研究開発・技術

【巻頭言】火力発電の新たな価値創造に向けて

 我が国における火力発電は,主力電源として原子力や水力とともに安定した電源供給を担い,特に高度経済成長期からは,長期にわたり,我が国の産業の発展と国民生活を支え,重要な社会インフラ事業の一つとして成長・発展して参りました。
 しかし,2011年3月に発生した東日本大震災に端を発し,電力事業を取り巻く環境は今,大きな変革期を迎えています。脱炭素化傾向の強まりや,再生可能エネルギー電源の比率の飛躍的な高まり,電力システム改革による発送電分離と市場経済の導入,そしてビッグデータやAIに代表されるICT(情報通信技術)の新たな発展など,急激な環境変化と技術革新に適応していかなければなりません。
 火力発電は,このような変革期においてもなお,主力電源として,また再生可能エネルギー発電の調整力電源として,重要な役割を担っています。

 東芝グループは,この大きな事業環境の変化に対応するため,最新のデジタル技術の適用をはじめとして,火力発電の新たな価値創造に貢献する技術開発を進めています。この特集では,火力発電の経済性の向上,環境特性の向上,電力調整力の強化,情報処理の高度化,の四つのテーマに対し,デジタル技術による運用最適化,機器の高効率化や石炭火力の高温化による性能向上,調整力電源としての能力強化,そしてCO2 ( 二酸化炭素)分離回収設備や超臨界CO2タービンの開発などによる環境特性向上などのソリューションについて,最新の取り組み状況を紹介します。
 火力発電技術のソリューションビジネスに関する東芝グループの取り組みをご理解いただく一助になれば幸いです。