新しい水処理装置 Habuki™
どんな製品︖
Habuki™は、下水処理施設の課題解決と経済効果を期待して開発された新しい水処理装置です。従来の処理方法に比べて、下水処理にかかる時間を大幅に短縮し、省エネ対策や老朽化対策など、多様な課題に対応できます。今回は、この新しい下水処理施設向け前処理装置Habuki™のプロモーションにおいて、デザイン部門がどのように携わったのか、その取り組みを紹介します。
開発のきっかけは︖
下水処理施設は、各家庭などからの排出された汚水を水処理し、河川や海などに放流するもので、私たちの生活には欠かせない施設です。しかし近年、人口減少に伴う流入下水量の減少や処理地域の広域化・隣接した施設との共同化による施設規模の変更、そして、カーボンニュートラル推進のための省エネ対策、設備の老朽化対策など、様々な課題があり、自治体側の下水事業の継続が困難になっています。それらの課題解決に貢献したいという想いで、東芝はHabuki™を2024年7月にリリースしました。
Designer:内田昭大
内田:デザイン活動をするためにまず行ったのは、デザイナー自身が製品についての理解を深めることです。製品の特長だけではなく、その分野の社会課題や、ステークホルダー、製品を導入することで期待できる効果など、いろいろな情報を読み解き、整理しました。営業や技術の担当者と数時間の勉強会を何度も重ねたのですが、その都度、担当者から伝わるHabuki™への想いが本当に熱くて、その想いを受け止めるのはなかなか大変でした。でも、そのステップがあったからこそ、私や他のデザイナーも、このプロジェクトを成功させたいという強い気持ちに繋がったと思います。
Habuki™を導入してもらうためには、下水処理の専門家だけではなく、様々なステークホルダーに興味を持ってもらい、製品の利点を納得してもらう必要があります。そのため、勉強会で整理した情報をもとに、多様な媒体で共通して訴求するシナリオをまとめ、それを展開するためのプロモーション戦略を立案しました。
“新たなサービスの体験をデザインをする”
Designer:竹内仁美
竹内:私たちが特に大切にしたのは、あらゆるタッチポイントで表現を統一し、訴求ポイントを明確化することでした。Habuki™は、コンパクトで低動力でも処理能力が高く、従来の処理法と比較して処理にかかっていた時間を短縮することができるなど、下水処理施設の課題解決にも貢献し、経済効果も期待できるものでした。しかし、過去に発売された類似技術を使った他社製品と混同される可能性があり、Habuki™が持つ有用性を効果的に伝えられなければ、受け入れてもらえない心配がありました。そこで私たちは、技術的な資料だけでなく、カタログやプレゼン資料、展示会のパネルに至るまで、様々なタッチポイントで、データの見せ方や製品の語り口も含めた表現を統一して訴求ポイントを明確化しました。
さらに、製品のネーミングにもこだわりました。新しい価値を訴求できるように、関係者で幅広くアイデアを出し合い、最終的には「コストを省く」、「スペースを省く」、「手間を省く」という意味を込めた「Habuki™」に決定しました。これらの対応によって新製品としての新たな印象を残すことを狙いました。
Designer:菱木大河
菱木:Habuki™は新製品のため、まだ導入事例が無いので、実装された姿を見てもらうことができません。そこで、実際にHabuki™が導入されたらどんな環境になるのかをイメージしてもらいやすくするため、Habuki™実装後の東芝の目指す姿をリアルな環境CGで描きました。
私は、プロジェクト自体には途中からの参加だったのですが、内田さんや竹内さんが参加した勉強会の情報を整理した俯瞰図は、それが無ければ描けなかったと思うくらいしっかりと描かれていて、とても参考にしていました。また、実際に下水処理場を見学し、そのリアルな環境を体感したことが大きな収穫でした。
処理場は、想像していたよりも大きく、逆に、そこに設置されたHabuki™は、コンパクトに収まっていると実感しました。処理場の近くには事前に聞いていた通り川があったり、高台にあることによる、住宅地エリアとの距離感を感じられたり、こういうところにHabuki™が置かれているということを確認した上で環境デザインに取り組むことができたのは、すごくよかったと思っています。
CGを作る際は、Habuki™が実際の環境に実装されている姿を感じてもらいたかったので、リアルに作るのですが、リアルであるがゆえに、実際とのギャップも生じてしまうことになり、Habuki™の魅力を最大限に伝えるためのベストバランスな抽象度を調整するのがとても大変でした。結果的には、細かいところまで関係者のいろいろな想いが詰め込まれているものとなり、このCGがいろいろなところでキービジュアルとして使われているのは、嬉しいですね。
内田:このプロジェクトは、デザイナーも含めてとても多くの人が参画しています。展示会などの各イベントに合わせてプロモーションアイテムのスケジュールを立てるのですが、アイテムごとに担当デザイナーが違うので、デザイナーや事業部と密に連携を取りながら全体をマネージメントして進めていくのは、とても苦労しました。竹内さんには、各アウトプットのクオリティをコントロールしてもらっていたので、そこも本当に大変だったと思います。社外へのプロモーションには使っていませんが、Habuki™の外観をモデルにした非公認マスコットキャラ「はぶき君(仮称)」を作るなど、関係者が多い中でのチームビルディングもみんなで工夫しました。
はぶき君(仮称)
今後の目指す姿
「Habuki™」のプロモーション活動は、まだ始まったばかりです。今後はさらなる認知拡大を目指し、提案活動を強化していく予定です。専門知識のない方から有識者まで、様々なステークホルダーに向けて、興味を喚起し、理解を深めてもらうことが重要です。
東芝のデザイン部門は、技術・営業・研究など、さまざまなメンバーとチーム一丸となって、将来にわたる安定的な下水道事業に貢献していきます。
Habuki™についての詳細は、以下のサイトをご覧ください。
回転繊維体を用いたOD法向け前処理装置Habuki™|
内田昭大
2008年入社
ビジネスデザイナー
竹内仁美
2020年入社
グラフィックデザイナー
菱木大河
2004年入社
プロダクトデザイナー
WORKS LIST
株式会社東芝
DX・デザイン&コミュニケーション部
〒105-8001 東京都港区芝浦 1-1-1