研究者紹介

HDDバストレース解析・可視化技術HDDの応答性を改善する

エッジAI技術開発部門 竹本 一馬

2019年入社 理工学研究科

データセンタ用HDDの最適化

私たちはHDD(ハードディスクドライブ)の読み込み/書き込み速度の性能改善を目指し、日々研究開発を行っています。主な対象はデータセンタに納入される大容量、かつ高性能のニアラインHDDです。データセンタでは、SNSなどの大きなデータを処理するために専用のアプリケーションを動かしています。そこでHDDの性能が存分に発揮されるように、読み込みや書き込みのアクセスのパターンに合わせ、HDDコントローラのファームウェアを最適化します。世界でも数少ないHDDメーカならではの、ハードウェアとソフトウェアの接点の仕事と言えるかもしれません。データセンタの方々から性能に関するご要望を伺う際には、テストケースもご提供いただいています。そのテストケースのアクセスのパターンを解析する部分を私は担当しています。私たちのチームの拠点は川崎にありますが、実験設備としてのHDDは横浜事業所にあります。自分の手元のノートPCで、アナライザから吸い出したバストレースを見て解析を行います。エンジニアリングに近い研究で、事業部門とプロジェクトを組んで一緒に進めています。

説明イラスト

ユーザごとに異なる要望に的確に応える

読み込みと書き出しの性能には、大きく分けてスループットと応答時間があります。HDDの中ではアームが物理的に動いてデータの読み書きが行われるので、たとえば読み出すデータが連続して並んでいたほうがスループットは上がります。ただ、そのためにリオーダリングと呼ばれるデータの並べ替えをすれば、応答時間が悪化してしまいます。転送速度と応答時間のバランスの調整が必要です。また、キャッシュの検討も重要です。次に読み出されるデータを高い精度で予測しキャッシュに収めておけば、ディスクの回転速度に関係なく高い性能を出すことができます。データをディスクから読み出しているのか、キャッシュから入手しているのか、リクエストを出した側からはわからないので、キャッシュがうまく機能していれば、単純に早く見えるのです。そこに工夫の余地があります。読み込みと書き出しの高い性能という同じ言葉で表現されていても、スループットをとにかく上げて欲しいという場合もあれば、スループットも応答時間も両方とも向上させたいという場合もあります。ユーザごとに異なる要望に的確に応えられるよう、ファームウェアの最適化を行っています。

竹本 一馬の写真

ある在宅勤務日のスケジュール

9:30
勤務開始
  • ・メール/Teamsチェック
  • ・本日のスケジュールとタスクを確認
10:00
(週一回) スプリントレビュー&プランニング (電話会議)
  • ・一週間のタスクが達成されたかをチームで確認し、次の週の目標について決定する
12:15
昼休憩
13:15
午後勤務開始
13:20
(毎日)デイリースクラム (電話会議)
  • ・チーム内の少人数で進捗確認や相談を行う
14:00
データ解析、ツール開発、報告資料作成など
19:00
一日の振り返り
  • ・明日のスケジュールを確認
19:15
在宅勤務終了

スクラムフレームワークで業務を推進

新型コロナウイルスが現れる前は、川崎のオフィスに毎日出社し、横浜事業所にもたびたびでかけて会議をしていました。しかし現在、私はもちろん同じ部門のメンバーは90%以上が在宅勤務で、月に1日か2日しか出社していません。お互いに顔を合わせる機会がほとんどなくなってしまいました。そこで、私たちのチームでは、「スクラムフレームワーク」という取り組みを始めました。水曜日の午前中に「スプリントレビュー&プランニング」と呼ぶオンライン会議を開き、それまでの1週間の業務を振り返ったあと、向こう1週間の業務を細かいタスクに分けて詳細に書き出し、実行計画を立て、1週間後の到達目標を決めています。さらに、毎日昼休み直後の10分ほどの「デイリースクラム」で、こまめに進捗状況をメンバー間で共有し、必要ならば手助けを求め、計画を変更することもあります。スプリントレビュー&プランニングやデイリースクラムがあるので毎日メンバー同士で話をしますし、仮に自分の仕事が思うように進まないときでも必要以上に足踏みしてしまうことがなくなりました。仕事にリズムが生まれ、新型コロナウイルス以前よりも効率が上がっていると感じます。

竹本 一馬の写真

学生の皆さんに一言

『自己分析も大事ですが、誰かに心の内を話すことも有効です』

竹本 一馬の写真

いろいろなアイデアを出すことや、まだ誰も試したことがないことを自分で試してみることが、好きです。ですから、自分のやりたいのは研究なのか開発なのか、就職活動の自己分析の段階で結構悩みました。自分の中で答えが明確には定まらない状態のまま社員の方に素直に相談してみたところ、それらを両立できる道が見つかりました。私の場合、第3の選択肢が見えていないだけでした。実際に働いている人に心の内を話してみると、すんなり解決することもあるかもしれません。OBの先輩社員は話しやすいと思います。また、説明会で相談タイムになったら、全力で質問すべきです。そこで黙ってしまうのはもったいないですよ。