自然由来ガスを適用した420/550kV GIBを国内メーカーで初めて製品化
~国内最高クラスの電圧に対応し、送変電機器の温室効果ガス削減に大きく貢献~
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2025年12月03日
東芝エネルギーシステムズ株式会社
当社は、電気を「送る」役割を担う送変電機器事業において、温室効果ガスである六フッ化硫黄(SF6)を一切使用せず、自然界に存在するガス(自然由来ガス)のみを使用した「ガス絶縁母線(GIB)注1」を国内で初めて製品化しました。今回開発したGIBは、環境負荷を大幅に低減しながら、国内最高クラスとなる定格電圧550kVにも対応できることが最大の特長です。
GIBは、変電所内で電力を送るための「母線」を、感電や故障リスクを防ぐために絶縁性能の高いガスで封入した機器で、開閉装置と送電線や変圧器との接続部分を広範囲につないでいます。送変電網の基幹部分を構成する高電圧の変電所のGIBは大規模で長くなり、結果として多くのSF6がGIBに用いられてきました。このSF6を自然由来ガスに代替することで、環境負荷の低減と電力インフラの持続可能性の向上を目指します。当社は、早期に本GIBの初号器を提供すべく、受注活動を進めていきます。
GIBなどの送変電機器は、高電圧電流が流れる導体と周囲の金属タンクを電気的に絶縁するため、内部に高い絶縁性能を持ったガスを封入しています。これまで送変電機器には、絶縁性能に優れたSF6が広く使用されてきました。しかし、SF6は地球温暖化係数(GWP)が二酸化炭素の約25,000倍と非常に高く、大気漏えいした場合の環境影響が大きいため、世界的に重要な課題となっており、特に欧州や北米を中心とした海外市場において、SF6ガスの使用規制に向けた法整備が進められています。
当社ではこの課題に対応するため、SF6などの人工的に合成されたフッ素ガスを一切使用せず、窒素・酸素・二酸化炭素など自然界に存在し、GWPが二酸化炭素よりも小さい自然由来ガスを適用した送変電機器のブランド「AEROXIA™」注2を立ち上げ、ガス絶縁開閉装置(GIS)注3やGIBといった脱SF6機器の開発・製造を行ってきました。2022年には初号器として、72/84kVのGISを開発し、既に国内の変電所向けに受注・納入しています。
今般製品化した420/550kV GIBでは、二酸化炭素と酸素からなる混合ガスを高圧力で封入し、さらに電界が高い部分に特殊塗料による絶縁コーティングを施しています。これにより、耐電圧性能を向上させるとともに、SF6使用の既存機器との互換性を確保できる合理的なサイズを実現しました。
自然由来ガスを適用した送変電機器は、脱SF6を進め電力供給の安定性と持続可能性を両立するソリューションであり、国内外の電力会社や再生可能エネルギー事業者から高い期待が寄せられています。当社は今後、自然由来ガスを適用した220kV以上の基幹系統向けGISの開発を加速し、環境に調和した持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
注1 ガス絶縁母線(Gas Insulated Busbar、GIB)は主に変電所内で開閉装置と送電線や変圧器との接続部分を広範囲につなぎ電力伝送を担う機器で、ガス絶縁開閉装置(GIS)と並び、高電圧変電所設備の小型化や高信頼化を実現するための重要変電機器の一つです。
注2 具体的なガスの種類及び混合比については、電圧クラスや求められる性能に応じて最適なものを選択します。「AEROXIA™」(エアロクシア)の詳細は以下を参照ください。
SF6代替ガスソリューションストーリー_220314 (PDF形式)
注3 ガス絶縁開閉装置(Gas Insulated Switchgear、GIS)は、送電線に異常が生じた場合に電流を遮断して他の電力機器への影響を防ぐための遮断器や、送電系統を切り換えるための断路器、避雷器、計器用変成器などから構成される設備です。
GIBおよびGISについて
GIBの断面図(イメージ)
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