WORKS

事例紹介

水素利用の社会的認知の拡大
福島水素エネルギー研究フィールド

どんな活動?

福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R:Fukushima Hydrogen Energy Research Field)は、福島県浪江町に国家プロジェクトとして建設された世界有数規模の水素製造装置を備えた施設です。水素を製造するエネルギー源は主に再生可能エネルギーを利用しており、東芝はエネルギーマネジメントシステムを納入しています。私たちが取り組んだ活動は、FH2Rで製造された水素利用の社会的な認知の拡大を目的としています。この活動を通じて水素エネルギーの認知度を上げることで水素の利活用が促進され、水素社会の実現を加速させます。

どんな活動?福島水素エネルギー研究フィールド

活動のきっかけは?

地球温暖化は、私たちが抱える最も大きな社会課題のひとつです。日本では2050年にカーボンニュートラルを実現することを目標に掲げていますが、これに向けた次世代のクリーンエネルギーとして水素が期待されています。2020年2月末に誕生したFH2Rで製造された水素は、震災復興に取り組む福島から日本各地へ輸送され、様々な用途に利用されます。当初デザイン部門は、ここFH2Rから水素を運ぶトレーラーのラッピングデザインを国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)より依頼されていました。しかし、福島から日本各地へ水素を供給する意義を考えると、単に見た目が良いだけのラッピングデザインではなく、地域に受け入れられるデザインを目指す必要があると考えました。そこで、福島の住民と一丸となったデザイン活動をNEDOへご提案させていただき、この活動が始まりました。

活動のきっかけは? 福島水素エネルギー研究フィールド

Designer:鶴見慎吾

水素はクリーンなエネルギーですが、一般的には爆発するものというイメージがあり、中学の理科で習うレベルでは危ない物質であるという認識があると思います。震災復興に取り組む福島では、これを安全でクリーンなものとして捉える方向に民意を転換していくべきだと考えました。まずはFH2Rのある福島県浪江町の方々に水素に関心を持って理解していただいた上で、水素社会の実現に向けた認知拡大をしていくというステップです。この活動には、水素社会が実現する時代をリードする子ども達に重要なキープレイヤーとして登場してもらいたいと考えました。

鶴見慎吾


そこで、浪江町の小中学校と、その隣に併設されたこども園の児童生徒と一緒にお絵描きワークショップを行いました。水素ってどういうもの?という簡単な導入教育をしつつ、水素が実現する「クリーンで明るい街」をテーマにしながら、人や太陽、水素で走るバスの絵や水彩画を子どもたちに描いてもらいました。当日は僕だけでなく同僚のデザイナー5・6名が子供たちと寄り添って進行しました。このワークショップの設計も私たちデザイナーによるものです。

子どもたちの絵をシルエット化し、そのシルエットの背景には子どもたちの水彩画を組み合わせています。最終的なゴールのイメージはデザイナー側でしっかりと持ちつつ、子どもたちの意思の入った味のある絵を作るという方法です。こうして「クリーンで明るい街」のアイコンが完成しました。

導入イメージの提案図

“地域の想いを
デザインする”

このような象徴的なアイコンがあれば、様々なシーンに展開していけるという考えですが、それを作っていくプロセスが重要であると思います。もっと単純にFH2Rのブランドをデザイナーが格好良く作るという方向性もありましたが、採用したのは地域の方々と共創するというコンセプトです。今回は福島県波江町の子どもたちと共に活動することで、保護者や町役場そして地域の方々の共感を得ていくことができました。この理解や共感を生み出すデザインは、日本中に伝わるものだと思います。

地域の想いをデザインする

福島県浪江町の子どもたちと共に作ったシンボルは、FH2Rの開所式の招待状や施設のパンフレットに使っていきました。このことに加え、認知拡大する上で水素を輸送するためのトレーラーが重要な媒体であると捉えています。開所式ではプレス関係者が撮影するアングルを想定して「クリーンで明るい街」のアイコンを入れたトレーラーを停車させ、それをメディアが発信してくれました。
FH2Rには、当時の総理大臣をはじめ多くの政界人や業界関係者にご来館いただき、水素社会の実現への関心が高まっています。また、エネルギー庁や本施設の所有者であるNEDOから評価いただいたことに加え、本活動に共感していただいた様々なステークホルダーの方々から「クリーンで明るい街」のアイコンを使ってもらっています。


このアイコンを大きく描いた水素トレーラーは、水素を運んだ先でもしばらく停車しています。トヨタの水素エンジン車が走っているサーキットにも水素を供給するなど、単に走っている間だけでなく、イベント会場でも存在感を発揮できます。今後はこのトレーラーが向かった先を撮影し、社会的認知向上のためのコンテンツを作っていく予定です。

活動の特徴

水素が人々にとって親しみやすい身近な存在になることが水素社会の実現の第一歩であると考え、水素の幅広い利用をわかりやすく伝えるアイコンとして、水素が実現する「クリーンで明るい街」を子どもたちと共にデザインしました。FH2Rから水素を搬送する水素トレーラーをはじめ、FH2Rの開所式といったイベントなどでも幅広く活用しています。

「クリーンで明るい街」のアイコンは、子どもたちが描いたイラストの不均一さやいびつさ、色鮮やかな水彩のグラデーションをベースにすることで、今にも動き出しそうな躍動感を持ち、親しみやすい印象を与えています。本活動のプロモーションビデオでは、ワークショップからこのアイコンが生まれるまでの一連の流れと、デザインの特徴や当事者の思いが伝わるように仕上げています。

 H2OneTM



  • 鶴見慎吾
    鶴見慎吾
    2015年入社
    サービスデザイナー
    DESIGNERS >
東芝のデザイン
株式会社東芝 CPSxデザイン部
〒105-8001 東京都港区芝浦 1-1-1