研究者紹介

ソリッドステートLiDARの計測IC技術レーザ光源の測距センサで
自動運転をサポートする

IoTエッジ部門 タ トァン タン

2013年入社 電気工学専攻

LiDARの低コスト・小型化を目指す

自動車の運転支援用のセンサとして現在主に使われているのはステレオカメラです。車の周囲の画像を撮影して認識しています。車の周囲、数十メートルの範囲であれば、ステレオカメラで撮影した画像の認識だけでも運転支援に必要な性能は満たせます。けれども、原理上遠くにある物体の認識は苦手です。では、これから本格化する自動運転の時代に、どのように車の周囲を認識したら良いでしょうか。その候補に、LiDARやミリ波レーダーがあります。LiDARはレーザ光を物体に反射させ、戻ってくるまでの時間を計測して距離を測る技術です。ミリ波レーダーは名前の通りミリ波を使用します。ミリ波の波長は5mm程度と長いので、その分解能は高くありません。例えば200m先に車が2台あっても、1台として認識してしまいます。それに対しLiDARは1μm以下の波長の光を使うので分解能が高く、遠くの物体も細かく見えます。高速道路での運転支援にも有効です。ただ、今までのLiDARの装置サイズはおよそ直径50cmと大きく、価格も数億円と高価です。そのままでは運転支援センサとして車に載せることはできません。そこで、私たちはデバイスと回路の技術を駆使し、LiDARをいかに安く、小さく作れるかを研究しています。

ソリッドステートLiDARの計測IC技術の図

デバイスと回路を組み合わせ、評価を繰り返す

私の担当は、デバイスから取り出した信号をデジタル信号に変換する部分です。レーザ光を受け、太陽光と区別して処理し、省電力かつ高速にデジタル信号に変換するように設計し、性能を評価する。問題があれば対策を考えてもう一度作り直して評価する。その繰り返しです。学会ではトップデータの示す性能が問われますが、製品化を目標とした研究開発ではトップデータだけでは不充分です。いちばん良くないデータでも仕様を満足する性能が求められます。デバイスの物理的限界や製造上の制約も考慮して、それらを回路側でいかに補うかを考えなければなりません。ベストだけ出せば良いというわけではないのが、学生時代の研究との大きな違いです。実際にものを作って動作を確認できた時は、達成感がありますね。アナログの回路設計や半田付けなどの工作は、自分でも得意な方だと思います。学生時代は簡単なものしか作れませんでしたが、会社に入ってから徐々に複雑なものを作れるようになりました。高い完成度を求められますが、それをやり遂げてきたという自負があります。最近は回路屋さんが少ないようですが、アナログ回路はとても重要な技術です。

タ トァン タンの写真

ある日のスケジュール

9:00
出社
  • ・メールおよび本日のスケジュールを確認
10:00
設計または実験/データ整理/社内資料作成
12:00
体育館で30分程度バドミントンをプレイしてから昼食
13:00
設計または実験/データ整理/社内資料作成
15:00
事業部とのミーティング(火曜のみ)
19:00
退社

この技術を自動車に乗せるために、研究開発を進める

事業部と一緒に、運転支援用のセンサの仕様を作る段階から研究開発を進めています。お客様は東芝だけでなく他の企業のものも含めて製品やサービスを探しています。競合する他社との競争に勝ち、受注することが重要ですが、製品の性能が他社よりも優れていることが決め手になるかというと、必ずしもそうではありません。たとえ性能は低めであっても消費電力が少ないなど、お客様の求める仕様にいちばん適うものが受け入れられます。何が求められているのかを考えながら、事業部やお客様と一緒に自分の研究を進めなければなりません。大学に残るのではなく企業で研究をしているのは、製品を出して世の中に貢献したいという強い思いがあるからです。あと数年は時間がかかるかと思いますが、早くこの技術を自動車に載せたいと思っています。

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学生の皆さんに一言

『自分にとって最も大切なことは何かを考えましょう』

タ トァン タンの写真

より良い会社に就職したいと誰もが考えることですが、何をもって良い会社と判断するかには個人差があります。給料、研究環境、職場の雰囲気、やりがいや社会貢献など、自分の基準を設定することが大切です。そうすれば会社選びに迷うことなく就職活動ができます。自分がこの会社がいいと思ったら早く入社を決めて、あとは学生の本業である研究や勉強に集中したほうがいいと思います。