半導体工場へのAIシステムの導入とMLOps基盤の整備
半導体工場へのAIシステムの導入とMLOps基盤の整備

AIによる製造現場の継続的な
業務効率化を実現する

エッジAI技術開発部門 森 智洋
2023年度入社 連合農学研究科

エッジAI技術開発部門 森 智洋
2023年度入社 連合農学研究科

半導体工場へのAIシステムの導入とMLOps基盤の整備
半導体工場へのAIシステムの導入とMLOps基盤の整備

AIによる製造現場の継続的な業務効率化を実現する

AIの開発と運用を効率化して自動でできるようにする

昨今の製造現場では、良品と不良品の仕分け作業など様々な用途でAIが使われるようになっており、現場にもAI開発の担当者が必要です。同時に、AIは作れば終わりではなく、外部環境の変化などにより精度が落ちる場合があるので、精度が落ちていないか監視する担当者も必要です。しかしそれらの人材は少なく、そもそも工場で働く人の数が減っています。現在私が関わっているのは半導体工場で、私はそうした現場の方でも簡単にAIの開発と運用をできる基盤を作っています。この総称を、MLOps(Machine Learning Operations)基盤と呼びます。現場でデータを集め、AIを開発し、それを現場で使い、稼働状況を監視して精度の低下があれば原因を見つけて対処する、というループを誰もが回していけるような基盤です。これにより、現場の作業が効率化され、より多くの時間を他の重要な業務に割くことができます。将来的には自動化を目指しながら、第一段階として現場の製造に関する専門家の方々が扱えるシステムを開発しています。

製造現場に足を運ぶことで真のニーズを捉える

AIのプログラミングを習得するには長い期間が必要です。それを現場の皆さんにしていただくのは時間がかかりますし、本業がおろそかになりかねません。そこでプログラミングをせずにボタンクリックや設定値を入力することで、欲しい情報の確認やAIを開発できる基盤を作っています。具体的な仕様については、現場の担当者の要望を聞いた上で、どのようなものを作ればいいかを考えながら進めています。AIが使われているのは現場なので、担当者と密にやりとりしていくことは非常に重要です。実際に工場に出張して現場の実態を知り、現場の皆さんの背景を理解することも大事です。現場にはそもそもどのようなニーズがあり、どういうことをしたいのか、担当者はどんな知識を持っているか、など様々なヒアリングをします。また、最終的に何をしたいのかという目的を共有しつつ、対処すべき問題をキャッチアップしていきます。そして我々AIの専門家の観点からもAI開発には本来どういうことが必要かを伝え、それぞれが必要としていることを擦り合わせていくことで半導体工場向けのMLOps基盤は作られています。今は一部の工程で試験的に開発・導入を進めていますが、ゆくゆくは様々な工程や製品を包括したものを作り上げたいと思っています。


ある出勤日のスケジュール


08:30   ●出社
           ・メール/Teamsチェック
           ・その日のタスクとスケジュールを確認

09:00   ●開発
           ・コーディング、データ分析、
            資料作成、など

11:00   ●ユーザとの打ち合わせ・ヒアリング

12:00   ●昼食

13:00   ●デイリースクラム
        (毎日実施する開発状況の共有)

14:00   ●開発
           ・コーディング、データ分析、
            資料作成、など

16:00   ●定例会議への参加

17:45   ●仕事片付け

18:00   ●退社

異分野からの挑戦と成長を支える人と風土

大学のときは農学部に所属し、AIを用いた農作物の自動選別を研究テーマとしていました。修士の頃からAIを使い始め、博士に残って研究を続けていく中でスキルも身につき、相手の話を聞いてそれに合わせた手法を考えていくという下地ができていきました。その後就職を考えた時に思ったのは、AIが使われている現場というのはどのような状況なのだろうということでした。AIを開発できたとしても、現場で使われないと意味がありません。学生のころは、試験的に適用するフェーズで止まることが多くありました。そのため、すでにAIを活用している現場や、これから活用していく現場でどのような過程を踏みどのような課題が出てくるのか、というところを体当たりで体験してみたい、という思いが強くなりました。そう思ったとき、当初は農業関連の会社を考えていたのですが、AIの開発と運用をしている電機メーカーも就職の選択肢として入ってきて、その一つに東芝がありました。入社して今も特に感じるのは、周りが本当に尊敬できる人たちばかりだということです。入社当初はAIの予備知識はありましたが、数学的知識、開発スキルなどが不足していました。最初は不安もありましたが、チームの先輩に粘り強くサポートを続けてもらったおかげで、最近では一人でこなせる仕事が増えるなど成長を実感しています。スキルが高く、人としての誠実さや一緒に考えてくれる姿勢を持った人たちがいたからこそ、今の自分があります。また、異分野からやってきた自分でも職場に馴染めて仕事ができているのは、おそらく東芝の風土なのだと思います。他部門を見ていても誠実な方が多く、だから異分野の人間も受け入れてくれて社員が育ち、新しいことに取り組めているのだと思います。将来的にはMLOps基盤を進展させ工場のDX化を見届けたいという思いに加え、東芝がこれまで事業分野としていなかった領域、次の東芝の新しい成長事業に手を出せないかなという野望も持っています。大きな夢として、新しい分野に東芝が取り組むときには、ぜひチャレンジしてみたいです。


学生の皆さんに一言


『人との縁を大事にしてください』

私が今この職場にいるのは、農学部時代にAI研究に誘ってくれた社会人ドクターの方に出会ったことが発端となっています。その方は恩師のような存在で、現在もやりとりがあります。いつどこで自分の人生を変えるような人と出会うかは分かりませんし、会ってすぐにその人が自分の人生を変えてくれる人だと分かるわけでもありません。出会った瞬間に気が合わなくても、しかるべきタイミングで自分にとって大事なキーパーソンになるかもしれません。なので、人との出会いを一回会っただけでおしまいにしないでください。やり取りを通じてその人の価値が段々と見えくることもあります。自分の中の気づきを引き起こしてくれる人に出会える確率を増やすためにも、いろんな人に会って欲しいと思います。