令和2年度科学技術分野の文部科学大臣表彰受賞について
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受賞
研究開発・技術
株式会社 東芝
東芝エネルギーシステムズ株式会社
株式会社東芝(以下、東芝)および東芝エネルギーシステムズ株式会社(以下、ESS)は、令和2年度科学技術分野の文部科学大臣表彰にて、東芝が「出入力性能と安全性に優れた長寿命大型二次電池の開発」、ESSが「安全性に優れヘリウム資源保護に貢献する超伝導磁石の開発」の業績で科学技術賞(開発部門)を受賞しました。
科学技術分野の文部科学大臣表彰は、科学技術に関する研究開発、理解増進等において顕著な成果を収めた者について、その功績を讃えることにより、科学技術に携わる者の意欲の向上を図り、もって我が国の科学技術水準の向上に寄与することを目的として、文部科学省が毎年実施しているものです。中でも、科学技術賞(開発部門)は、社会経済、国民生活の発展向上等に寄与し、実際に利活用されている画期的な研究開発若しくは発明を行った者を対象にしており、今年度は47件の応募の中から、24件(87名)が本賞を受賞しています。
「出入力性能と安全性に優れた長寿命大型二次電池の開発」
地球環境、エネルギー・資源問題解決のためエコカーや蓄電システム用の大型二次電池が切望されています。一方で、従来の小型リチウムイオン電池では黒鉛負極を用いており、その材料の性質から、大型化に必要な高入出力、高安全、長寿命などの要求に応えることが困難であり、黒鉛に替わる新たな負極開発が課題でした。
本技術開発では、黒鉛に比べ副反応が起きにくく、充放電に伴う劣化がほとんど無いリチウムチタン酸化物(LTO)に着目し、その電極反応機構を解明することによって電極の高出力化を実現し、併せてLTO特有の内部短絡時に絶縁性に変化する特徴を利用した安全機構を見出しました。さらに、高品質なLTO微粒子を用いた低抵抗で長寿命なLTO負極を開発することによって、1分で80%容量の急速充電性能を実現し、入出力性能と安全性に優れた長寿命大型二次電池を実現しました。
東芝は、エコカーや大型蓄電池システムに適した高入出力、急速充電、長寿命、高い安全性を有する本大型二次電池の特性を生かし、2008年に、世界で初めてLTO負極を用いた大型二次電池"SCiB™”として製品化に成功しました。現在、SCiB™はマイルドハイブリッド車等のエコカー、バス、鉄道車両、大型蓄電システムに広く採用されています。今後も、持続可能な循環型社会の形成を目指すため、地球環境、エネルギー・資源問題の解決と安心、安全な社会の実現に貢献することが期待されます。
「安全性に優れヘリウム資源保護に貢献する超伝導磁石の開発」
超伝導磁石は、電気抵抗がない状態で大電流を流すことができ、広い空間に高磁界を発生できる特徴があり、産業用から医療用に至るまで幅広く利用されています。しかし、超伝導状態を生み出すには、絶対温度4.2K(-269℃)の液体ヘリウムを一定期間毎に補充しながら超伝導コイルを冷却することが必須でした。また、液体ヘリウムを安全に取扱うには高度な知識と専門技術が必要とされるとともに、将来のヘリウム資源の枯渇も心配されています。
本技術開発では、従来冷凍機に使用していた鉛蓄冷材に比べ、10K以下の極低温領域で熱を蓄える能力の高い蓄熱能力を有する磁性蓄冷材を世界で初めて実用化し、その磁性蓄冷材を用いることで液体ヘリウムを使うことなく液体ヘリウム温度である絶対温度4.2Kでの冷凍を可能とした「4K-GM注冷凍機」の開発に成功しました。さらに、真空中に設置された超伝導コイルと冷凍機を伝熱板で接続し、冷凍機と超伝導コイルの温度差を極力抑えた超伝導コイル冷却技術を確立しました。これらの技術開発により、安全性に優れヘリウム資源保護に貢献する超伝導磁石の開発に成功し、先端科学分野から産業用途や医療用途へと広く展開し実用化しました。
注 GM:Gifford-McMahon
令和2年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 受賞内容
所属 | 氏名 | テーマ |
株式会社東芝 |
高見 則雄 | 出入力性能と安全性に優れた長寿命大型二次電池の開発 |
株式会社東芝 電池事業部 |
稲垣 浩貴 | |
株式会社東芝 研究開発本部研究開発センター* |
岸 敬 |
|
東芝エネルギーシステムズ株式会社 |
栗山 透 高橋 政彦 大谷 安見 |
安全性に優れヘリウム資源保護に貢献する超伝導磁石の開発 |
東芝エネルギーシステムズ株式会社 京浜事業所 |
佐藤 潔和 小林 孝幸 |
* 現在の組織名称は「株式会社東芝 研究開発センター」です。
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