メッセージ

人と社会の未来に役立つ
技術を創出する

向井 稔 研究開発センター所長

研究開発センターの役割

研究開発センターは、東芝グループ全体を対象とするコーポレートラボです。本センターは1961年に発足した中央研究所を出発点としており、60年以上の歴史があります。今までに、日本語ワードプロセッサー、DVDプレーヤー、スマートフォンなどに入っているNANDフラッシュメモリなどの製品を生み出してきています。また、最近では、急速充電が可能で安全性が高いことを特長とする二次電池SCiB™の開発、ケンブリッジ大学との共同研究による量子暗号通信や、量子コンピュータ理論から生まれたシミュレーテッド分岐マシンの実用化などの成果も挙げています。我々のミッションは、将来の社会や人々の生活に豊かさをもたらすとともに社会課題を解決するような製品やサービスを想像し、そのためにどのような技術が必要かを考えて創り出すことです。そうした活動により、「人と、地球の、明日のために。」という東芝の経営理念に帰着することが基本的な行動指針です。

大学の研究室との違い

企業の研究所としては、研究成果を学会で発表するだけでは不十分です。技術を製品やサービスにして事業化しなければ、経営理念を実践できません。私たちの日々の業務は主として要素技術の研究開発ですが、事業部門と会話しながら社会実装につなげていくことを常に心がけています。また、今までになかったような新製品を生み出すことに加え、既存の製品・サービスの改良や低コスト化についても、先端的な技術をタイムリーに適用していくことで、より良いものにしていきます。研究のフェーズによっては、成果がいつ得られるか明確に見通せない場合もありますが、企業の研究所である以上、最終的にどうしたら社会にお届けできるかというシナリオを一人一人の研究者に持っていて欲しいと思います。

向井 稔

理想の研究者像

私の考える理想の研究者像は次の3つです。

  1. 新技術を生み出し、その技術を社会実装していく志を持っていること。

    研究開発のプロセスの大半は失敗の連続です。そこで意気消沈せずに続けるには、このような技術を社会に送り出したいという目標意識が大事です。自分の技術で社会や人々の役に立ちたいという志を持った人であることを期待します。

  2. 自分の技術がNo.1やオンリー1であることへのこだわりを持っていること。

    世界中を見渡して、自分の研究者としての立ち位置を把握することが重要です。入社して直ぐにNo.1やオンリー1技術を持つことは難しいかもしれませんが、社外とのベンチマークを心がけながら、一つの技術領域の頂上を目指せる位置を早めに確保し、最終的にはNo.1やオンリー1の技術を自分の武器として持って欲しいと考えています。

  3. 技術的コミュニケーション力を持っていること

    この研究所から出てきたエポックメイキングな製品やサービスは、異なる技術の掛け合わせから生まれています。ですから、自分の専門性に閉じこもって研究するのではなく、専門外の人と積極的に対話して欲しいと思います。自分の技術を自信を持って語り、相手の技術も傾聴する。最初はともすれば異国の人と話している感覚になるかもしれませんが、技術分野を乗り越えてコミュニケーションを図り、自分の技術と掛け合わせたらどうなるか、という発想を持って欲しいです。多様性を受容しながら、異分野の技術者と建設的な会話ができる能力はとても重要です。

研究開発新棟を建設中

2024年初めの移転に向けて、研究開発センターの敷地内に新棟を建設中です。新棟は、個人が集中してプログラミングをしたり論文を書いたりするためのスペース、チームでミーティングをするスペースなど、時々の業務の種類によって最適な環境で仕事ができるアクティビティ・ベースド・ワーキング(ABW)が実践できる空間設計がなされています。全く知らない部門の人と隣り合わせで仕事をしてコミュニケーションをすることで、技術の掛け算が促進されれば良いという思いも込めています。また、共創スペースを用意することで、一企業だけでは解決できない社会課題に対して、大学やパートナ企業と一緒に取り組むことのできる機能を持った場所にする計画です。

研究開発新棟

研究者・技術者としての成長の機会

研究開発センターでの業務を通し、研究者・技術者として成長できる機会は数多くあります。例えば、技術の長期計画を立てるという活動があります。10年、20年先の世界を想像し、暮らしや社会課題の変化と技術の発展から、何年後にはこのような製品やサービスが実現する可能性があると未来予測する活動を定期的に行っています。また、我々の研究開発のうち一定割合は事業部門からの委託研究として進めています。事業部門の先にはお客様が存在し、お客様のニーズは社会のニーズにつながっています。委託研究への取り組みも、将来の製品やサービスのイメージを形成する上で大切です。さらに、「アンダーザテーブル」という制度を設けており、各人のリソースの1割程度は予定業務以外のことに使うことを推奨しています。そして、自主的に考えたアイデアを発表する機会として、「ポスター発表会」というイベントを定期開催しています。発表に際して上司の許可を必要としないことが特徴のイベントであり、これをきっかけとして芽生えたテーマも少なくありません。異分野の人に自分の考えた新しい価値を伝えるためのトレーニングの場でもあります。

私たちが理想とする研究者像や研究環境に共感する方は是非、研究開発センターにお越しください。未来を一緒に創っていきたいと思います。

向井 稔