研究者紹介

パワーエレクトロニクス回路パワー半導体を
賢く制御する

ワイヤレスシステム部門 川井 秀介

2010年入社 総合デザイン工学専攻

進化し続けるパワー半導体を制御

私はパワー半導体の制御を効率的に行う方法の研究を行っています。カーボンニュートラルや脱炭素社会が注目されるなか、自動車をはじめ社会のさまざまな機器の電動化が進んでいます。電動機器の中には、電力変換器という部品が必ず入っています。身近な例では、パソコンとコンセントをつなぐ四角い箱です。電力変換器は、このほかにも、鉄道、車、エレベータなど、様々なところで利用されており、その電力変換器は、東芝が得意とするパワー半導体と、それを制御する回路でできています。パワー半導体は近年めざましい進化を遂げていて、動作速度は速く、損失は小さくなっていますが、それに伴い制御が難しくなっています。電力変換器のパワー半導体だけを更新すると、ノイズが発生したり、壊れやすくなり、そのままでは使えないケースも発生しています。そこで、特性に適した駆動波形でパワー半導体を賢く制御する回路の研究開発を進め、高速、低損失、低ノイズのスイッチングの実現を目指しています。また、パワー半導体は熱を持つことがあり、過剰な熱ストレスにさらされると劣化が早まります。そこで、パワー半導体の状態を検知して、独自のアルゴリズムで寿命を予測することにも取り組んでいます。

説明イラスト

委託研究と自主研究を並行して推進

電車からデジカメの充電器まで、実装先のレンジの広さがパワー半導体の魅力です。世の中のありとあらゆるところに存在しているので、技術を通した社会への貢献を実感できます。それぞれのパワー半導体に応じた制御が必要で、それが研究の難しさでありおもしろさでもあります。事業部門から具体的な製品を想定した目標が提示され、それに向けて技術を開発するケースもあります。事業部門とともにお客様のところにも出向き、そこで得られたフィードバックをもとに回路、製品の仕様を事業部と協力して決めていきます。いろいろなお客様の要望を反映しつつ、製品として成立する仕様を決めることも行っています。また、リスクの大きい先鋭的なテーマは自分で目標を決め、今後必要とされる仕様を定めて研究を行うケースもあります。どちらの視点も大切で、両方の研究開発を並行して進めています。

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ある日のスケジュール

7:45
出社
  • ・Teams確認
  • ・メール確認
8:15
チーム内研究業務打ち合わせ
10:00
実験室で測定
11:30
チームの打ち合わせ
  • ・事務報告や雑談など
12:00
お昼ご飯
13:00
実験室で測定
15:00
シミュレーションにて実測の妥当性確認
17:00
Teamsで実験結果のシェア
17:30
退社

ドクターへの挑戦と日常業務の好循環

私は大学時代から半導体回路を設計し、CADで集積回路のレイアウトを描き、試作と評価をしていました。自分が作った製品が世に出て、しかも産業の米のように、あまり注目はされないけれども誰もが使うことになる、そこに大きな価値を感じ、それがやりたくて企業に就職しました。パワー半導体の制御にはアナログ回路が介在するので、モデル化は容易ではありません。実際にシステムを組んで、実験して、性能を確かめます。思う通りにならないことも多いのですが、必ず理屈はあるはずなので、それを一生懸命考えています。そこが難しいところであり、おもしろいところでもあります。博士課程には進まず就職しましたが、博士にも興味はあったので、いま社会人ドクターコースで学んでいます。仕事で設計した回路を学会で発表し、論文化していますが、それがドクターコースの成果にもなっています。新型コロナの影響で、このまま一度も大学に行かずに卒業することになるかもしれません。

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学生の皆さんに一言

『明日死ぬと思って生きなさい。永遠に生きると思って学びなさい』

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これはガンジーの言葉です。終わりは必ず来る、しかも突然来るものです。学生生活にも終わりがありますし、自分が今やっていることができなくなる日が、もしかしたらすぐに来るかもしれません。ですから、いつ終わりが来てもいいように、全力投球で日々の研究に取り組んでほしいと思います。その一方で、将来のことも必ず考えなければいけません。40年後50年後の社会を予想して、自分のありたい姿を思い描きます。両方考えておけば、現実はその中間のどこかに収まるはずです。そう思って進路を選択すれば良いのではないかと思います。