製品・技術サービス
原子力発電所の安全確保・安定運転支援
既設の原子力発電所では、再稼働に向けて、福島第一原子力発電所の事故の教訓をもとに改正された新規制基準*1に対応した安全対策への取り組みが求められています。
私たちは、地震や津波などの自然事象に対する防護対策の強化および重大事故などに対処する設備の強化を提案し、さらなる安全性の強化のために継続して支援を行っています。
*1 原子力規制委員会の「実用発電用原子炉に係る新規制基準」。2013年7月8日施行。
電源の強化
全交流電源喪失を防ぐ、ガスタービン発電機および空冷式D/G
地震や津波などの外部事象を起因とする共通原因故障による全交流電源喪失への対応を考慮した、外部電源および非常用電源に代わる電源供給システムです。 ガスタービン発電機および空冷式D/G(ディーゼル発電機)は、大気により機関の冷却を行うため、従来の海水による非常用電源とは異なる冷却手段です。 これにより、多様な冷却方式を有する電源を利用し、安全系設備への給電が可能となり、原子炉ならびに原子炉格納容器の冷却機能を確保することが可能となります。
非常用バックアップ電源としての「SCiB™」
全交流電源が喪失した場合においても長時間の直流電源を確保するための大容量かつコンパクトな蓄電池です。これにより、直流電源を必要とする計測・制御系を長時間動作させることができます。
原子炉注水システムの強化
電源が不要なポンプを利用した、高圧注水システム
全交流電源が喪失して電源が無い場合でも、原子炉内で発生する蒸気を利用して駆動するポンプを用いた高圧注水システムです。 従来の原子炉隔離時冷却系による高圧注水システムの強化として、多重化を図り、炉心損傷防止に対する信頼性を高めています。
冷却システムの強化
緊急時に接続できる、モバイル式熱交換器
原子炉から発生する崩壊熱を海へ排出するための原子炉補機冷却系および海水系に代わる代替設備です。 補機冷却設備が利用できない緊急時に、残留熱除去系に冷却水を供給するモバイル式熱交換を接続し、原子炉を冷温停止に移行することが可能となります。
監視計装の強化
重大過酷事故などに対応した、ヒートサーモ式水位温度計
電源喪失時や重大事故などにおいて、使用済燃料プールの健全性を確認するため、 通常より深い水位で使用済燃料プールの水位と水温監視を可能とするヒートサーモ式の水位温度計です。 燃料プール冷却浄化系の機能が喪失し、使用済燃料プールが沸騰状態となっても当該プールの水位監視を継続することが可能となります。
水素対策・環境影響の低減
放射能を吸着する、フィルターベント
重大事故などの際に、原子炉格納容器の過圧や過温による破損を防止するために行う格納容器ベントを、
フィルター装置を経由して行い、放射性物質の環境中への放出が抑えられるシステムです。
これにより安全に格納容器内の圧力及び温度を下げることができます。
加えて、炉心の著しい損傷が発生した場合に、格納容器内に滞留する水素を放出することで、水素爆発による格納容器及び原子炉建屋の破損を防止します。
さらなる安全性強化
自主的にさらなる安全性向上に向けて系統機器・設備の設計検討を行っています。
高温に強く水素の発生が少ないSiC炉心材料
炉心溶融を起こさせない対策として、燃料関連の材料を変える研究開発を行っています。 従来のジルカロイ材は酸化発熱反応が高く溶融温度に達し、かつ、水との反応により、大量の水素を発生させます。 新しい材料は、ジルカロイ材よりも酸化発熱反応を大幅に緩和するとともに、水素の発生量を抑制することが可能であり、 事故時安全裕度を拡大することが可能となります。
溶融炉心を確実に冷却し固化させるコアキャッチャ
福島第一原子力発電所で経験した炉心溶融に対して、炉心を溶融させない防止対策に加え、万が一、炉心が溶融しても、 影響を緩和するため、確実に原子炉格納容器内に保持し、冷却可能とするコアキャッチャを開発中です。 これは、溶融した炉心を受皿のように確保し、水の自然循環で炉心を冷却できる設備になります。
発電所向けサイバーセキュリティ対応のネットワークデバイス
サイバーセキュリティ対策は、コンピュータ(制御コントローラ)やネットーワークが使われている発電所でも必要です。今後想定されるサイバー攻撃から発電所を守るため、通信を一方向にしかできないネットワークデバイスの製品開発を行いました。発電所側から外部へのみ情報を伝達するため、逆の方向からの侵入が困難となります。これは、世界的にも認められているサイバーセキュリティ認証のAchillesにおいて、Level 2の認証を取得したネットワークデバイスであり、発電所のサイバーセキュリティ対策をより高いレベルで実現することが可能となります。