第51回市村産業賞 貢献賞を受賞

― 超電導磁石の普及に貢献 ―

お知らせ

原子力

重粒子線治療装置

受賞

2019年4月15日

東芝エネルギーシステムズ株式会社
東芝マテリアル株式会社

 東芝エネルギーシステムズ株式会社(以下、東芝エネルギーシステムズ)および東芝マテリアル株式会社(以下、東芝マテリアル)は、公益財団法人 市村清新技術開発財団が主催する「第51回市村産業賞」において、「液体ヘリウムを使用しない冷凍機冷却超電導磁石の開発と実用化」について貢献賞を受賞し、12日に帝国ホテル 東京において贈呈式が行われました。

 東芝エネルギーシステムズおよび東芝マテリアルは、1993年に超電導磁石の冷却に従来必要とされていた液体ヘリウムを使用せずに極低温冷凍機のみで冷却する冷凍機冷却超電導磁石を開発し、その後、極低温冷凍機、それを実現した蓄冷材、冷凍機と磁石本体を結ぶ伝熱経路などの開発、改良を進め、冷凍機冷却超電導磁石の応用を拡大してきました。今回、本技術が超電導磁石の操作性・安全性を向上させ利用の普及を加速し、ヘリウム資源の保護も含めて産業界・学界の発展に貢献していることが評価され、受賞に至りました。

 東芝エネルギーシステムズおよび東芝マテリアルは、本技術を活用し、単結晶引き上げ用磁石や、がんの腫瘍に対して治療台を傾けることなく360度任意の角度から重粒子線注の照射を可能とする重粒子線がん治療装置を実現しています。

 今後も技術開発を進め、エネルギー分野をはじめ様々な領域で新たな価値を提供していきます。

市村清新技術財団および市村産業賞について

 市村清新技術財団は、科学技術の研究開発に対する助成、優れた科学技術の顕彰および国際交流の促進、科学技術に関する創造性の育成、植物の生育に関わる研究に対する助成などによって科学技術の振興を図ることにより、我が国の経済社会の発展と国民生活の向上に寄与するために活動する団体です。
 市村産業賞は、優れた国産技術を開発することで、産業分野の発展に貢献・功績のあった技術開発者またはグループに贈呈されます。

受賞内容

1.テーマ

液体ヘリウムを使用しない冷凍機冷却超電導磁石の開発と実用化

2.受賞者

左から佐藤 潔和さん、栗山 透さん、八木 典章さん
左から佐藤 潔和さん、栗山 透さん、八木 典章さん

東芝エネルギーシステムズ(株)エネルギーシステム技術開発センター 
 首席技監 栗山 透
東芝エネルギーシステムズ(株)京浜事業所 技監 佐藤 潔和
東芝マテリアル(株)開発・技術部 シニアフェロー 八木 典章

3.開発の背景

 超電導磁石は、電気抵抗がない状態で大電流を流すことができ、広い空間に高磁界を発生させる特徴があり半導体などの産業分野、MRIなどの医療分野、リニアモーターカーなどの交通分野などで幅広く適用されています。しかし、超電導状態を生み出すには、超電導磁石を構成する超電導コイルを液体ヘリウムにより約-269℃に冷却する必要がありますが、液体ヘリウムは資源の枯渇が心配されるとともに、取扱いには高度な知識と専門技術が必要とされていました。そこで、東芝グループは、液体ヘリウムを使わずに直接冷やす冷凍機冷却超電導磁石を開発しました。

4.技術のポイント

 従来の超電導磁石に使用されていたGM (Gifford-McMahon)冷凍機では、鉛が蓄冷材として使用されていました。鉛は極低温状態では熱を蓄える能力が失われ、冷凍機の到達温度は-263℃程度で冷凍機のみでは超電導状態に必要な極低温状態-269℃までの冷却は出来ませんでした。超電導コイルの冷却が可能な-269℃レベルの冷凍を実現するために、磁性体の相転移による比熱のピークを利用し、-263℃以下で従来の鉛蓄冷材よりも高い蓄熱能力を有する磁性蓄冷材を世界で初めて実用化し、その磁性蓄冷材を用いた4K-GM冷凍機注)開発に成功しました。更に、真空中に設置された超電導コイルと冷凍機を伝熱板で接続し、伝熱板の材料、寸法、配置の最適化、極低温接触熱抵抗の低減などにより冷凍機と超電導コイルの温度差を小さく抑えた超電導コイル冷却技術を確立しました。このように本開発では、様々な技術の独自開発・改良を重ね、「液体ヘリウムを使用しない冷凍機冷却超電導磁石の開発と実用化」に成功しました。

注)4K:絶対4度=-269℃

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