水力発電所の主要機器


水車


水車は、ランナと呼ばれる羽根車で水の持つ位置エネルギーを回転エネルギーに変換し、発電機に動力として伝える装置です。
発電所の地点ごとに流量や落差の条件から、最適な水車型式を選定します。
水車の軸が地面に対して垂直なものを立軸機、水平になっているものを横軸機と呼び、一般的に立軸機は出力が大きい発電所、横軸機は出力が小さい発電所に採用されます。
東芝は、条件によって適切な型式の水車を提供します。


入口弁


水車の運転・停止に伴い開閉操作される止水弁です。通常の運転ではガイドベーンやニードルが全閉した状態で動作しますが、万が一ガイドベーンやニードルが閉鎖しない緊急時には入口弁単独で流水遮断する能力を持たせることが可能です。
主に、球形弁(高落差向け)、複葉弁(中・低落差向け)が使われています。

球形弁

球形の弁体を回転させて開閉を行う入口弁です。全開時には流路が一直線上の構造であるため、水力損失が極めて少ないことが特長です。
主に高落差の発電所で利用されます。

球形弁

複葉弁

二枚の円形の板を回転させて開閉を行う入口弁です。一枚の円形の板を回転させて開閉する蝶形弁と比較して水力損失が少なく、漏水も非常に少ないことが特長です。
主に中・低落差の発電所で幅広く利用されています。

中部電力株式会社 奥矢作第一発電所納入
複葉弁


調速機


調速機は水車の回転速度を一定に保つために、自動的にガイドベーン開度あるいはニードル開度を調整する装置です。負荷が一定の場合、水車は一定回転速度で運転されますが、負荷が変化すると、水車出力とのバランスが崩れて回転速度が変化してしまいます。
調速機はその変化を検出してガイドベーン開度あるいはニードル開度を加減し、規定回転速度を保つように水車出力を自動的に調節します。
流量調整機構であるガイドベーンやニードルの操作方法により、油圧式、電動式、ハイブリッド式の3通りに大別されます。

油圧式

油圧によりガイドベーンやニードルを操作する方式です。油圧式は高圧の圧油装置を有し、他の方式と比較して大きな操作力を得られることから、比較的出力の大きい発電所で採用されることが一般的です。

電動式(電動サーボモータ)

電動機の回転を、ねじの組み合わせによりサーボモータの直線動作に変換し、ガイドベーンやニードルを操作する方式です。
操作油を不要とし、油流出のリスクを低減した環境に配慮した方式と言えます。また、圧油装置等の補機が不要になるため、機器の簡素化、省スペース化が図れます。
油圧式と比較して大きな操作力を得ることが難しく、中小容量の発電所で採用されることが一般的です。

東京電力リニューアブルパワー株式会社
下船渡発電所納入
電動サーボモータ

ハイブリッド式

電気・油圧のハイブリッド(複合)方式です。可変速電動機で直接油圧ポンプを制御し、油量調整することで、油圧サーボモータを操作します。少量の操作油は必要としますが、ねじ部を無くし、標準品の組み合わせで構成できることが特長で、油の使用量も圧油式に比べて圧倒的に少なく、環境に配慮した方式と言えます。また、圧油装置等の補機も不要になるため、機器の簡素化、省スペース化が図れます。
電動式と同様、中小容量の発電所に適用されるのが一般的です。

東京電力リニューアブルパワー株式会社
栓ノ滝発電所納入
ハイブリッドサーボモータ

水車発電機

水車発電機は、水車から得られる回転エネルギーを電気エネルギーに変換する装置です。一般に同期機を用い、回転速度によって磁極の数が異なるため、個々に形状が異なります。
揚水発電所において、発電だけでなく、揚水運転時に電動機としても使用する発電機を発電電動機と称します。
東芝は、小容量から大容量まで幅広く高効率、高信頼の発電機を提供しています。

ベネズエラ Guri-Ⅱ発電所
水車発電機 回転子

ベネズエラ Guri-Ⅱ発電所
水車発電機 固定子


監視・制御装置


水力発電所の監視・制御を行う装置です。日本のほとんどの水力発電所は無人で、遠方の制御所からの指令により水車・発電機の起動/停止や出力調整を行っています。そのため、水力発電所の監視・制御装置は、遠方にある制御所との伝送機能を備え、事故発生時に機器を保護する保護継電器や事故情報を記録する記録装置も具備しています。
東芝では、設備にあわせた効率的で信頼性の高い監視・制御装置を提供しています。

分散形制御装置

自動制御機能、調速制御機能(GOV)、励磁制御機能(AVR)、保護継電器機能、伝送機能を別々の盤で構成しており、各盤をそれぞれ被制御対象機器の近くに分散して配置することにより、ケーブルの布設を短くしています。主に補機の多い大規模水力発電所に適用されています。

関西電力株式会社 奥吉野発電所納入
自動制御盤

一体形制御装置

一体形制御装置は、自動制御、調速制御(GOV)、励磁制御機能(AVR)、保護リレー機能、伝送機能のうち2つ以上の機能を1つの盤群に集約したシステムです。一体形制御装置は、「省スペース・コストダウンの実現」、「現地工事・試験期間の短縮」、「監視操作の一体化」を目的としており、主に補機の少ない中小水力発電所に適用されています。

一体形制御装置