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事例紹介

量子暗号通信システム

どんな製品?

量子暗号通信とは、情報を安全にやり取りするために用いられる暗号通信技術のひとつです。例えば医療データや金融取引のデータなど秘匿性の高い通信で特に期待されています。量子暗号通信では、暗号化を行うために暗号鍵を量子の一種である光子に載せて伝送します。「光子は分割できない」「光子の状態は完全にコピーできない」という量子の技術を使って暗号鍵を通信するため、暗号鍵を盗むことができず、理論上盗聴が不可能です。この先端的な技術を応用した新世代の通信システムが、量子暗号通信( Quantum Key Distribution: QKD)です。

どんな製品? 量子暗号通信システム

開発のきっかけは?

あらゆるものがインターネットに接続されオンライン上でやりとりされることになり、データは今後も急激に増加していきます。そこで扱われる個人情報など大切なデータの安全性が担保されない限り、私たちの生活は成り立たなくなるでしょう。現在使用されている暗号技術は計算量的安全性によって成り立っていますが、圧倒的なスピードで情報処理を行える量子コンピュータが実用化されていくことで、機密情報の安全性が脅かされるリスクが高まっています。この差し迫る重大な課題に対し東芝は長年研究と実証実験を重ねてきました。将来を見据えて安全性が担保できる、世界トップクラスの量子暗号通信(QKD)技術を用いた情報通信システムが、これから様々なシーンで社会実装されようとしています。

開発のきっかけは? 量子暗号通信システム実証実験で使用された歴代の筐体

Designer:本田達也

量子暗号通信は、来たるべき本格的なDX(デジタルトランスフォーメーション)時代に向けて、今から必要となるシステムです。東芝は、欧州研究所傘下のケンブリッジ研究所で2003年に量子暗号についての研究を始めました。それ以来、多くの顕著な世界初となる技術を実証してきたのですが、それら実証実験で使用された機器は、研究開発を推進するエンジニア達が制作した筐体に収められていました。
その後、次のステップとして量子暗号通信(QKD)システムのプラットフォーム提供とシステムインテグレーション事業化を本格的に国内外で進めていくことになり、今回新たに我々デザイン部門で製品デザインを行うことになりました。

本田達也


“カタチのないものを
デザインする”

このシステムは店頭に並んでたくさんのお客様の目に触れるものではありませんが、その技術的な先進性からメディア上で積極的に発信され、店頭以上に露出する可能性が高いものです。 そういう意味では製品デザインであると同時にコミュニケーションデザインでもあります。 量子暗号通信(QKD)の先進性とそれが生み出す価値を具体的なカタチとして表現し、世の中に広く流布することで、最終的にはこの製品をご覧いただいた方に「量子暗号通信(QKD) =東芝」と想起いただけるようなデザインを目指しました。

カタチのないものをデザインする製造性と仕上がり品位のバランスを考慮した部品構成

カタチのないものをデザインする初期のデザイン検討で使用したラピッドプロトタイプ


量子暗号通信(QKD)の本質はアルゴリズムであり、その提供価値は高速大容量、低遅延かつ堅牢な暗号通信という“カタチのないもの”ですが、カタチの無いものは頭に残りにくいものです。  「量子暗号通信(QKD) =東芝」と想起いただくためには、それを具体的なカタチとして表現する必要があります。 無形の量子暗号通信(QKD)をどのようなカタチとして表現するのか? 私は今回 “光子を使った暗号通信”と“絶対に破られない堅牢性”というふたつのユニークネスに着目し、そこに造形のヒントを求めました。 例えば光子のイメージは小さな光る点かもしれませんが、それが高速な動きを伴う時、点ではなく細い光の線に見えそうです。筐体下部の吸気スリットはその光の線がモチーフになっています。 また“決して破られない堅牢性”については、マウントラックから出し入れする時に使用するハンドルを幅広の金属製とすることで、見た目だけでなく手で握った際にもその堅牢性を感じることができる造形としました。

近い将来いずれ量子暗号通信(QKD)はボード1枚、チップ1つが担い、「これが東芝のQKDシステムです」という目に見える筐体は無くなっていくでしょう。 今回筐体デザインに注力したのは量子暗号通信(QKD)の黎明期だからです。今まさにシステムが変革されていく転換期において、“東芝が量子暗号通信(QKD)を牽引している” というメッセージを世界に向けて発信する際に、みんながイメージしやすい具体的な象徴を持つことには意味があると思います。今回手がけたデザインは、この時期この瞬間だからこそ必要なものなのです。

2020年度グッドデザイン賞(公益財団法人日本デザイン振興会)、iFDesign Award 2022 (iF International Forum Design GmbH)、第52回機械工業デザイン賞IDEAに選ばれています。

製品の詳細については、こちらをご覧ください。

量子暗号通信システム




  • 本田達也
    本田達也
    1995年入社
    デザインフェロー
東芝のデザイン
株式会社東芝 CPSxデザイン部
〒105-8001 東京都港区芝浦 1-1-1