小林 良岳 組込みLinux/OSS
共創により開発されるOSSとその開発の仕組みを用いて事業化を加速
小林 良岳
今や、オープンソースソフトウェア(OSS)は製品開発における必須要素の一つとなっています。その活用範囲は、単に製品やサービスで用いるだけでなく、日々のソフトウェア開発に用いる開発環境や保守に至るまで広範なものとなっています。こうした企業内で共通して活用されるソフトウェアに関連する課題は、企業内だけのものではなく、グローバルな課題となることがあります。そこで、グローバルな課題は積極的にオープンにして社外コミュニティと連携して解決するとともに、社内活用の際には正しく活用して活用効果や開発効率を最大化できる企業内連携が必要です。こうした課題解決に共通するキーワードが「共創」です。
私達のチームでは、共創によるソフトウェア開発に関連する活動として次のことを行っています。
(1) OSSコミュニティ貢献も含む今後の製品開発に必要となる共通要素技術の開発
(2) ソフトウェア開発効率化に寄与する共通開発環境とソフトウェア活用管理環境の構築
(3) OSSを正しく効率的に活用するOSSライセンスコンプライアンス
(4) 既存の開発プロセス改善・強化に加えて企業内連携も可能とする新しい開発プロセスの整備
(5) 社内外のコミュニティ構築と連携
こうした活動は、東芝グループの研究部門・開発部門とも連携して進めています。
具体的なOSSコミュニティ活動としては、高信頼なLinux(*)ベースのOSS共通基盤実現を目指す「Civil Infrastructure Platformプロジェクト(CIP)」を他社と連携して立ち上げ、現在も技術運営委員会(Technical Steering Committee)の議長を担当しています。社会インフラ、ヘルスケア、業務用機器などの高い信頼性が求められる機器へのOSSの搭載は、東芝だけでなく同業各社も同様の課題を抱えています。こうした共通課題を解決するのがCIPであり、この活動を通して東芝の将来製品でも活用可能な共通要素技術の開発も行っています。
今後は、こうした活動の仕組みや経験を東芝グループに取り入れて、「共創」に基づくソフトウェア開発効率化や開発力強化を行い、東芝の事業加速に寄与したいと考えています。
(*)Linuxは,Linus Torvalds氏の米国及びその他の国における登録商標
関連する研究領域
・共通要素技術 OSS活用と“東芝ならでは”の差異化機能の開発で魅力あるソフトウェアを創出
・東芝レビュー【R&D最前線】ソフトウェア開発資産の再利用とOSSコンプライアンスを両立させる管理システム(2020年1月号)