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事例紹介

SCiB™搭載
鉄道用回生電力貯蔵システム

どんなシステム?

鉄道で列車を走らせるには電力が必要ですが、電車が減速する際には逆にモーターから電力が発生します。回生電力と呼ばれるこのエネルギーは、従来は必ずしも有効に利用できていませんでした。これを回収し、有効活用する役割を果たすのが回生電力貯蔵システムです。減速した電車から発生した回生電力を、高い安全性で長寿命という優れた特性を持つ東芝独自の二次電池SCiB™を使った蓄電池システムに充電し、加速中の列車へ供給することで省エネ化に貢献します。また、回生電力貯蔵システムを導入すれば、停電が発生した場合には非常走行用の電源として活用することも可能です。

どんな製品? SCiB™搭載鉄道用回生電力貯蔵システム

開発のきっかけは?

このシステムは、PoC(Proof of Concept:概念実証)での良好な結果から、今後各鉄道事業者への本格的な導入が見込まれています。しかし、このシステムでのシェア拡大を目指す上では、既存の監視制御の画面はエンジニアが試作したもので使う面で色々な課題を解決する必要がありました。また、さらにシステムの魅力を高めるためにも、既存の画面の見直しは重要なポイントでした。そこで、このシステムのシンボルとなるような画面デザインに刷新するためのプロジェクトをスタートさせました。

開発のきっかけは? SCiB™搭載鉄道用回生電力貯蔵システム

Designer:魏彤舲

魏:制御盤に付属する画面デザインは、SCiB™への充放電の状況や、鉄道の始発・終電前後にシステムが起動・終了する状態を監視したり、メンテナンス時などに操作することに用いられます。そこで、実際に使われている中での課題やニーズを的確に理解したいという思いから、このシステムが運用されている沖縄の都市モノレールに伺い、製品の企画・設計などの担当を交えたクロスファンクショナルチームで現地調査を行いました。

魏彤舲


Designer:石川洋子

Designer:石川洋子


石川:ものづくりやシステムを考えるとき、ユーザーを意識して使いやすさをデザインする、人間中心設計の視点を取り込む必要があります。まずはシステムを理解したうえで、ユーザーのことを知るためにどれだけのことをするのか? インフラ関連のデザインは納入までのスパンが長いことが特徴ですが、どのようなプロセスで進めるか、現地調査を始め、行動観察、VoC(Voice of Customer:顧客の声)収集などの現状を知ることから、ストーリーマッピングによる可視化や情報整理など、アイデアを出す前の段階でのプロセス設計にしっかり時間を使い、明確なゴールを設定したうえでプロジェクトを推進していきました。

石川洋子

Designer:小原隆志

小原:既存の画面は、専門的な知識がないとわかりづらく、故障情報を関係者に伝えるにも操作方法が細かく扱いづらく感じました。インフラ関連のシステムは、通常専門知識を身に着けているユーザーが対象です。しかしながら、近年の人口減少、特に若手の労働者不足による熟練技術者の減少など、社会的な問題を背景とする課題を解決する必要性を強く感じていました。そこで、将来ユーザーの裾野を広げても問題ないように、初心者にもわかりやすい画面デザインを目指しました。

小原隆志


“インフラでの新しい体験を
デザインする”

魏:駅のサイネージは多くの人の目に触れるデザインとして工夫されています。それに対してバックヤードで稼働しているシステムのUI画面は、操作ができればいいという印象のものが多く、既存の画面もそうでした。そこで、これまでの枠組みに囚われずに、直観的な表現で状況把握がしやすく、ユーザビリティの高いものとし、専門職でなくても分かりやすいUIを目指しました。また、人の目に触れないような仕事も面白そうだと興味を持ってもらえる人が増えるきっかけとなることや、さらには最先端の技術を扱っているという誇りを持って仕事に取り組んでもらいたいと思い、デザインしました。

インフラでの新しい体験をデザインする

石川:デザイナーみんなでアイデアを出したビジュアルに対して、原寸画面のプロトタイプから実機タブレットを使った操作の妥当性まで、企画・設計・製造の担当者を巻き込んで多面的な視点から検証していきました。デザインチーム内では、小原はエンジニアの経験もあるので視点も異なり、デザイナー同士いい意味で、それぞれのユーザー視点に立った意見のぶつかり合いがありました。また、現地調査では、現場の運用方法を始め、機器の設置状況や、周辺環境の影響など、細かな点に興味津々で、3人ともすごい熱量で観察・記録に夢中でした。傍から見ると仕事というよりも、鉄道オタクの家族のように見えていたかもしれません(笑)。

小原:画面デザインのアイデアについて、疑似体感を得るためにプロトタイピングを繰り返し、技術者からも活発なアイデアが出てくるようになり、良好なプロジェクト推進となりました。その結果、「これまで試していない実装や、斬新な表現に取り組むことができた」と言って貰え、プロジェクトメンバー全員で新規デザイン画面の効果と必要性の共感を得たことにより、実装の難易度を乗り越え、一丸となって商品化に向けて進むことができたことは本プロジェクトの大きな成果だと思います。

魏:メイン画面では充電・放電の状態を画面全体がダイナミックに変わることで表現しています。また、起動中の表現は12ブロックある蓄電池が次々に起動していく様子も再現しています。この新規デザイン画面を実装したシステムはバングラデシュ人民共和国の鉄道に納入され、試運転されていますが、システムが起動したときにダッカにいる現地のスタッフ全員が一心に画面を眺めていた姿が感動的でした。鉄道インフラ関係に携わる人たちが魅力的に感じるデザインテイストを探し当てられたのは嬉しかったですね。

SCiB™搭載鉄道用回生電力貯蔵システム


デザインの特徴

単なる計測値の表組みではなく、より直感的に伝わる表現を目指しました。平常時の運用での充放電の状況は、血液が流れていくようなイメージを画面全体で表しています。また、起動時にはそれぞれの部位ごとに目覚めていくような動きをデザインすることで、システム全体がひとつの生命体のような印象を持つ表現としました。

機能を満たすだけの情報を提示するのではなく、現場で働くユーザーの感情にも目を向けたデザインとしました。社会を支えるインフラに魅力的なデザインを導入することで、これらの仕事に従事する若者が少しでも増え、そこで働くことに誇りを持ち、その結果が社会の安全や安心を支える、『うれしさの循環®※』につながることを目指しています。

画面内だけの課題解決にとどまらず、タブレット端末を盤面から取り外せる仕様を提案。平常時のメンテナンス作業や故障時の原因診断に、機器や部品の目の前で画面を確認することが可能となり、より確実な作業を行えるようになりました。

2021年度グッドデザイン賞(公益財団法人日本デザイン振興会)、2021年度iF DESIGN AWARD(iF International Forum Design GmbH)に選ばれています。

東芝のUIデザイン(note)でも担当デザイナーによる開発プロセスの紹介がありますので、ぜひご覧ください。

製品の詳細については、こちらをご覧ください。

※『うれしさの循環®』については、こちらをご覧ください。

SCiB™搭載鉄道用回生電力貯蔵システム


  • 魏彤舲
    魏彤舲
    2016年入社
    UIデザイナー
    DESIGNERS >
  • 石川洋子
    石川洋子
    1992年入社
    UIデザイナー
  • 小原隆志
    小原隆志
    1991年入社
    UIデザイナー
東芝のデザイン
株式会社東芝 CPSxデザイン部
〒105-8001 東京都港区芝浦 1-1-1