ニュースリリース
宇宙線を用い福島第一原子力発電所の燃料デブリの状態を測定する装置を開発
約30cm単位で原子炉圧力容器内の状態を把握
※再生ボタンをクリックすると、YouTubeに掲載している動画が再生されます。
※YouTubeは弊社とは別企業のサービスであり、各サービスの利用規約に則りご利用ください。
株式会社東芝(以下、東芝)と技術研究組合国際廃炉研究開発機構(以下、IRID)は、福島第一原子力発電所向けに、宇宙から降り注ぐ宇宙線ミュオン注1を用い燃料デブリの位置や性質を測定する装置を開発しました。本装置により、約30cm単位で原子炉圧力容器内の状態を把握できます。今後、測定試験、据付工事を経て、2015年度中に福島第一原子力発電所2号機で測定を開始します。
今回の装置は、資源エネルギー庁の補助事業「原子炉内燃料デブリ検知技術の開発」の一環として開発したものです。
ミュオンは、ピラミッドの内部調査や火山の密度測定などに利用される、物体を通り抜ける能力が高い宇宙線です。今回、ミュオンが物体を通過する際に散乱し進路が変わる性質を利用し、米国のロスアラモス国立研究所が開発した測定方法を採用しました。
測定では、原子炉建屋を挟み込む形で装置を設置し、散乱する前後のミュオンの軌跡に基づき散乱の角度を解析することにより、燃料デブリの位置を把握します。散乱の角度は、測定対象の原子番号に応じて大きくなるため、燃料デブリ周辺の構造材の影響を受けずに測定することが可能です。
また、福島第一原子力発電所の高い放射線環境に対応するため、放射線ノイズを除去する電気回路とアルゴリズムを開発しました。これらにより、約30cm単位で原子炉圧力容器内の状態を把握することが可能になります。
なお東芝は、2013年からロスアラモス国立研究所と共同研究を始めており、東芝が原子炉内計測機器などで培った放射線ノイズの除去技術とロスアラモス国立研究所のミュオン検出技術を組み合わせることで本技術の開発に至りました。
福島第一原子力発電所の2号機では、燃料デブリの取り出し手順や工法を検討するため、燃料デブリの分布状況の早期の把握が求められています。本技術により、燃料デブリの状態を特定することで、デブリ取り出し機器の設計をはじめ、効率的な燃料取り出し方法の選定につながります。
東芝とIRIDは、今後も技術開発を進め、福島第一原子力発電所の廃止措置に貢献していきます。
- 注1
- 高エネルギーの電子や陽子などが大気中の窒素や酸素と衝突し発生する宇宙線の一種。
測定装置
設置イメージ