研究者紹介

モータ/インダクタ向け軟磁性材料開発低損失な磁性材料で
省エネを目指す

機能材料部門 眞田 直幸

2013年入社 機能材料学専攻

エネルギー変換効率の追求

私はモータやインダクタ向けの軟磁性材料の研究をしています。軟磁性材料は、たとえばモータや電子機器に使われているコイルの真ん中にある鉄芯と呼ばれる部分に使われています。コイルに電流が流れると磁場が発生しますが、軟磁性材料を利用した鉄芯でこの磁場を制御します。研究の大きな目的は、磁性材料による電気エネルギーと磁気エネルギーの間の変換効率を高めることで、電気機器の省エネを実現することです。省エネが実現すれば、環境に優しいことはもちろん、電気代が安く済みます。自動車に搭載されているモータが省エネになれば、より長い距離を走れるようになるでしょう。変換効率が向上することは、部品の小型化にもつながります。現在様々な電気機器に使われている軟磁性材料をより性能の高いものに変えていくことが、最大の目標です。

モータ/インダクタ向け軟磁性材料の図

日々の実験を通し実用化を目指す

私の仕事は実験を中心に回っています。実験室には熔解炉や焼結装置や分析装置などが並び、鉄を主成分とする合金を合成し、粉末状にしたものを固め、でき上がったものを評価しています。軟磁性材料はエネルギー変換の損失がゼロに近いほど望ましい材料なので、数値を大きくすることを目指す場合より色々な面で繊細さが求められます。合金の成分や分量、温度、時間など、本当に僅かなことで結果が大きく変わることがあるので、制御された状態で少しずつゼロに向けて進む感じです。ゼロに近いものを計測することの難しさもあります。軟磁性材料の研究をするようになって1年たちましたが、その前は永久磁石の研究をしていたので、入社以来ずっと磁性材料に携わっていることになります。私が関わった永久磁石の研究成果の一つは製品化にもつながりました。研究部門だけでなく生産技術部門や事業部門など、様々な役割の方々と協力して実用化した経験は、自分も一定の役割を果たせたかな、という想いとともに、強く印象に残っています。現在取り組んでいる軟磁性材料も、事業部門とやりとりしながら研究開発を進めている段階で、残された課題を解決し、製品化することを目指しています。

眞田 直幸の写真

ある日のスケジュール

8:30
出社
  • ・メールチェック、本日の実験や打ち合わせ等のスケジュール確認
9:00
実験
12:00
昼食
13:00
技術ミーティング
14:30
実験
18:00
実験結果の整理、報告書まとめ、翌日以降の実験計画を思案、など
19:00
~20:00
退社

真の先駆者となる可能性に満ちた職場

学生時代は物性物理学の専攻でした。博士号を取ったので他の大学や研究機関で研究を続けるという選択肢もありましたが、企業の研究とはどのようなものかを経験したいという思いがあり、就職活動をしました。東芝の研究開発センターに量子コンピュータに取り組んでいる研究者がいると知ったときは、利益を求められる民間企業において、すぐには実現しそうもない難易度の高いテーマに挑んでいることに驚き、衝撃を受けました。入社すれば、社外には出ない先鋭的な研究の情報に触れられることに加え、アイデアを出し、実験して評価するまで、全てのプロセスを研究者自身で手がけられることも大きな魅力でした。今後も自分で実験して評価して考えることを日々続けていきたいと思っています。目の前で起こっていることを、世界で自分だけが、自分たちだけが知っている。研究開発センターはそんな瞬間に立ち会える可能性に満ちた、魅力的な職場だと思います。

眞田 直幸の写真

学生の皆さんに一言

『とにかく真剣に研究に打ち込んでください』

眞田 直幸の写真

学生時代は、とにかく真剣に研究に打ち込んで欲しいと思います。研究の能力をどれだけ学生のうちに身につけられるか。逃げずに、諦めずに、目の前の研究課題に正面から立ち向かう。就職した企業で学生時代とは異なる研究テーマに取り組むことになったとしても、学生時代に真剣に研究に打ち込んだ経験は必ず役立ちます。自分も今この仕事に取り組む中で、学生時代に真剣に研究に取り組んでいて本当に良かったと思いますし、もっとやっておけば良かったとも思っています。