研究者紹介

物流向け物体ハンドリングロボット技術自律的に
賢くモノを運ぶ

機械・システム部門 古茂田 和馬

2016年入社 脳情報専攻

人に代わって物流を支援

物流向けのロボットの研究に携わっています。日本の社会は少子高齢化が進み、労働人口が減少しています。私たちが当り前に利用しているネット通販も、近い将来、人手不足が原因で品物がなかなか手元に届かなくなるかもしれません。自動化できるところはロボットに置き換えることが期待されています。従来のロボットは決められた環境下で繰り返しの動作をすることは得意ですが、環境の変化に柔軟に対応することができません。様々な物体をそれぞれに適切な姿勢で掴むことも苦手です。一方で、人は周囲の状況を認識し、物を手にとった後の動作まで無意識のうちに考慮して自分が動きやすいように掴むことができます。私たちが目指す次世代のロボットは、人がいろいろ教え込まなくても自分で動作計画を立て、環境に応じて自律的な動作ができる物体ハンドリングロボットです。物体や環境を認識する画像処理技術、ロボットの行動を決する動作計画、物の取り方を決定する把持戦略、ロボットを実際に動作させるためのハードウェア設計やモーション制御など、多岐に渡る要素技術を総合し、その実現を目指しています。

物流向け物体ハンドリングロボット技術の図

社会インフラ事業を支える技術

東芝はロボティクス分野の研究に力を入れています。ハードウェアとしてロボットを作り、ソフトウェアでそのロボットを制御します。ロボット開発の両輪となるハードとソフト、二つの要素技術の水準を高めるとともに、両者を組み合わせて一つのロボットシステムにまとめあげます。私の所属する機械・システム部門は、要素技術とシステム技術、両方の研究ができる環境や人が揃っているところが強みです。学生時代に機構解析やシミュレーションに取り組んでいた私は、会社に入ってから本格的にロボット研究を始めました。他の部品との干渉や摩擦など、擦り合わせや組み合わせの難しさはロボットを実際に作ってみなければわかりません。入社後にハードウェアの設計や動作制御について学び、自分の技術の幅が大きく広がったと実感しています。研究部門には、事業部門が抱える課題を解決するという役割もあります。社会インフラ事業で自動化や自律化が期待されている分野に最先端の研究成果を素早く展開し、事業部門の課題を解決します。オープンイノベーションで開発を加速させることもあります。私はロボティクスを東芝の新しい技術の柱の一つに育てたいと考えています。

古茂田 和馬の写真

ロボットで社会に貢献

大学院に入った年に東日本大震災がありました。想定外の過酷な状況でも動き回れるロボットは、日本が強いだろうと思っていましたが、最初に原子炉建屋の中に入ったのはアメリカの軍事用ロボットでした。衝撃でした。ロボットの構造や働きを知り、自律的で賢いロボットを作りたくて大学で勉強をしていましたが、そのロボットの応用先を考えたとき、社会インフラ事業を抱える企業は影響力も大きく魅力的でした。自分の作ったロボットが世の中で役に立つ機会があるのです。就職活動で見学に来たときに、実際に現場で稼動させたロボットを手がけた研究者から苦労話を聞けたことも、入社を決意するきっかけになりました。ロボットで社会に貢献する最先端を知る人が身近にいる、ここなら自分の思い描いている研究ができると感じています。

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学生の皆さんに一言

『好奇心のアンテナを高く、広く』

古茂田 和馬の写真

私は博士課程を修了して、東芝に就職しました。修士課程から博士課程と進むにつれて研究の専門性は高くなりますが、視点が特定の分野に偏りすぎることもあります。自分自身のコアとなる技術を磨くと同時に、是非新しいことにも興味や関心を持ってください。そのためには、好奇心のアンテナを高く、広くして今までの自分が想像もしていなかった帯域にチューニングしてみてください。思いもよらないユーレカがあなたを待っているはずです。