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「複雑な磁場分布を実現した超電導磁石の3次元自動巻線技術」で第69回(令和4年度)「大河内記念技術賞」を受賞

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2023年03月15日

東芝エネルギーシステムズ株式会社
株式会社東芝

 東芝エネルギーシステムズ株式会社および株式会社東芝(以下、東芝グループ)はこのたび、第69回(令和4年度)大河内賞において、「複雑な磁場分布を実現した超電導磁石の3次元自動巻線技術」について、「大河内記念技術賞」を受賞しました。大河内賞は、財団法人大河内記念会が生産工学や生産技術分野の研究において、学術の進歩と産業の発展に大きく貢献した業績を表彰する権威ある賞で、贈賞式は3月22日に日本工業倶楽部会館で行われます。

 今般受賞した技術は超電導磁石に関するものです。超電導磁石は広い空間に強力な磁場を発生する特長があり、この特長を生かして、産業・医療分野から先端基礎研究まで幅広い領域で使用されています。超電導磁石は超電導線をコイル形状に巻いて製作し、その性能は超電導磁石が発する磁場の分布によって大きく左右されます。当社グループは、設計からの誤差0.1%以下の磁場分布を実現する、超電導線を3次元に巻く技術(3次元自動巻線技術)を開発しました。磁場形成の自由度が増すことで、効率化による超電導磁石の小型化や、磁力を落とすことなく湾曲面にコイルを形成することができるようになり、超電導磁石の実用上の優位性を上げ、応用範囲の拡大に貢献する技術です。

 受賞においては、3次元自動巻線技術の開発と、その技術を用いた超電導磁石を使用する機器の低コスト化を実現した業績が評価されました。

受賞技術開発の背景と概要


 超電導磁石はMRIや半導体製造装置など医療診断・産業応用分野に使用されていますが、その強力な磁場により、様々な先端基礎研究が進められており、今後、治療医学や交通分野など幅広い領域での応用が期待されています。応用範囲の拡大に伴い、小型化・低コスト化への要求が高まるとともに、従来のコイル巻線技術では実現できない複雑で精密な磁場分布を形成する超電導コイルの必要性が増しています。東芝グループは、超電導線を巻枠上に磁場設計通りに配置し、巻枠の表面に超電導線を連続的に接着する方法でコイルを形成することで、設計からの誤差0.1%以下の磁場分布を実現する3次元自動巻線技術を開発しました。これにより、360度全方向から治療が可能な重粒子線治療装置用超伝導小型回転ガントリーの実現や、半導体の材料であるシリコン単結晶の製造装置(単結晶引上げ用超電導磁石)の低コスト化も実現しました。

特徴と成果


 本業績は以下の3つの技術の統合により実現したものです。

(1)  数千本の超電導線で構成される3次元コイルが形成する磁場分布について、新たに開発した高精度計算コードを用いて要求される磁場分布を実現する最適化計算により超電導線のコイル曲面上における3次元空間配置データを作成する技術

(2)  3次元空間配置データに基づいて位置制御される6軸同時巻線機に搭載された超電導線溶着ヘッドを用いて対象コイル面に超電導線を配置していく技術

(3)  極低温に耐え3次元コイルを形成するのに適した接着樹脂の開発

 磁場形成の自由度が増すことにより、コイルの小型化や湾曲面へのコイル形成が可能となり、実用上の優位性が得られました。また、コイルを含めた磁石が小型化することで小型冷凍機のみでの稼働が可能となり、液体ヘリウムが不要となることで経済的優位性も実現しました。現在、東芝グループは、重粒子線超伝導小型回転ガントリーを提供できる唯一のメーカーであるとともに、単結晶引上げ用超電導磁石において高い市場占有率を実現しています。

将来展望


 東芝グループは、重粒子線治療装置用超伝導小型回転ガントリーを世界に先駆けて開発し、各研究機関の重粒子線治療装置の開発目標ベンチマークに採用されるなど国際的な評価を受けており、本技術においても多様な3次元形状コイルへの展開が期待されています。今後も、東芝グループの要素技術や生産技術などを融合し、さらなる学術的・経済的貢献を目指します。

受賞者


東芝エネルギーシステムズ株式会社
 京浜事業所 シニアエキスパート                   折笠 朝文

       エキスパート                              渡邊 郁雄

       スペシャリスト                          藤井 寿朗

 エネルギーシステム技術開発センター スペシャリスト   高山 茂貴

株式会社東芝 生産技術センター スペシャリスト         林 家佑

写真(本技術の応用例)


重粒子線治療装置用超伝導小型回転ガントリー(提供:量子科学技術研究開発機構/QST病院)
単結晶引上げ用超電導磁石

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