研究者紹介

セルフサービス型AI技術AIシステムの立ち上げから
運用・保守までを自動化

AI応用技術開発部門  蘇 鳴鏑 そ めいてき

2018年度入社 情報理工学専攻

機械学習の専門家に頼らないシステム

私の研究テーマは、セルフサービス型AI技術です。これは、製造業の現場などでニーズのある画像検査や監視業務のAIによる自動化を、プログラミング経験のない現場作業員の方でも行えるようなシステムのことです。現状では現場の外にいる機械学習の専門家が、現場の要求に応じたAIモデルを作り、利用可能な状態にしてどのように実運用していくかを提案します。これに対し我々が開発しているシステムでは、現場でオペレーションをしている方々が、専門家に頼ることなく、基本的な要求を満たしたAIモデルを自力で作り、実運用、さらには保守まで行えるようになることを目指しています。実際の操作としては、現場の方々が設定画面の指示に従いクリックして選択していくだけで、AIを作り利用できるようなイメージです。画像などのデータさえ入力すれば、目的に合うようにデータをどう検出・分類するかは、自動的に最適化されます。またAIモデルを稼働させた後、運用を続けるうちに、AIモデルは環境の変化に追従できなくなる時があります。このような時、これまでは現場から「何か変だ」と連絡を受けた専門家が都度調整していたのですが、システムに含まれるAIモデルのチューニングアプリを利用してもらうことで、自動的に劣化などを検知し、継続的にAIモデルが更新されるようになります。

説明イラスト

既存のものに対して疑う目も必要

私は2018年に東芝に入社してからAIに関する開発を続けています。その応用先は、手書き文字認識や事故車両の損傷判定、電力系統の最適化など、様々な分野に渡ります。実装の経験を積んでいくほど自分のアイデアの出し方も良くなるので、経験を積み重ねることは大切です。以前、あるAIモデルの改善提案をし、それがいくつかのプロジェクトに採用されたことがありました。アルゴリズムをしっかり理解していたからこそ、提案することができたのだと思います。人間誰しも一度満足できるものが作れるとそこで安心してしまいがちですが、本当に今のままでいいのだろうか、と常に考えるべきだと思います。私は、研究者には好奇心も必要ですが、それ以外に専門的な懐疑心も必要だと思います。特に新しいものに取り組む場合には、そのまま受け取るのではなく、自分でしっかり理解したうえで判断することが正しい姿勢だと思います。

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ある在宅勤務日のスケジュール

9:00
勤務開始
  • ・メールチェック
  • ・スケジュールチェック
  • ・予定作業内容の報告
9:30
プロジェクト報告内容確認
プロジェクト報告資料作成
11:00
プロジェクト会議
12:15
昼休み
13:30
技術情報収集
  • ・論文勉強会
  • ・技術調査
15:00
AI応用技術開発
  • ・論文追試
  • ・AIモデル開発
18:45
勤務終了
  • ・本日作業内容の報告
  • ・明日のスケジュールチェック

社会的な革新を起こす技術者を目指す

大学の専攻は情報工学で、研究室はAIの研究開発がテーマでした。大学では中国語と日本語の手書き文字認識をやっており、入社して最初の頃に取り組んだテーマも同じでした。東芝での研究開発は、大学での研究とあまり変わらないと感じています。それは幸せなことで、楽しんで働けていると思います。現在取り組んでいるテーマは、来年度中には事業部に試してもらい、実証実験を行うことを目指しています。AI業界はすごいスピードで発展していますので、こちらもスピードを重視しなければならない状態になっています。今後AIは、今のパソコンのように誰でも使うものになると思いますので、その重要性を感じながら研究開発をやり続けたいです。そして、将来はヘルスケア分野にAIを応用したいと考えています。世界には医者を探すのが大変な国や地域もあるので、AIで健康支援を行うことで、人々の助けになると思います。これからの目標は、東芝の技術を世の中の誰もが使っている状況にできるような、社会的な革新を起こす技術者になることです。やはり大志を抱いて目標を立て、頑張っていく気持ちが大事だと思います。常に新しいことを勉強するのは自分の興味の根本にあることなので、やっていても疲れることはないです。

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学生の皆さんに一言

『これからも、ずっと勉強し続けましょう』

蘇 鳴鏑の写真

人生でも会社でも、山あり谷あり。大学入試でも研究者生活でも、そんな時期がありました。そこに影響されず勉強し続けることが、研究者として唯一の進む道だと思います。中国の大学受験はものすごく大変で、大学に入るには1週間のうち6.5日勉強し続ける必要があり、休むのは日曜日の午後だけ、また高校3年生の1年間は、朝6時から夜11時まで勉強する、という状態でした。そのような経験から言えることは、勉強し続けていれば谷になったとしても迷わずに進んでいくことができる、ということです。