自然由来ガスソリューションAEROXIA®

どんな製品?

変電所には、電力インフラの安定供給を落雷などから守る、GIS(Gas Insulated Switchgear/ガス絶縁開閉装置)という設備があります。GISは、電力を即座に止めるために絶縁性に優れたSF₆ガス(六フッ化硫黄ガス)を内部に充填した構造となっています。 SF₆ガスは「大電力のオン・オフ」という機能においては最強であり、代わりがきかない存在として認知されている一方で、大気に放出された場合の地球温暖化への影響はCO2ガスの25,200倍あると言われています。電力インフラのカーボンニュートラルが求められる中、東芝では電力用SF₆代替ソリューションとして自然由来ガスであるAEROXIA®を利用した製品ラインナップの拡充を進めています。

開発のきっかけは?

日本政府は2050年までに温室効果ガスの排出実質ゼロを目指し、電力部門にも積極的な取り組みを求めています。そこで東芝は、SF₆ガスを用いた電力用ガス絶縁開閉装置の代替ソリューションの開発に着手し、既設設備のリプレースや、海外への展開を目指しています。欧米では電力用SF₆ガスの使用規制が具体化しており、代替ソリューションの議論や開発が先行しています。国内でも早急な開発と販売促進が必要であると同時に、海外でも製品の優位性を明確にしながら戦略的に訴求する必要がありました。

Designer:一瀬謙太郎

一瀬:このプロジェクトが始まった当初は、プロモーション用の製品カラー検討と、ネーミング・ロゴ制作という形で依頼をいただいていました。ソリューションへの理解を深めながら、今後のプロモーションへの展開を構想していく中で、全体のコンセプトやイメージを明確にしつつメッセージを整理する必要性を感じ、グラフィックデザイナーの増井さんにも参画してもらいました。

Designer:増井史織

増井:プロジェクトの全体像をデザインして、どのようなメッセージをどのようなシナリオで伝えていくかを考えていきました。ターゲットとなる顧客を良く知る事業部門とともにポイントを構造化し、様々なビジュアルを提示して検討を進めていきました。ソリューションの提案ストーリーを直感的に伝えるために、訴求ポイントの整理と全体の表現の統一も図りました。

一瀬:この製品には自然由来ガス以外にも多くの特長があり、関わる開発者の思い入れも様々でした。市場競争力を高めながら開発者の想いや訴求点を整理し、それらを的確にネーミングや製品カラー、イメージ画像など総合的な観点で検証・議論しながらブランディングを行うことで、世界観から先に構築していくことを大切にしました。

“世界観をデザインする”

一瀬:AEROXIA®という名前は、“AERO”(自然由来ガス)と”AXIA”(ギリシア語で価値)を合わせたネーミングで、製品コンセプトを明快に表すものです。変電所のカーボンニュートラルに貢献するSF₆代替ソリューションは、今まさに電力業界の送配電部門が直面する課題の解決に役立つというメッセージを、名前によって伝えています。ここに至るまで、プロジェクトメンバーの皆さんと多くの案を出して議論しました。

増井:私がプロジェクトに入った時点で、ネーミング案がすでに100以上ありました(笑)。

一瀬:ソリューションの価値や特徴を端的に表すワンワードのネーミングを模索しました。製品発表後にパリで開催された国際大電力システム会議(CIGRE )に東芝はAEROXIA®のプレゼンテーションブースを設けたのですが、現場に来場した人が「エアロクシア」と発音するのを実際に耳にして、製品を認知してもらうきっかけとして、改めてネーミングの重要性を実感しました。

増井:SF₆代替ソリューションは、一見する限り競合他社が開発している製品が訴求している内容も似通っていて、丁寧に発信しないと違いを正しく理解してもらえないかもしれません。そこで、訴求の仕方に細心の注意を払いながら、どの部分を際立たせてどのように訴求していくべきかを明確にしていきました。

国際大電力システム会議CIGREでの様子

“コミュニケーションの導線をデザインする”

増井:世界に競合は存在しますが、事業部門としてはまず国内で実績を作ること、また、安全・安心な自然由来ガスを用いて実現するという方針がありました。そこで、東芝のコンセプトをわかりやすく魅力的に伝えるブランドブックというメディアを作りました。見た目を美しくということも大事ですが、どのような訴求をするのが効果的なのかを考慮しながらシナリオ設計した上で、どのような言い回しや表現で伝えるべきかを考えていきました。

一瀬:プロダクトのカラーリングやロゴタイプ、ネーミングに加えて、見えない価値をどのように見せていくのかを考えてデザインすることが今回のプロジェクトの要点だったと思います。プロダクトとグラフィックデザイナーのスキルとその融合が必要でした。

増井:AEROXIA®の持つ価値を見つけ出して可視化することで、世界単位で課題となっているテーマに何らかの影響を与えられかもしれません。そこにデザインを通じて関与できるのはすごいことだと思っています。 

ブランドブックより抜粋

デザインの特徴

「人と自然に優しい自然由来ガス」は、競合製品との最大の差別化ポイントであり強みなので、ブランドブックによってその考え方を提示しました。ここで示された哲学や思想をもとに、プレスリリースや工場での製品開発発表会、海外での展示会とそのグラフィックからノベルティに至るまで、あらゆるタッチポイントでキービジュアルに壮大な空のイメージと、ピュアホワイトの製品画像を効果的に用いながら、徹底的にクリーンで澄んだイメージづくりを展開しています。訴求ポイントを際立たせるため、商標や書体、写真やグラフィックの細部まで、表現の統一されたデザインでまとめています。

ブランドブックはこちらからご覧いただけます。

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一瀬謙太郎

2004年度入社
プロダクト
 &コミュニケーション
     デザイナー

増井史織

2018年入社
グラフィックデザイナー
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WORKS LIST

株式会社東芝 CPSxデザイン部

〒105-8001 東京都港区芝浦 1-1-1