研究者紹介

Siパワーデバイス高効率・低損失のパワーデバイスを作る

電子デバイス部門 雁木がんぎ 比呂

2015年入社 物理工学専攻

電力変換の要となるパワーデバイスを設計

多くの機器やシステムで、電力変換の機能を果たしているのがパワーデバイスです。パワーデバイスが扱う電圧の範囲は用途に応じて数十Vから数千Vにも及び、電圧によって材料や製造プロセスも大きく異なります。私は携帯電話などの通信基地局にも使われている300V以下の低耐圧のパワーデバイスとして、電力変換効率の良いシリコンのMOSFET( 金属酸化膜半導体型電界効果トランジスタ)を作る研究をしています。5ミクロン程度の大きさのMOSFETが1万個あまり並んだ素子の中から注目する1つのMOSFETを切り出し、物理シミュレータを利用して電流や電圧のシミュレーションを行います。どこかで想定以上の損失が起きていれば、酸化膜をもう少し薄くする、あるいは歩留まりが落ちないようにサイズを大きくする、といった設計変更を行います。

説明イラスト

シミュレーションの工程をAIで自動化

一つの製品ができあがるまで、設計、試作、シミュレーションを繰り返して3,4年かかります。半年に1つか2つの試作を工場に依頼し、できあがった試作品で物理シミュレーションを行い、その結果を新たな設計に反映させてフィードバックすることを4、5回繰り返すのです。私はこのシミュレーションを行い、その結果を新たな設計に反映させるところを担当しています。また、この一連の作業をなるべく時間をかけずに進めたいと思い、AIを使って自動化することにも取り組んでいます。数年前に東芝AI技術者教育に参加し、その後は研究開発センターのアナリティクスAI部門に社内AI留学して連携を深めたことが役に立ちました。自分で作ったソフトウェアを試したところ、それまで2週間ほどかけていた作業が、半日で終わるようになりました。人的リソースをおよそ9割削減できたことになります。

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ある出勤日のスケジュール

9:00
出社
  • ・メールの確認
  • ・スケジュールの確認
9:30
実験
  • ・素子評価のための電子回路基板作成
11:00
先輩に相談
  • ・実験で困ったらすぐにきける
12:00
昼食
  • ・研究チームメンバーと社食に食べに行く
12:30
バスケ
  • ・構内のリングを使って自主練。いろんな部署の人が、いつもだいたい3人くらい練習している
13:00
勤務再開
  • ・メールの確認
  • ・実験データの整理
13:30
研究チームメンバーとの会議(週1回)
  • ・実験の進捗共有
  • ・技術ディスカッション
15:00
実験
  • ・パワー半導体素子の特性評価
17:00
実験のまとめ
  • ・データ整理、次の実験計画を立てる
  • ・足りない部品の発注
18:30
退社

ある在宅勤務日のスケジュール

8:15
勤務開始
  • ・メールの確認
  • ・スケジュールの確認
8:40
シミュレーション結果の確認
  • ・データ整理
9:30
シミュレーションの設定、実行
10:30
パワー半導体自動設計プログラムの改造(コード実装)
12:00
勤務中断
  • ・昼食づくり
  • ・子供と遊ぶ
13:00
勤務再開
  • ・パワー半導体自動設計プログラムの改造(コード実装)
14:00
AI留学打ち合わせ(週1回)
  • ・自動設計の進捗共有
  • ・技術ディスカッション
15:00
パワー半導体自動設計プログラムの改造
  • ・動作確認
  • ・デバッグ
17:00
社内向け進捗報告資料作成
18:00
勤務終了

研究テーマはいろいろ

私は入社当初からパワーデバイスの研究をしていたわけではありません。入社から1年はLEDを研究していました。その後テーマが変わり、半導体製造プロセスの微細な溝のパターンを作る工程へのシリコンナノワイヤの応用を目指し、アメリカのメリーランド州にあるジョンズホプキンス大学のKempa先生と共同研究を行いました。先生に相談した際に原理的には可能性があるとのお墨付きをいただき、日米を何度も往復し、論文を出したのは懐かしい思い出です。そして、次の研究テーマがパワーデバイスでした。テーマが変わるということは、つまり、その都度、勉強のし直しです。当初は右往左往して、何をしたらよいかわからない状況でした。とはいえ、私の場合、プログラミングという強みがあります。シミュレーションが得意でない人のためにシミュレータを作る、機械学習を使ってみたいという人のところで機械学習ソフトウェアを作るなどして、自分の居場所をある程度確保できていた気がします。どこにいても何かしらの役には立てると思います。先輩から、研究人生は思ったより短いと聞かされています。そうであればこそ、いろいろなことをやってきたという実感の持てる研究者になりたいと思っています。

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学生の皆さんに一言

『身体を鍛えておくといいと思います』

雁木 比呂の写真

社会人になると運動に使える時間は限られてきます。私はバスケットボールが好きなのですが、なかなか時間が捻出できないので、最近は筋トレをしています。筋トレは学生時代にハマり、途中、遠ざかった時期もありましたが、今は午前4時に起きて、近所にある24時間営業のジムで6時ころまで取り組んでいます。思い立ったその日から始めると良いと思います。身体を鍛えておくと、朝起きるのが辛くなくなり、体力がついて長く活動できるようになります。頭を使うときの集中力や持続力も伸びてきますよ。