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2021.05.20

CPS企業への転身から始まった、新しい仕掛けづくり


インフラ運用には、異常気象による電力需要の増加や環境配慮など、さまざまな要求にしっかりと対応することが求められます。そのため、インフラを使用する生活者や来訪者の、利便性や安心安全などのニーズを満たすことは、インフラ運用を難しくする原因とされてきました。

しかし、長くエネルギーインフラに携わってきた東芝は、CPS企業への転身を機に、その根本的な考えに疑問を抱くようになりました。

再生可能エネルギーの普及に伴い、エネルギーの在り方も変わり始めている今だからこそ、インフラユーザーの行動がインフラ運用に好影響を与えるような仕掛けづくりはできないかと発想を転換。実際に動き始めました。

この記事では、東芝が宮古島で取り組んでいる、需要家データ分析による新しいサービスデザイン検討についてご紹介します。

※CPS(サイバー・フィジカル・システム):実世界(フィジカル)におけるデータを収集し、サイバー世界でデジタル技術などを用いて分析したり、活用しやすい情報や知識とし、それをフィジカル側にフィードバックすることで、付加価値を創造する仕組み

宮古島と東芝のエネルギープロジェクト


宮古島市は2018年に、サステナブルな暮らしを目指すための独自宣言「エコアイランド宮古島宣言2.0」を公開しました。宮古島などの離島は自然環境や地域振興をはじめとするさまざまな課題を抱えており、エネルギー自給率も大きな問題となっています。

そのため、高価な燃料費がかかる化石燃料由来のエネルギーから再生可能エネルギーにシフトすることによって、エネルギー自給率を上げていくことが求められています。当宣言では、2050年にエネルギー自給率48.9%を達成する目標が掲げられています。

本プロジェクトメンバー 東芝エネルギーシステムズ株式会社 田中健太郎(左)、木村功太朗(右)

東芝グループは過去に、沖縄県、宮古島市とプロジェクトを推進する機会を得ていたため、同市の目標に対して、新しいエネルギーインフラの可能性を検討しました。

本プロジェクトメンバーの東芝エネルギーシステムズ株式会社 木村功太朗、田中健太郎は語ります。

「再生可能エネルギーは、自然由来のエネルギーであるため、人々が電気を使いたい時に合わせて発電してくれるわけではありません。また、エネルギーを貯めるには蓄電池などの設備が必要で、一番効率がいいのは電気を作る量と使いたい量の均衡が取れている状態です。
これまではインフラ事業者の努力により、その均衡が保たれていましたが、再生可能エネルギーを有効活用していくためには、需要家側の電気の使い方も変化させていく必要があります。しかし、「電気はあって当たり前」という環境下において、なかなか生活者は生活スタイルを変えてはくれません。そのため、両者がメリットを感じながらより良い社会を創っていく仕組みが必要になります。
沖縄県や宮古島市には、島を想い、より良い島にしたいと願う方々がたくさんいらっしゃいます。その方々と一緒により良い離島の社会インフラモデルを構築したいと考え、インフラ提供サイドが持つデータとインフラユーザーサイドのデータを分析して価値創出のループを創ることでこれらを実現できないか、というプロジェクトのコンセプトを提案しました」

Community as a Serviceとは


宮古島で暮らしを営む「インフラユーザー」と、暮らしを支える「インフラ提供サイド」を結ぶことで、インフラ運用に対するデメリットを分析。データを活用した仮説検証により、ユーザーの行動変容とエネルギー自給率向上に向けた取組みを、「サービス提供サイド」と連携し新サービスの構築を目指します。

私たちは、このサービスを「Community as a Service」と名付け、具現化に向けた取り組みを行っています。

インフラユーザーからデータを集める


宮古島島民の、時間ごとのエネルギー使用データ(個人情報が紐付かないもの)を分析し、島民が持つ生活スタイルの型を分類すると、あるグループでは「電力消費が金曜日の夜22~26時にピークを迎え、かつ夏に顕著である」という特徴が見えてきました。

実際、宮古島の方々にお話を伺うと、「宮古島の島民はお祭りや宴会などで、親族や友人が集まる機会が多い」という情報を得ることができました。

電力使用量データ分析から見えてきた特徴と実際の生活スタイルを結び付けることで、「例:金曜に仕事後の飲み会が終わったあと、さらに自宅でクーラーをつけながら二次会をする人が多いのでは」という予測を立てることができます。

分析データをインフラ提供サイドで活かす


電力使用量データの分析結果があれば、需要ピークが連続していない時間帯と、その理由について目星をつけることが可能になります。着目した時間帯に対し、蓄電池によるピークシフト検討や需要に対する電源見直しなど、より効率的なエネルギー供給について検討することができます。

島民の行動変容が生み出す新たな価値


「インフラユーザーサイド」と「インフラ提供サイド」を「Community as a Service」が結び付け、家族向けの夜の星空鑑賞イベントのような新しいサービスを展開。それによってこのコミュニティでは、島民や観光客などにより良い暮らしや観光体験などを創出できるとともに、燃料費削減といったインフラ運営上のメリットを提供できるようになります。

新しい価値を生み出す仕掛けの具体例

【家族向けの夜の星空鑑賞イベント】では、
夜のディーゼル発電の利用を抑えるための事業検討プロセスを実施。

親子で楽しい体験ができる、新たなサービスを実行検証。

新たなサービス創出に向けたパートナー募集


「Community as a Service」の新たな可能性に対して、高い関心が寄せられました。
しかし、このビジネスモデルをさらに進化させるには、事業領域の異なるパートナーとの連携、業界の垣根を超えたシナジー(パートナー各社の知見×技術×サービス連携)を最大化することが求められます。

インフラユーザーサイド、サービス提供サイド、インフラ提供サイド、コミュニティ全体が一体となって議論を深めていくことで斬新なアイデアが生まれ、サービスを進化させることができます。

より良い社会の実現を目指して共に考え・行動してくださる方々の参画をお待ちしています。