大牟田発電所

どんな製品?

大牟田発電所は、バイオマス燃料であるPKS(Palm Kernel Shell)を主燃料とする発電所です。PKSはアブラヤシの果実の中にある種子の殻の部分で、主に食用となるパームオイルの製造工程で発生し、以前は棄てられていたものを活用しています。運営を担う㈱シグマパワー有明は、東芝グループが設立した発電事業会社で、福岡県大牟田市で既にバイオマス発電所(三川発電所)を運営していましたが、隣接地に本発電所を新設することで事業を拡大しました。本発電所は「大牟田第一・第二発電所」で構成され、合計発電出力は44.2MWで一般家庭約7万世帯分に相当する電力を供給します。電気の安定供給に加え、再生可能エネルギーの活用を通じ、地域と共生し、新しい価値の醸成を目指したバイオマス発電所です。

開発のきっかけは?

従来の発電所の外観は周辺環境との調和などはあまり重視されていないものが多いですが、今回新設した発電所は、地域の幹線道路に面した敷地に建設計画されたこともあり、地域の住民から日常的に見える発電所として地域と共生する新しい関係性が求められていました。このことに加え、バイオマス発電を通じた会社知名度の向上、地域の優秀な人材の雇用確保、従来の発電所の3Kイメージの払拭、というテーマにも取り組みたいという要望がありました。

三井三池炭鉱跡

㈱シグマパワー有明 三川発電所

Designer:倉本幸重

倉本:私は東芝のプロダクトデザイナーとして消費者向けの製品を手掛けてきていたので、発電所のような大きな施設のデザインに関わるのは初めてでした。一般的なプロダクトデザインとは違い、図面に記された数値が今まで見たこともない大きなスケールで最初は戸惑いましたが、顧客価値や社会価値に焦点を合わせ、対象物と人との関係性をデザインに落とし込んでいくという点では B to C のデザインと同じです。まずは発電のしくみを勉強しながら進めていきました。

Designer:朴ボミン

:私もデザインしたものを使う人は個人ユーザーでした。しかし、この仕事は社会に影響を与えるような物事をテーマにしています。とても難しいのではないかと心配な部分もありましたが、業務を通じてデザインには本当にいろいろなことができるということが実感できました。

倉本:この発電所を担当している事業部もここまでの規模でのデザイナーとの仕事は初めてで、お互いが探り合いのような状況からスタートしました。かつて三井三池炭鉱があり、石炭で栄えた大牟田のエネルギーの歴史的背景とこの地域におけるバイオマス発電事業の意味を紐解く中、発電所は住宅街の横にあり、地域との関わり方が大きなコンセプトになると思いました。そこで対象の捉え方を社会価値まで拡大し、「従業員、経営者、地域住民がうれしい、新しい価値を生み出す発電所でありたい」とうビジョンを設定、関係者で共有しました。

“地域との共生をデザインする”

倉本:ビジョンを共有した後、このバイオマス発電所が開かれた存在として地域と共生・貢献できる方法を考えました。そこで、まずは地域住民との交流ができるポケットパークを発電所の敷地内に設け、様々なイベントと連携したらどうかと、イメージCGを作りました。その提案を持ってシグマパワー有明の方が大牟田市の産業振興課や地域の団体に掛け合ってくださり、今後、おおむた港まつりでの開放やおおむた大蛇山まつりの山車の引き込みが検討されています。

:最初は発電所内の使いやすさなどを工夫していましたが、外観も地域の方々と共有できることが望ましいと考えました。そこで、ポケットパークの設置とともに、大きな壁面を生かして何か楽しいことができないかと考え、木をイメージさせるグラフィックを入れることにしました。このグラフィックで従来の発電所には無い親しみやすい印象を生むことに加え、地域のイベントなどで発電所の壁面を利用してプロジェクションマッピングができるように、あえて白い部分は大きくすることなども提案しました。

建屋外観CG

プロジェクションマッピングを実施したイメージ

倉本:壁面に用いたグリーンは、この発電所を運営するシグマパワー有明のコーポレートカラーの同系色です。これは発電所の横を通る人がシグマパワー有明という会社の存在を意識してもらう効果と、樹木をイメージさせる外壁のデザインで植物由来のバイオマスで運用されている施設であることを知らせ、クリーンエネルギーや環境のことをちょっと知ってみようかなと思ってもらうためのきっかけになれたらという思いがあります。

“安全に配慮され、働くことに誇りが持てる空間をデザインする”

:発電所内外の手すりにはJISの定める安全色の中からブランドカラーでもある緑を使っています。内部の空間は清潔感のある白をベースカラーとし、機器はすべてシルバー、そして、手すりやサインは緑というように、色によって直感的に機能がわかるようにしています。これは、安心安全のために重要な役割を果たします。また、機能性と技術の先進性を表現した空間デザインとすることで、従業員が誇りを持って働ける空間となるようにしました 。現在の従業員の誇りを高めることは、すなわち、将来の優秀な人材確保にもつながると考えています。

倉本:関係者の方々にはデザイン検討の段階から、細部に至るまで都度デザインの意図を説明し、納得していただくためにイメージCGを用いたり、スケール感をVRで体感してもらいました。結果として、この施設を長く美しく保っていきたいという意識を持っていただき、運転開始してからもデザイン面で相談してくださるのがとても嬉しく、何よりの評価だと思っています。

初期イメージCG

デザインの特徴

地域住民との交流を目的として敷地内に設置したポケットパークでは、今後地元のさまざまな祭事での活用が検討されています。都市機能の保全のために働く企業の認知向上を図りつつ、地元密着企業として地域に貢献します。また、植物由来のバイオマス発電を想起させる木々を模したグラフィックを、近くを通行した人から見える建屋の壁面に用いることで、その存在をより身近に感じてもらえるようにしました。施設のデザインとしては、手すりとサイン、発電所の機器、そして内装のベースカラーの色をそれぞれ分け、直感的に分かることで、安心・安全にもつながります。クリーンで明るい発電所によって、そこで働く従業員の誇りを高めることも期待しています。

発電所の詳細は、運営を担う株式会社シグマパワー有明のサイトや東芝が手掛ける発電事業のページをご覧ください。

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倉本幸重

2000年度入社
プロダクトデザイナー

朴ボミン

2022年入社
プロダクトデザイナー

WORKS LIST

まだ見ぬ日常をデザインする

目的に沿った、普遍的なかたちを
デザインする

水の未来をデザインする

可能性をデザインする

世界観をデザインする

フルスクラッチで
まだ世の中にないものをデザインする

インフラでの新しい体験をデザインする

地域の想いをデザインする

カタチのないものをデザインする

着眼点をデザインする

人の命を救うコミュニケーションを
デザインする

おもてなしを実現する仕組みをデザインする

検針員の心地よさをデザインする

設備と人との関係性をデザインする

医者が確実に治療できる空間をデザインする

業務の本質をデザインする

株式会社東芝 CPSxデザイン部

〒105-8001 東京都港区芝浦 1-1-1