上下水道

財政に優しい設備更新を行いたい

我が国では長期の人口減少過程を迎え、住民の生活様式を変化させ、水の利用形態にも大きな変化を与えることが予想されています。これに伴い、税収の低下に伴う公共事業費の減少や、上下水道使用量の低下に伴う事業収入の減少が生じます。事業費の減少は、事業運営上で様々な問題を発生させますが、特に老朽化施設の更新における問題は深刻です。事業規模が縮小した時点での老朽化設備の更新は、その時点で必要な規模以上のものを更新しなければならないケースも発生すると考えられます。

今後の上下水道事業の運営にあたっては、一定のサービス水準を確保した上で、再構築・維持管理費用を抑制・平準化し、財政の健全化に努めることが大切です。

これらの内容を考慮すると、コスト削減が重要であることはもちろんですが、地域の実情に応じた設備計画へのリニューアルや、初期コスト(建設費)だけでなく維持管理費まで含めたライフサイクルコストの最小化を見据えた計画策定が重要になります。

東芝は、単なる設備の置き換えではなく、現状のお客様が抱える中長期的な事業課題全体を対象にして、トータルバランスで解決することを目標に、お客様事業の採算性向上に貢献することを目指しています。

広域施設の効率的管理

施設の無人化運転、市町村合併に伴うシステム統合などに対応するために、広域ネットワーク利用による各種情報の遠方配信や遠隔監視・集中監視支援機能を向上させたシステムを開発しました。小規模から大規模までシステムのアーキテクチャ(設計思想・構造)を統一化していますので、既存の資産を継承しながら適切な規模への拡張・移行も可能です。

効果的な水運用管理

需要者への安定的な配水の実現、機器の安定稼働と電力コスト削減を考慮した効率的な運転、そして異常時や事故時の運転や浄水場間の水融通時のオペレータのリスク軽減を実現するには、配水量予測に基づいた適切な取水計画・浄水生産計画・送配水計画に従いプラントを運用する必要があります。東芝が長年培ってきた上下水道プラントの監視制御ノウハウと統計手法やシミュレーション技術を組み合わせて水運用管理を行います。

運営業務のアウトソーシング(包括委託)を検討したい

上下水道事業は様々な分野のベテラン職員の方の技術やノウハウによって支えられてきました。しかし、新人の採用を抑制してきた中で、団塊の世代の大量退職を迎えるにあたり、これまでに比べて少ない人員で複雑化・高度化する上下水道事業経営に対処していかなければならない状況にあります。

上下水道事業は、勘と経験により支えられている技術も多く、技術継承は簡単ではありません。また、技術職員に対してスペシャリストではなくゼネラリストの育成に重きを置く風潮もあり、専門性の高い技術者を育成すること自体が難しくなってきています。技術の継承は「ひと」の対応であり、日常業務の中で行うことが効果的ですが、この環境が失われつつあります。

一方、水道法の改正が行われ、「第三者への業務委託」が可能になりました。このことにより、最先端の現場業務はできるだけアウトソースして民間企業に移し、事業体は少数精鋭で事業運営していくという方向が見えてくるようになりました。ただ、包括委託を効果的に行うためには、委託の効果を明確にし、必要なコア職員の採用、研修・配置などを計画的に行う必要があります。今後はますます技術業務の包括委託が増えていくものと考えられますが、地域住民に対するサービス水準の向上などを図る上での、委託契約時の条件、責任分担などについてガイドラインを定めておくことが重要になってきます。

東芝は、お客様事業の継続的な発展に向けて、お客様とのコミュニケーションとパートナーシップを大切にしながら、運用改善、設備改善、経営改善の面から、ベストパートナーとして期待に応えられるよう努力を続けています。

ICT(情報通信技術)を駆使したオペレーション&メンテナンス

365日/24時間リアルタイムで上下水道プラントの運転状況を監視し、異常が発生した場合、あらかじめ設定してあるパソコンや携帯電話などにインターネットを通じて警報を送信する仕組みを構築しています。また、配水池水位などのトレンドグラフやポンプが正常に動作しているかなど、上下水道プラントの様々な運転状況を場外からでも確認することができます。収集・蓄積したデータを解析することにより、施設運用コストの削減や、水質管理面での向上など、お客様と連携して設備改善をおこなっていきます。

産業水処理

設備の省スペース化を図りたい

設備の老朽化対応もしくは増設を計画したいが場所が狭くて設置できない、水量や水質の変動が激しく新たな設備を建設したいが充分なスペースが取れない、工場建設を計画しているが水処理システムは出来るだけコンパクトにまとめたい、などの省スペースに関するニーズはますます高まりつつあります。

従来の水処理システムでは、薬品により汚濁物質を凝集し、沈殿槽や加圧浮上分離槽で固液分離をおこなっていますが、沈澱や加圧浮上分離には大型の装置が必要で、処理量が変動した場合、柔軟に対応できないという欠点があります。

東芝は、独自に開発した水処理技術を中心に従来技術をうまく組み合わせることでお客様の課題をバランス良く解決すると共に、お客様事業の採算性向上に貢献することを目指しています。

重力の代わりに遠心力を利用した固液分離装置

凝集沈澱処理は、有機・無機を問わず、広く一般的に使用されている排水処理方法ですが、懸濁物質を重力沈降させる機構のため、大きな沈殿槽が必要です。東芝は、固液分離機に、旋回させた水流により発生する遠心力を用いて固液分離を促進するサイクロン型を採用することで、沈殿槽を省略して設備の省スペース化を図っています。

UASB形メタン発酵処理システム

食品工業では、工場排水の有機物負荷が高いため、排水処理設備の多大なスペースや高額な維持管理費が課題でした。東芝のUASBメタン発酵バイオリアクタシステムは、好気性処理の代表である活性汚泥法に比べて省エネルギー性、低ランニングコスト、産業廃棄物(脱水汚泥)の削減、省スペース、維持管理の容易さ、などの特長があります。好気性処理に比べて高負荷処理に出来るため、システム全体の小型化が可能です。

排水から資源回収を行いたい

排水からの資源回収に関する研究は、これまでにも色々と行われてきましたが、既存の処理に比べてコストが高いことが難点でした。また、新たな製品を作り出す生産ラインの増設とは異なり、ビジネスチャンスを産み出すことの無い排水処理システムへの投資は積極的には行われてきませんでした。

一方では、資源の枯渇・高騰への懸念から、資源のリサイクル利用は製造業における資源の安定供給と製品の低コスト化に直結する課題となっています。そのためには、産業廃棄物の発生抑制と削減、再利用の面で、 安全であることはもちろんのこと、低コストで高効率な資源回収技術と利用技術の開発が必要になります。

東芝は、製造工程で生じる特定物質だけを排水から除去することで、水の再生利用、資源の回収、汚泥の削減を同時に実現できるような環境調和型技術の実現を目指し、努力を続けています。

凝集剤を一切使用しない排水処理システム

銅、ニッケルなどの金属類や、フッ素などを含む排水を処理する場合、凝集剤を使用して凝集沈澱処理や加圧浮上処理を行うのが一般的ですが、不純物を含んだ汚泥からの分離は難しいため、産業廃棄物として処分されていました。東芝は、薬品の代わりに再利用可能な新素材である「機能粉」を開発し、懸濁物質の除去を促進するろ過助剤として用いることにより、凝集剤を一切使用せずに処理水の懸濁物質濃度を低減するシステムを開発しました。磁性体である機能粉と懸濁物質を磁気を用いて分離することで、薬品由来の汚泥を削減し、廃棄物の処分費用を低減できるほか、懸濁物質に含まれている成分を高純度の有価物として回収することを可能としています。

UASB形メタン発酵処理システム

排水をメタン発酵することで発生するガスをバイオガスと呼んでおり、メタンが65~75%、二酸化炭素が25~35%という成分構成になっています。このバイオガスを対象に、ガスエンジン発電機やコージェネレーションシステムなどを組み合わせることにより、電力と熱エネルギーとして回収・利用することが可能になります。

再生可能エネルギー

再生可能エネルギー設備を導入したい

東日本大震災により被災した上下水道施設の中には、被害が少なく施設が運転可能であったにもかかわらず、電力会社からの電力供給が停止したり非常用発電装置に燃料供給ができずに停電となり、上下水道プラントとしての機能を維持できなくなった施設もありました。このような経験から、災害時に電力会社からの電力供給や非常用発電装置の燃料に頼ることなく発電可能な、再生可能エネルギーを利用した自立型電力供給システムへの要求が高まっています。

ただし、再生可能エネルギーを利用して、省コスト・省資源・リスク低減を実現するには、電力需給予測を上下水道施設の負荷特性に合わせて適用できる技術や、発電出力が変動しても配電系統へ影響を及ぼさないような電力品質確保技術など、解決しなければ課題があります。

東芝は、上下水道施設への再生可能エネルギー設備の導入を促進するために、監視制御システムに技術課題を解決するための機能を埋め込むとともに、再生可能エネルギーと電力貯蔵装置を組み合わせて、平常時にも災害時にも効率的な電力供給を実現するソリューションを提供しています。

太陽光発電システム

上下水道施設では、水を浄化するのに必要な広い敷地があるため、施設の建屋上部空間などを利用して 太陽光発電システムを設置することが可能です。

小水力発電システム

上水道施設では、原水を取水地点から浄水場まで自然流下で送水することが多いため、高い場所から 低い場所へ水が流れるときの落差を利用した小水力発電システムを設置することが可能です。

消化ガス発電システム

下水処理施設で発生する汚泥は、嫌気性消化処理を行うことでメタンガスを生成できます。このメタンガスを 燃料として利用することで消化ガス発電システムを設置することが可能です。

設備の省エネルギー化を図りたい

地球温暖化の影響により平均気温や海面の上昇が指摘され、また、集中豪雨の発生による浸水や異常少雨による水源の渇水などが発生しています。上下水道事業を継続していく上でも、二酸化炭素等の温室効果ガス排出を抑制して、省エネルギー化を推進していく必要があります。

上下水道事業は我が国のエネルギーの1.5%を消費しており、典型的なエネルギー消費型産業と言えます。効率性と環境面から、省エネルギー機器の採用、適正規模機器や省エネルギー型高効率機器への更新、効率的な水運用、省エネルギー型曝気風量制御などの検討がポイントになります。

トップランナー機器(変圧器)

トップランナー機器には、電気設備の代表格としての変圧器がありますが、この変圧器の規格JEM(日本電機工業界規格)が平成24年に新規格として制定されました(JEM1500とJEM1501)。平成26年度を目標に、従来の基準よりも1~2割ほど優れたエネルギー消費効率が求められています。東芝では、この新規格の基準に満足した変圧器を平成25年度から順次リリースしていき、お客様の設備の省エネルギー化に貢献していきます。

インバータ機器

ポンプやブロワなどの2乗トルク負荷を可変速運転することにより、大きな省エネルギー効果を実現することが可能です。

海外

水処理設備を導入したい

東南アジアなどの新興諸国では今後も大きな発展が見込まれ、日系企業の進出も増え続けています。そこで、現地の事情を充分に把握し、現地に見合った技術を導入し、現地の技術者がしっかりとオペレーションできることが大切になります。これらを実現するためには、現地の状況に明るいパートナー企業を選定する必要があります。

東芝は、水処理のエンジニアリング拠点を中国、インドに配置しております。東芝グループと連携しながら現地に根付いた水処理機器の販売・設計・施工・保守サービスを展開しています。お客様の課題をバランス良く解決すると共に、お客様事業の採算性向上に貢献することを目標にしています。

地域に根付いた東芝の海外拠点

有機排水処理システム(UASB形メタン発酵処理システム)

食品工業では、工場排水の有機物負荷が高いため、排水処理設備の多大なスペースや高額な維持管理費が課題でした。東芝のUASBメタン発酵バイオリアクタシステムは、好気性処理の代表である活性汚泥法に比べて省エネルギー性、低ランニングコスト、産業廃棄物(脱水汚泥)の削減、省スペース、維持管理の容易さ、などの特長があります。好気性処理に比べて高負荷処理に出来るため、システム全体の小型化が可能です。

高度水処理・再生水システム(オゾン発生装置)

オゾン発生装置は、その強力な酸化力により、脱色・脱臭・ウィルスや微生物の不活化、有機物や無機物の酸化作業を有し、高度浄水処理技術として利用されています。東芝のオゾン発生装置は、高周波インバータ装置により、省エネルギーと省スペースを同時に実現。ガラス電極には耐熱耐電圧ガラスと耐腐食性ステンレス皮膜を採用することで、高い信頼性を獲得しています。