研究者紹介

省電力無線を用いたセンサネットワーク技術社会を支える構造物を
低コストで無線監視する

IoTエッジ部門 長久保 咲絵

2015年度入社 数理・物性構造科学専攻

災害から人を守るネットワーク技術に取り組む

私は省電力マルチホップ無線ネットワーク技術の研究開発を行っています。近年、大雨による河川の氾濫やダムの決壊、震災や老朽化による建物やトンネルの崩壊といった事故が発生しています。これらを防ぐためには構造物などの対象を常時モニタリングしたいのですが、特に人の立ち入りが困難な場所では、対象に設置したモニタリング機器の定期的なメンテナンスが難しいという問題点があります。そこで、電池で長い期間動き続ける無線機器を連携(マルチホップ)させ、データを収集することのできる技術が求められています。このような無線センサネットワークの研究は長く取り組まれており、今は事業化を進めている段階です。現在製品化の支援をしているテーマは、地震発生時におけるエレベータの自動復旧運転をサポートするためのシステムです。大きな地震が発生すると、エレベータのカゴやそれと対になっている釣り合い錘が揺れ、周辺のレールが損傷することがあります。しかしカゴ以外の部分に電源を通すことは難しく、モニタリングしたい対象物の揺れはこれまでの無線センサでは計測することが困難でした。そこで、データを取得したい部分に無線センサを置くことで揺れをモニタリングするシステムを開発し、地震が起きたときに復旧までの時間を安全に短くすることが可能になることを目指しています。また製品化に向けた業務ののほかに、新しい研究開発も行っています。例えば、CPS(Cyber Physical System)の実現にむけて、災害時においてもクラウドサービスから無線センサまで安全なネットワークを維持する技術などに関心を持っています。

説明イラスト

主担当として海外との共同研究を実施

製品化に至るまでには、連携先の方々と頻繁に打ち合わせをします。製品に新しい機能を入れることは技術的に可能か、どのような仕様が良いかなどを議論し、試作機を作って製品化を担う事業部に渡します。また、多くの実証試験を繰り返す過程もあります。特に良い経験となったのは、アメリカの大学との共同研究で、ニューヨークにあるマンハッタン橋の橋梁に無線機器を設置し、老朽化の影響を計測したことです。この研究は私が主担当として取り組み、最終的には論文や国際会議への投稿につながりました。共同研究先の学生は、構造物の老朽化のモニタリングには専門性があるものの、無線通信やセンサネットワークに関しては詳しいわけではなかったので、専門性や言語の壁がありつつも理解してもらうよう説明するのは大変でした。さらに論文を投稿するにあたり、時差もあるなか相手のスケジュール感などを聞き出しながら締切に間に合うようにマネジメントしていくのも苦労したところでした。

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ある出勤日のスケジュール

9:30
メールチェック
  • ・1日のスケジュール確認
10:00
チームメンバーとミーティング
  • ・仕事内容の共有や技術ディスカッション
  • ・楽しく雑談する時間も
11:00
無線機を用いた動作試験の準備
  • ・事業部門が研究所発の技術を製品化するにあたって研究所から試作機を提供
  • ・試作機開発のための実機実装や動作確認を実施
12:00
昼食
  • ・同期と一緒に食堂や勤務地近くでランチ
13:00
無線機の動作試験
  • ・必要に応じてメンバー間で相談をして、デバッグやコーディングを実施
17:00
打合せ資料作成
  • ・事業部門との次回打ち合わせにむけて資料を作成
19:00
退社

ある在宅勤務日のスケジュール

8:15
メールチェック/1日のスケジュール確認
  • ・打合せ資料の確認
9:00
事業部門と打ち合わせ
  • ・事業部門と取り組む研究の検討内容の報告や進捗確認
10:00
チームメンバーと相談
  • ・打合せ内容を踏まえて先輩と今後の進め方を相談
12:00
昼食
  • ・息抜きに家の周りを散歩
13:00
技術動向の調査
  • ・新しい機能や通信方式を検討するにあたって調査
15:00
新機能の仕様検討
  • ・事業部門の要望などに基づいて仕様を検討
18:00
勤務終了
  • ・19時から自己啓発の一貫で通学する経営大学院の講義を受講する日も

業務時間外も自己啓発でスキルアップ

学生時代から、装置が動かない、試験結果が思ったようにいかないといった課題や困難に対して、一心に泥臭く取り組むことが好きな性格でした。その姿勢を教授が見て、ものづくりで活きる特性なのではと言っていただいたことが気づきになり、主にメーカーを中心に見て回る中で東芝に就職することを決めました。日頃の業務では、これまで製品化に関わるなどやりがいのあるテーマに恵まれてきたと思っています。一方、業務外での取り組みとしては、現在経営大学院に通い、経営学の修士号を取ろうとしています。その動機は、技術的な側面だけでなくビジネスの観点を学ぶことで社会実装に必要な顧客視点を身につけ、会社に貢献したいと思ったからです。私は経営大学院に通うという選択をしていますが、中には社会人博士を取る人もいます。また研究開発センターには、主な研究テーマ以外に1割程度のリソースを使ってもいいアンダーザテーブル制度など、余力を与えてくれるような仕組みと風土があります。本人が何か価値を生み出したいと思っていることに対して理解を示してくれる方が多くいて、恵まれた職場環境だと思っています。周囲には技術を極めた人がたくさんいて憧れますが、自分がそうなれるかというと、なかなか難しいのかなというもどかしさを感じています。しかし研究開発センターには、広く技術を俯瞰できる方、どのような技術に取り組むべきかを判断するマネジメントをしている方など、様々な方がいて、キャリアの描き方に関して多様な選択肢がある環境のなか、のびのびとやらせていただいています。

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学生の皆さんに一言

『「やりたいこと」「できること」「求められていること」は何ですか?』

長久保 咲絵の写真

就職活動中から、私はどのようなところで役に立てるのか?と悩んでいました。それはつまり、私が「やりたいこと」「貢献できること」「社会に求められていること」は何か、という3つのことがはっきりしていなかったのだと思います。でも、「自分の特性は?」「できることは?」「社会ってどういうことを求めているの?」と考えるだけでは答えは出てきません。自分が楽しいと思えたり、人に喜んでもらえて嬉しいと気づいたりすることは、行動を起こさないと得られないと思います。踏みとどまってしまうのは勿体無いので、チャレンジし行動していく姿勢が大事です。時間のたっぷりある学生時代に積極的に行動して、自分なりの3つのことに気づくことが本人の財産になるのではないかと思っています。