Researchers

信号処理技術/センシング技術機械学習を用いて
設備の異常を察知する

アナリティクスAI部門 笹谷 典太

2016年入社 応用生命システム工学専攻

ノイズに埋もれた異常信号を検出する

私はスイッチギアと呼ばれる電源設備の絶縁診断サービスに向けて異常検知技術の開発に取り組んでいます。スイッチギアは工場や大型の商業施設などに供えられ、大きな電流を制御する装置です。非常時にはスイッチギアが電流を遮断しますが、万が一その絶縁性能が劣化していると重大事故につながります。そこで、劣化初期に生じる微弱な異常信号をノイズに埋もれた状態から既検出し、スイッチギアの絶縁性能の劣化の予兆を早期に検知しようというのが私の研究テーマです。ほとんど文献もなく、一からあれこれ試していく中で従来の信号処理の枠組みではうまく対応できないことがわかり、機械学習を利用しています。この技術はスイッチギアで生じる異常信号に限定したものではないので、公開データ等を利用してその他の用途への応用の探索も始めています。

説明イラスト

学生時代の専攻とは異なる研究分野に挑む

学生時代はCTやMRIの医用画像の研究をしていました。入社2年めでスイッチギアの絶縁性能劣化の予兆検知に取り組むことになったときは、スイッチギアというものの存在すら知りませんでした。昔からインフラを開発している東芝ならではのテーマで、研究者として事業に貢献するやりがいを感じています。インフラシステムを扱う事業部門の技術者は電気系が専門なので、機械学習や信号処理に詳しいわけではありません。専門の異なる相手に技術を伝える難しさに戸惑うこともありますが、自分にとって良い経験です。研究の成果を学会発表するときにも役に立ちました。
また、このテーマとは別に、3年ほど前からセンシング技術の研究開発にも携わっています。こちらは工場や生産設備で動くロボットの目となる部分の技術で、大学の研究室との共同研究を通じて実利用に向けた課題解決に取り組んでいます。2020年のコロナ禍以降、実験があるときは月に数日出社していますが、それ以外は在宅勤務です。事業部門の技術者や大学の研究室のみなさんとのやりとりもありますが、いろいろなツールも利用して、特に支障なく研究を進めることができています。

笹谷 典太の写真

※撮影のためマスクを外しています。

ある在宅勤務日のスケジュール

9:00
勤務開始
  • ・メール確認
  • ・スケジュール確認
9:30
テーマAに関連する作業
  • ・アルゴリズムの実装
  • ・原理検証実験の開始
11:00
資料作成
  • ・チーム内や共同研究先との打ち合わせの資料を作成
12:00
昼休み
  • ・昼食をとりながら英語の動画を視聴し勉強
13:00
テーマAの情報共有ミーティング
  • ・チーム内で各メンバーの進捗報告
14:00
テーマBの情報共有ミーティング
  • ・共同研究先と進捗報告や業界の技術動向を議論
15:00
データ整理
  • ・実行していた原理検証実験のデータを解析
  • ・原理検証が完了したら、評価データや条件を増やして大規模な実験を開始
17:00
情報収集
  • ・実験プログラムを流している間に、論文やニュースをチェック
18:00
勤務中断
  • ・夕食の準備や家事
20:00
勤務再開
  • ・資料作成や事務作業
21:00
勤務終了

働きながら博士号(論文博士)を取得

私は修士の時に東芝のインターンシップに参加して、医療機器の研究をするつもりで入社しました。しかし、医療機器事業は東芝グループから離れたので、研究対象が大きく変わりました。そして、医療機器の研究をしたいという思いを捨てきれず、勤務終了後に自宅で学生時代に取り組んでいた画像センシングの研究を続け、論文博士の取得を目指しました。当時の上司が会社に入ってから博士号を取った方で、理解が得られたのは幸いでした。日中、自分が会社に行っている間に実験が終わるように自宅のパソコンでプログラムを回し、帰宅後に解析するということを繰り返し、4年間かけて博士号を取得しました。研究開発センターには、他にも入社後に博士号を取得した研究者が何人もいます。
現在の私の研究は計測されたデータを処理することが多いのですが、今後は学生時代に培ったセンシングの知識を生かしながらデータを計測する部分にも踏み込んだ提案をしてみたいと考えています。社内のセンサを作っている部門と連携してハードウエアに工夫を凝らし、新たに取得できるようになったデータをさらに加工して意義のある情報を抽出するというような、上流から開発できるテーマを手掛けたいと思っています。

業績リスト
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学生の皆さんに一言

『実は、新しいものに取り組むことが好き。ほとんどの研究者には、その感覚があると思います。』

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「会社に入ったら学生時代の専門の研究しかできない。」「いまの研究テーマが本当に好き。」そう考えている方は多いと思います。しかし、研究をしていると研究テーマそのものよりも、新しいものに取り組む過程がおもしろいと感じることが多いです。学生時代にあまり興味のない分野であっても、じっくり話を聞いてみたり、先入観を持たずに研究してみると、おもしろいと感じられる瞬間が訪れると思います。就職活動では、学生時代に学んだ専門知識を活かせるかどうかを考えながら会社や職種を決めることが多いと思いますが、その仕事で将来どんなことが学べそうかという視点を持つと、やりがいのある仕事に巡り会うチャンスが増えると思います。