研究者紹介

SiCパワーデバイス開発電力を効率よく使うための
キーデバイス

電子デバイス部門 大橋 輝之

2013年入社 電気電子工学専攻

SiC(シリコンカーバイド)で高効率化

パワーデバイスは電気自動車や産業用機器、IoT機器などの中で直流を交流に変換するインバータや、電圧を上げ下げするレギュレータに使用され、我々の生活に欠かせない半導体です。数W~数MWまでの幅広い電力の機器に適用され、大きな電圧や電流を扱うことも特徴の一つです。パワーデバイスの材料として今はシリコンが広く使われていますが、SiCにはシリコンを超える能力があると言われています。たとえばSiCの耐圧/電界強度はシリコンのおよそ10倍です。SiCを利用すればデバイスを1/10の薄さにすることができ、低抵抗な素子が実現できます。また、電圧の高周波帯域で低損失なパワーデバイスが実現できるのもSiCの特徴です。電力損失を抑え、エネルギー効率を上げれば熱の発生も少なくなるので、冷却装置もコンパクトにできます。高周波帯域では変電所のトランスやキャパシタなどの部品も、ぐっと小さくすることができます。

SiCパワーデバイスの図

工場と連携してデバイス開発

入社以来、SiCパワーデバイス一筋です。最初は基礎的な研究を担当し、徐々に範囲を広げて現在では製品化を前提としたデバイス設計まで担当しています。設計したSiCパワーデバイスは姫路半導体工場で製作しています。設計から制作まで1サイクルまわすのに数ヶ月時間がかかるのですが、できあがったSiCパワーデバイスがきちんと狙い通りに動くとやはりうれしいですね。思い通りに動かない時は、SiCデバイスを物理的に切って断面を顕微鏡で観察したり、シミュレーションで内部構造を比較したりして、原因を調べます。経験則である程度仮説を立てられる時もありますが、なかなかわからない時もあります。工場の方とは高い頻度でオンライン会議をすると同時に、月に1、2回は姫路工場に出向き、活発に議論をしながら開発を進めています。

大橋 輝之の写真

ある日のスケジュール

8:30
出社
  • ・メール確認、スケジュール確認
  • ・事務作業
  • ・昨日開始したシミュレーション結果の確認
10:30
事業部門とオンライン会議ツールを利用して打ち合わせ
  • ・測定の進捗報告
  • ・試作中のデバイスの流品状況確認
  • ・今後の検討方針確認
13:00
試作したデバイスの測定
  • ・デバイスの損失評価
  • ・デバイスの信頼性評価
  • ・温度特性…等々測定項目は多岐にわたる
  • *実験のフェーズによってはシミュレーションに一日を費やすことも
15:00
測定データの整理・解析
  • ・解析ツールを利用してデータのグラフ化
17:00
デバイスシミュレーション
  • ・測定結果の理解のためのシミュレーション
  • ・次期試作に向けてのシミュレーション
  • *計算時間が長いため、帰宅前に計算を開始し、翌朝結果を確認する
18:30
退社
  • *日によって異なるが遅くとも19時には退社する

研究開発の成果を社会に実装する

企業の研究所は製品を世に出すことが目標なので、学生時代より責任感を持って研究に取り組むようになったと思います。パワーデバイスは社会のあらゆる場面で使われているので、中途半端な製品を世に出すことは許されません。車や鉄道が壊れたら大変です。シミュレーションや評価をしているその瞬間にも、1年後には製品化されることを意識して、緊張感を持って研究しています。社会的な責任が大きいだけに、やりがいがあります。将来は研究者として技術を極めたいという想いがあります。職場の理解もあり、この春から社会人博士課程に通い、博士号取得を目指す予定です。

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学生の皆さんに一言

『早めに自分から動くことが大切だと思います』

大橋 輝之の写真

就職活動は、積極的に行動することが大事だと思います。私の場合は、メーカーや放送局などの研究所を回りました。事前に情報を集め、大学の先生から紹介してもらった方や、自分で探した先輩に会って会社の話をしたことも参考になりました。研究内容の資料を持参して説明させてもらうと、みなさん真剣に聞いてくれて、その道の専門家ならではの鋭いツッコミが来ました。単に就職活動というだけでなく、修論をまとめる参考にもなりました。