研究者紹介

物体検出・追跡技術物体をリアルタイムに
検出・追跡する

コラボレイティブAI部門 小林 大祐

2016年入社 総合情報学専攻

画像からリアルタイムに検出して追跡

私はカメラの画像から特定の物体を検出し、追跡する技術の開発に取り組んでいます。画像認識の中でも基盤となる技術で、たとえば大型商業施設に設置されているいくつものカメラの映像から人の動きを解析する、不審者を認識する、あるいは車載カメラで周りの車両がどのように動いているかを解析するなど、さまざまな場面で利用されています。IoTの広がりで、位置検出や追跡が可能なデバイスも登場してきました。しかし、あらゆるものに位置検出や追跡が可能なデバイスをつけておくわけにもいきません。一方、画像認識技術を利用すれば、カメラの映像から物体の検出や追跡といった解析をすることができます。この技術を実際に運用する際に重要視されるのは、用途にふさわしい精度が出ることはもちろんのこと、リアルタイム性です。大きな遅延なく実時間で検出や追跡ができるかどうかが、実用性を大きく左右します。そこで、実際の利用環境を意識して、充分な精度を保ちながら解析ができるように、研究開発を進めています。

説明イラスト

入社1年目で、新しいテーマの担当に

私は入社してすぐに、新しく立ち上がったばかりのテーマに取り組むことになりました。東芝のラグビー部を東芝の技術を使って支援する構想が立ち上がり、私たち画像認識のチームにも話が来たのです。東芝ラグビー部のアナリストにお話を聞いたところ、ひとつの課題が見えました。戦略を立てるために試合の映像を解析するとき、一つひとつのプレイの結果やプレーヤー個人の記録を手動でタグ付けする作業にとても時間がかかっていたのです。本来アナリストは戦略を立てることに集中したいのに、それができていませんでした。そこで、ラグビーの映像から個々のプレーヤーの位置とプレイの流れを自動でタグ付けする映像解析技術を開発することにしました。自分にはラグビーの経験はまったくありませんでしたが、研究の素材となるラグビーの映像を自分で撮影しながらルールも学び、研究を進めました。

小林 大祐

ある在宅勤務日のスケジュール

9:00
勤務開始
  • ・メール確認
  • ・スケジュール確認
9:30
研究テーマに関する作業
  • ・アルゴリズム実装
  • ・精度検証の実験
12:00
昼休み
13:00
情報共有ミーティング
  • ・チーム内で進捗報告
15:00
実験結果の整理
  • ・チームメンバーと結果を共有して改善策を議論
18:00
資料作成および事務作業
19:00
勤務終了

新しい技術をスピード感を持って実装する

ラグビーの映像解析の成果への関心は高く、学会発表をきっかけに放送局など社外からいくつも問い合わせをいただきました。そして、新たにロードレースの中継映像からランナーを認識する取り組みや、選挙速報の特別番組における顔認識技術による業務効率化の取り組みも始まりました。私たちが開発した技術を実際に利用した放送局の方から「これが手放せなくなりました」という声をかけてもらった時は、とてもうれしかったです。入社後の早い段階から社外とつながりのある業務を担当できて、大きな励みになりました。基礎的な研究活動としては、学生時代と同じように最新の論文を読み、新しい技術を実装して実験をしています。企業の研究らしいところは、事業化を目的として利用者の意向を意識して技術を実装していくところです。形にした技術を実際に利用してもらい、フィードバックを受け取る、そして修正する、これを繰り返して世の中に送り出せるように技術を仕上げていきます。自分の中に、常に新しい技術を追い求めていたいという思いがあるので、関わった技術の事業が順調に進み始めたら、次の成長の種子となるテーマを社会やユーザーとの対話から探し出し、また新しい技術を育てていきたいと思います。

小林 大祐

学生の皆さんに一言

『就職活動は、自分を見つめ直すいい機会です』

小林 大祐

大学の中で研究をしていると、自分の専門分野の外側にはあまり目が向かないかもしれません。それでも、就職活動をする時はいったん自分の専門のことは忘れ、少し視野を広げていろいろな企業を見ることをお勧めします。それは自分を見つめ直すいい機会にもなると思います。実際、自分が就職活動でさまざまな企業を見学した時の経験やそこで得た知識は、その後社会人として働く上で、とても役に立っています。幅広く見た上で、やはり自分はこれがよかったのだと再認識するのも大切なことだと思います。