研究者紹介

次世代SCiB™材料技術電池の高容量化でEV市場に応える

機能材料部門 小板橋 惟子

2020年度入社 先端科学専攻

車載用リチウムイオン電池の開発

東芝ではSCiB™という製品名で、長寿命、高い安全性を備え急速に充電が可能なリチウムイオン電池を作っています。リチウムイオン電池というと、スマートフォンなどに使われる小型のものが身近かもしれませんが、現在脱炭素化への動きが活発なことから、車両や定置用の電源などに電池の大型化・高容量化が求められています。私たちが研究しているのは、SCiB™の特長を活かしつつエネルギー密度、入出力性能を向上させたリチウムイオン電池です。SCiB™の負極材であるチタン酸リチウム(LTO)に対して約3倍の理論体積容量密度を有するニオブチタン酸化物(NTO)を用いることで高容量化を実現する電池であり、私は電解液等の電池を構成する材料開発を担当しています。材料単体で体積容量密度が高くても、電池にすると電極内の抵抗が加わるため、エネルギー密度の向上と入出力性能はトレードオフの関係にあります。その両立のカギとなるのが電解液等の電極構成部材の改良です。また急速に充放電を繰り返していると電池が高温になり、そのときに電池が劣化してしまうので、それを抑制するための添加剤等を検討しています。電池の中で何が起こっているのかを知らないと課題に対処できないので、電池が繰り返し充放電したときにどのような現象が起きているのかも分析チームと連携して調査しています。

説明イラスト

実用的な性能を目指して実験を繰り返す

基本的に毎日実験をしていて、条件を変えた電池を試作・評価し、得られた結果を考察して次の実験に反映する日々を繰り返しています。今は顧客との距離が近く、具体的な製品の開発に携わっているので、毎週事業部や営業部門との合同ミーティングがあります。私の所属部門から製品化とともに開発部門に異動したメンバーもいて、所属が変わっても連携しながら開発を進めています。入社前、研究開発センターでは自分が作ったものが製品になるところは簡単には見られないと思っていたのですが、今の環境は自分の携わった研究が世に出る姿をイメージできるので、ラッキーだと思っています。近い将来、自分の研究開発した電池で走る車に乗れたらいいなと思います。電池は構成要素が多いので、一人で全ての研究開発を行うのではなく、チームワークで進んでいます。チームでやることが楽しく、アイデアも出やすいと感じています。データが出たらすぐにメンバーや上司と一緒に議論するのですが、本当に知識と経験が豊富な人が多いので、私が見ているだけでは抽出できなかったようなポイントに気づかせてもらうことの連続です。まだまだ上司や先輩に教えてもらうことが多いですが、自分も今までとは違うデータの見方ができたときには、少し成長できたかなと思いました。

小板橋 惟子の写真

ある出勤日のスケジュール

8:30
出社
  • ・1日のスケジュールの確認、メール対応
9:00
実験
  • ・電池の作製
11:00
事業部とのミーティング
12:00
昼食
13:00
実験
  • ・電池の特性評価
15:00
データ整理
16:00
メンバーとデータ共有
  • ・次の方針の話し合い
17:30
退社

製品化が間近な開発と最先端の研究を並走

大学でもリチウムイオン電池の研究室に所属していたので、リチウムイオン電池についてある程度は理解していると思っていたのですが、入社して本当にすごい技術者の集まりなのに驚きました。SCiB™の立ち上げから携わっているメンバーもいて、この中でやっていけるかはじめは不安もありましたが、チームのメンバーはとても親切で一から教えていただきました。大学では製品化にはまだ距離のある研究をしていたので、会社に入るなら自分が取り組んだことが世に出ることがハッキリしている開発部門がいいのかな、と悩んでいました。研究室の教授に相談すると、研究所がものづくりの上流で、顧客に近い開発部門が下流とすると、上流にいれば全体が理解でき製品に近い下流に行くこともできるけれど、逆は結構厳しいと指摘され、研究所にチャレンジしようと思いました。結局今は製品に近いところにも関われていますし、まだ実用化はされない最先端の基礎研究も行えていて、ありがたいと思っています。基礎研究の方は、産学が参加している電池討論会で発表して、そのあと国際学会に出ることを目標にしています。今はまだ研究所で勉強させてもらいたいという思いですが、開発部門への短期異動から戻ってパワーアップしている先輩もいるので、いずれは事業部で経験を積んで研究所に還元してみたいな、という気持ちもあります。

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学生の皆さんに一言

『自分が譲れないと思うことに向き合い、自信を持って進んでください』

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就職活動は人生を決めるひとつの選択です。だからこそ周囲の声が敏感に聞こえてくることも多いと思います。でも自分がこれから生活していく上で大切だと感じていることは、人それぞれだと思います。たとえば大手企業に入りたい、研究力の高い会社がいい、雰囲気の良さを優先したい、勤務地を指定したいなどの希望は、どれが大事というのは人によって違っているはずですし、どれをとっても間違いではありません。自分の思うことに対して「それってどうなの?」と人から言われてしまうこともあるかもしれません。そこで周囲の声を聞きすぎて自分の意思を変えてしまうと、会社に入ってから「やっぱりこうすればよかった」と後悔してしまうかもしれません。それは残念ですよね。自分が一番大事にしたいと感じているところは間違っていないと信じて、自分に自信を持って進路を決めてもらえるといいと思います。