研究者紹介

Power to Chemicals技術CO2から価値ある物質を
効率的に生み出す

トランスデューサ技術部門 小藤 勇介

2018年入社 化学工学専攻

CO2を資源として利用する

地球温暖化の原因となっているCO2から有用な化成品や燃料を作り出すこと、それが私たちの研究の目標です。化学繊維の服やペットボトルなどの日用品は化石資源から作られています。そのような価値の高い化成品を、排出されたCO2を炭素源として作ることができれば、資源循環型社会に一歩近付き地球温暖化の抑制も期待できます。CO2から生み出すことのできる物質には、一酸化炭素やエチレン、エチレングリコールなどがあります。これらは全て化成品の原料となります。一酸化炭素は水素と混ぜればメタノールからジェット燃料まで、様々な製品を作ることができます。このCO2から化成品を作り出す電気分解プロセスの中で、価値のある物質をいかに効率的に生み出すか、それが私たちの研究テーマです。

Power to Chemicals技術の図

電気分解装置の電流密度を世界最高レベルに

CO2から有用な化成品を作り出せたとしても、その価格が通常の数十倍では意味がありません。化成品のコストを考える上で鍵となるのはCO2を電気分解する電極の性能です。CO2のガスをいかに効率的に電極に浸透させ、拡散させるか、それが課題でした。私は入社してからの1年間、その電極の改良に取り組みました。従来の作り方を変え、新しいプロセスで作製した電極を試したところ、電気分解装置の電流密度、言い換えればCO2の還元処理の速度で世界最高水準の数値を達成することができました。電流密度が上がれば電気分解装置がコンパクトになるので場所をとらず、使いやすさの点でも優れた装置になります。この研究成果を海外の学会で発表したところ、参加者の関心も高く、表彰をいただくこともできました。この分野で有名な先生からもお声をかけていただき、我々は価値ある研究に取り組んでいるのだ、という実感が湧きました。

小藤 勇介の写真

ある日のスケジュール

9:00
出社
  • ・メール、スケジュールの確認
9:20
実験(サンプル作製)
10:00
社内ミーティング(週1回)
  • ・進捗確認や技術ディスカッション
12:00
昼食
13:00
実験(サンプル評価)、データ整理
16:00
社外との打ち合わせ
17:00
社内外用資料作成
20:00
退社

社会実装できるパッケージの完成を目指す

入社後に、この研究の一部が環境省の国家プロジェクトに採択されていたことを知りました。壮大な事業を今からやろうとしているのだと、ワクワクしたのを覚えています。事業部門との検討も始まり、研究は社会実装に近い段階に入っています。たとえば、どのくらいの規模の電気分解のプラントを作れば、化成品の製造量はどれくらいになる、といった試算を行っています。今日も事業部門と実験結果について打ち合わせをする会議に参加して、走って戻ってきたところです。私たちは企業の研究部門で働く研究者であり、社会に役立つ研究をして会社に利益をもたらす存在であるべきです。その意味では、社会実装のゴールを見据えた研究に取り組める立場は大変ありがたく、良い刺激を受けています。やりがいがあり、何より楽しいので、最後まで走りきりたいと思っています。

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学生の皆さんに一言

『学生の時に自分のやりたい事を最後までやりきってください』

小藤 勇介の写真

学生の頃は社会人に比べて時間に余裕があり、やりたいことにチャレンジできる環境だと思います。その時に自分がやると決めたことを、最後までしっかり突っ走り、やりきって欲しいです。その経験は自分の自信につながりますし、あの時こういうことができるとわかった、という理解は、今後の人生を送っていく上での糧になります。そしてその時の仲間は、生涯の友になると思います。