モデルベース開発技術
モデルベース開発技術

自動設計の領域を拡大する環境を開発する

エッジ&セキュリティ開発部門 山崎 正夫
2015年度入社 通信情報工学専攻

エッジ&セキュリティ開発部門 山崎 正夫
2015年度入社 通信情報工学専攻

モデルベース開発技術
モデルベース開発技術

自動設計の領域を拡大する環境を開発する

モデルベース開発(MBD:Model-Based Development)の領域を拡大

私の研究テーマは、モデルベース開発(MBD)と呼ばれるシミュレーションを活用した開発手法です。現在主に取り組んでいるのは、自動車などに内蔵されているモータの制御を行うソフトウェア作成を効率化することです。車載システムには以前は50個程度のCPUが使用されていましたが、今では500個を超えるCPUが搭載されています。ガソリン車でも窓やワイパーだけでなくガソリンを送るのにもモータを回し、冷却用の水を流すためのハードウェアやファンなど、外側からは見えないところにも数多くのモータが使われています。これらの車載用機構や制御部品のソフトウェア開発では、モデルベース開発と呼ばれる開発方法の導入が技術的なトレンドになっています。モデルベース開発でのソフトウェア作成は、実際にコードを書くのではなく、まずブロック線図でシミュレーションを行い、良い結果が得られればそのままモデルに対応したソフトウェアを自動生成していく、という流れで行われます。しかしモータなどのハードウェアを動かすためには生成したソフトウェアはそのまま使えず、ハードウェアを制御するコードを手で追加しなければならないという課題がありました。そのハードウェアの制御コードもモデル上で表現して、開発者が最後までコードを書かなくても済むような開発ができるように、モデルベース開発の環境を改善するためのツールを作っています。

ベトナムの開発センターと連携

現状のモデルベース開発では、ハードウェアの制御パートは手を動かさなければならない部分が残っていたことが課題です。ある信号を出すというシミュレーションと、実際に出したいと思っている信号をハードウェアからどのようにして出すのか、ということの間には必ずギャップが存在していて、今までは手作業でコードを書くしかない状況でした。理想の数値を出すところまではモデルが自動的に生成しますが、その理想の数値に合致した物理的な出力がされるようにする部分まで自動化することが目的です。東芝にはソフトウェアの開発拠点として東芝ソフトウェア開発ベトナム社という関連会社があり、共同でプロジェクトを進めています。入社して1年目から顔合わせのためにベトナムに行き、現地の社員と2週間ほど一緒に仕事をして、ツールの使い方を協議したり情報を共有したりしました。滞在中、現地の結婚式にも連れて行ってもらいました。ベトナムの結婚式は予想以上に盛大で、会社の同僚や親戚など全員がバスで実家に乗り付ける大掛かりなもので刺激的でした。現在はモデルベース開発の実装部分をベトナム社が行い、先方のアイデアももらいつつ開発を進めています。今はリモートでのやり取りばかりですが、現地の社員と一回顔を合わせているかどうかで、仕事のやりやすさも違うことを実感しています。またベトナムに行きたいと思っています。


ある出勤日のスケジュール


09:30   ●出社
           ・メール確認
           ・当日の打ち合わせ予定確認

09:45   ●業務内容、実施優先度確認

10:00   ●モーター制御ソフトウェア開発
           ・設計、実装
           ・開発文書作成

12:00   ●昼食

13:00   ●成果物レビュー
           ・ベトナム社の実装レビュー
           ・チームメンバーの設計レビュー

15:00   ●ベトナム社と打ち合わせ

16:00   ●モーター制御ソフトウェアの動作評価

18:30   ●退社


ある在宅勤務日のスケジュール


09:30   ●勤務開始
           ・メール確認
           ・当日の打ち合わせ予定確認

09:45   ●業務内容、実施優先度確認

10:00   ●MBD環境の開発
           ・アルゴリズム設計
           ・テスト計画策定

12:00   ●昼食

13:00   ●MBD環境の開発
           ・実装

14:00   ●MBDプロジェクトの定例打合せ

15:00   ●MBD環境の開発
           ・デバッグ、修正

18:00   ●勤務終了

ソフトとハードの界面に生じるボトルネックを埋める

入社した2015年からずっとこのテーマに取り組んでいます。学生時代は指紋認証などの画像認識をしていましたが、就職活動が始まる頃に、そもそも画像をどのように取得するのかというソフトウェアとハードウェアとの界面の方が楽しいのではないかと思いました。そこからハードウェアとの界面をテーマにしているような企業で就職活動を始め、ソフトウェアの中でも一番フィジカルに寄っているところへ興味を持ちました。普通のIT企業にはあまりそういうことができるところはなく、ものを実際に作っている企業に的を絞って就職活動を進めましたが、たまたま東芝の研究開発センター所属のOBが大学の研究室に来て『自由にやりたいようにできて楽しい』という話をしたので、それを聞いて東芝に決めました。最初に入ったのは東芝デバイス&ストレージ株式会社に所属する研究開発部門で、その後現在の部門に異動しました。もともとハードウェア界面のソフトウェアがやりたくてその部署に所属できたのでイメージ通りに進んでいましたが、そこにモデルベース開発というテーマが乗ってきた形です。モデルベースも一番下のハードウェア界面から実際にモデルを作る部分は完全にソフトウェアの世界なので、上から下まで全体が見渡せて、広い分野に関わりたいという思いとも合致して楽しくやっています。いまは車載用モータ制御のボトルネックを埋めることに取り組んでいます。埋め方もいろいろありますが、そのうちの2つくらいを試している段階なので、これから第3第4のアイデアを試すことに加え、鉄道や産業機械などこれまでと異なる分野でそれぞれのニーズに合わせた開発にも携わっていきたいと思っています。


学生の皆さんに一言


『職場の雰囲気とやりたいことの両方が合致していることが大事です。』

複数の部門を跨いだ身として感じるのは、同じテーマをやっている部門でも雰囲気が全然違う場合があるということです。東芝グループ内でも複数箇所で就職活動をすることはできるので、やりたいことに近いところがあったら、全部見てみるのがいいのではないかと思います。いくら業務内容が自分の求めているジャンルだとしても、職場の雰囲気や人間関係が微妙だと続きません。職場の雰囲気と自分のやりたいことの片方だけを追い求めて視野を狭くしてしまうと、あとで辛くなってくるかもしれません。業務内容と人間関係それぞれのバランスを見ながら就職活動をした方がいいのかなと思います。