアミン水溶液は、地球温暖化への影響が小さくオゾン層保護法の規制対象外で環境負荷の低い物質であるため、安全性と環境性を両立しながら長期間にわたり安定した運用が可能です。

発電所や工場では、活用できなかったエネルギーが「排熱」として放出されます。当社のアミンCO₂バイナリー発電機は、そのような低温の未利用熱や温泉(地熱)からも発電をすることができます。この技術は今後の脱炭素社会に必要とされており、2028年からの商用開始を予定しています。

  • アミンCO₂バイナリー発電機
    本研究開発成果は、 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)助成事業(JPNP21005)の結果得られた成果が含まれます。
100kW級バイナリー発電実証試験機

岩石蓄熱エネルギーマネジメントシステム


次世代の脱炭素技術として、蓄熱(TES:Thermal Energy Storage)が世界中で注目されています。当社が開発する「岩石蓄熱エネルギーマネジメントシステム(EMS)」は、環境負荷が低い自然の岩石を蓄熱材として使用し、余剰なエネルギーを熱として蓄え、必要な時に発電や工場プロセスの熱源に利用するサステナブルなエネルギー貯蔵技術です。
当社は国内先駆けとなる実証実験を進めており、2027年からの商用開始を目指しています。

設備の機器構成イメージ
静岡県島田市の技術実証試験

蓄熱槽内では、岩石への熱の伝わり方によってサーモクライン(熱勾配)が形成されます。また、岩石は大きさや形状が不規則であるため、これらが蓄熱性能に与える影響を解析・制御することは高い蓄熱性能を実現する上で重要な開発要素です。