研究者紹介

光学検査技術微細な欠陥の検査を
自動化する

機械システム部門 加納 宏弥

2014年入社 理工学専攻

今まで見えなかった欠陥を捉える

工場で作る精密な部品や製品に傷や汚れなどの欠陥はないか、きれいに仕上がっているか、照明やカメラに工夫をすることでうまく画像に捉える技術を研究しています。この領域は、今でも自動化があまり進んでいません。現場では、熟練の検査員の方々が長年の経験を生かし、部品を様々な角度から観察してわずかな傷や汚れまで見つけ出しています。自動化が進んでいないのには理由があります。部品に様々な角度から照明をあて、浅く小さい傷や汚れまでカメラで捉えようとすれば、とても大掛かりな装置を用意しなければならないのです。それは現実的ではありません。そうかといって、固定されたアングルのカメラでは捉えられる傷や汚れに限界があります。いかにして、1台のカメラでわずかな傷や汚れまで画像として捉えるか、というのが研究テーマです。その中で私は光学系の開発や実験を担当しています。光学的プロトタイプで実験を行い、データを取り、解析し、先輩からアドバイスももらって、さらに必要な実験に取り組むというサイクルで研究しています。

説明イラスト

メンターになり自分の成長を実感

高校生の頃に科学雑誌で光に関する記事を読んで光学に興味を持ち、大学ではその記事を監修した先生の研究室で光物理を学びました。学生時代の研究で得た知見は、現在の研究にもずいぶん役立っています。潜在的なお客様からの引き合いもあり、研究者とはいえ、社外の方の対応にあたることもあります。そのような時は、事業部門の開発部隊や営業部隊の方と協力しています。自分たちの技術がどこまでできていて、何ができないのか、専門外の人にも正しく理解してもらう必要があるので、技術をできるだけわかりやすく伝える努力をしています。昨年からは、光学チームに配属された後輩のメンター(*)も担当しています。それまでは直属の後輩がいなかったので、常に質問をする側でしたが、メンターになって後輩からたくさん質問されるようになりました。新人時代の自分では答えられなかっただろう技術的な質問にも回答できていることにふと気付いたとき、勉強できているんだな、成長しているんだな、と自分に自信が持てるようになりました。

(*)メンター:入社からおよそ3年間、研究はもちろん、社員として出合うさまざまな事柄について相談にのってくれる立場の先輩社員のこと。

加納 宏弥の写真

ある日のスケジュール

9:00
出社
  • ・メール確認
  • ・スケジュール確認
  • ・事務作業
10:00
事業部門との定例会議(オンライン会議)
  • ・研究成果の報告とディスカッション
  • ・事業化に向けた開発方針やスケジュールの確認
11:00
開発光学系の理論解析
  • ・光学系モデルや解析アルゴリズムの開発
  • →光伝搬解析による光学性能の検討
12:00
昼休み
  • ・チームメンバーと一緒に社内食堂で昼食
13:00
研究チームメンバーとの会議
  • ・今後の研究の進め方を再確認
  • ・チーム内でのスケジュール調整
14:00
光学実験、データ解析、資料作成など
  • ・実験の場合は光学実験室に移動して作業(人数は1~3名)
  • ・解析した実験データはメンバーと共有しその場で議論
  • ・結果がまとまったら事業部門向けの報告資料を作成
17:00
プロトタイプの設計
  • ・実験や解析の結果を反映し、新しい光学系を設計
  • →仕様が固まってきたら試作部門を交えて打合せ
18:30
メールチェック、事務作業
19:00
退社

東芝AI技術者教育を研究の実践に活かす

社内の教育プログラムが充実していることは東芝の魅力だと思います。東芝AI技術者教育もその一つです。東芝グループの従業員を対象に、東京大学から講師を招いて6日間にわたりAIに関する講義を受け、演習を行うプログラムです。画像処理や分類がAIでできるのかと興味を持って参加し、古典的な統計・機械学習から深層学習や強化学習まで、幅広く基本を一通り教わり、プログラミングを経験しました。自ら選んだ課題をAIで解決して紹介する発表会もありました。AIの処理の仕組みを知った上で画像を見ると、それがAIでの処理に向いているのか否か、区別がつくようになりました。この教育を受ける前は数多くの写真を撮ればAIで何でもできると思っていましたが、それほど簡単ではないことがわかり、適切な条件を体得できたのは収穫でした。まだまだ研究者としては未熟ですが、いずれ、社内外問わず、どこかで何か光関係で困ったことがあれば研究開発センターの加納に聞こう、と言われるぐらい、実力もプレゼンスも上げて、駆け込み寺のような研究者になりたいと思っています。

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学生の皆さんに一言

『就職活動の初動では、業界や業種を過度に絞らず広い視野で臨みましょう』

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私はメーカー志望でしたが、他の業種のことを知らないままメーカーに行っても良いものか、迷いました。他の業界も一通りまわってみようと思い、金融や食品、IT系などの説明会にも参加しました。そうすると、たとえば金融の説明会に行っても興味が持てないのです。その業界に全然興味が持てない理由は何だろうかと考えると、逆に、自分のメーカー志望の理由が自然にわかってきました。「これは自分が作りました」と示せるもの作りをやりたかったのです。さまざまな業種のオフィスや工場に行けるのは就職活動中だけです。魔法の時間だと思って、就職活動はいろいろ見てまわり、楽しむと良いと思います。