[第30回]アクティブ・ラーニングと人間力


2019.12.20

拙稿もおかげさまで30回目を迎えました。皆さんのお役に立てているのか、はなはだ不安ですが、小生が人材育成で大切にしてきた「自身の本気度が試される」ということ、そして「継続は力なり」の心でこれからも進んで参ります。

ところで皆さんの部下は、上司のことをよく見ていると思いませんか。「上司は立派なことを言うが自分はどうなの? 普段はどうなの?」と、その本気度は常に問われています。上司の成長こそ、最高の教育環境であると受け止め、謙虚な気持ちで今日も自分磨きを始めましょう。

「内化」と「外化」とは

人材育成の根幹は、時代とともに変わっているわけではないと思いますが、目新しい言葉が登場すると、それに乗り遅れないようにする心理が働くようです。人間力もその一つかも知れません。

今回は、創造性を磨くアクティブ・ラーニングと人間力の関係について考えてみます。アクティブ・ラーニングが一般的に言われるようになったのは、2012年8月に文部科学省の中央教育審議会が“大学教育の質的転換”に関する答申を出してからではないでしょうか。それは、“知識伝達型の教育”から“能動的学習への変革”を求めたものでした。

アクティブ・ラーニングのキーワードに「内化」と「外化」があります。学習過程において、受講者が自分で考えて理解する「内化」と自分の言葉で表現する「外化」を繰り返すことにより、学びが深まるとの考え方です。

つまり、アクティブ・ラーニングの導入は、講師がいかに教えるかという「ティーチング」から、受講者にいかに学んでもらうかを追求した「ラーニング」へのパラダイム転換をも意味しています。

受講者は事前に与えられた課題を読み解くなどの準備をして研修に臨みます。研修では、少人数のグループに分かれて、相手の発言に耳を傾け、自分の考えを発表します。自ら学び、お互いから学び、刺激を受け、主体的に課題解決能力を養います。

人間力を磨くヒント

話は少し変わりますが、ここで人間力講座を通して「内化」と「外化」について考えてみます。

人間力講座は、プロフェッショナルや各界の志熱きリーダーを招いての講演という形式をとっていますので、受講者は講師の体験談を通して自分を振り返り、自ら気づき、人間力の必要性を理解する「内化」の場となります。

一方、自省を込めてですが人間力を磨くための「外化」の取り組みは弱かったと思っています。良い話を聞いたで終わってしまっていました。人間力講座で講演を聞いた後、その場でグループに分かれ、自分が気づいたことや刺激を受けたこと等を語り、自分の現状を踏まえて、自分にどう活かしていくのか、具体的に今日から何を始めるのか等を自分の言葉で語り、他の参加者の声に耳を傾ける場の必要性を感じていましたが、参加人数や時間の関係で実現していないのは、残念です。

しかしながら、講師の許可を得て、録画した講演を社内で活用した事例も生まれました。人間力講座に参加した人が、職場のメンバーにも是非聞かせたいとの思いから、職場メンバーを集めて収録した人間力講座を一緒に見た後、メンバー同士で今見た内容の振り返りの場を設けたのです。

また、講師をお呼びした責任者として、講演終了後、しばし講師を囲んで懇談する機会を設けていましたが、その場は貴重な時間となりました。その場に同席していた経営幹部が感じた視点やそれに対する講師のやり取りを聞いていると、自分の感性や思考が深まり、講師のメッセージが(空間的にも時間的にも)広がる瞬間を感じたことがあります。

人材育成の醍醐味は「飛び火」現象

小生は人材育成の醍醐味は「飛び火」現象ではないかと思っています。先程の職場単位での取り組みは、他の職場にも広がっていきました。志熱い種火から、火をつけて燃え広がるイメージです。

また、本拙稿も人材育成や人間力を磨くことについて自分の言葉で表現する「外化」の場にもなっているように感じています。このような場を通して、自分の言葉で語ることは、自分の頭の中を整理することでもあり、新たな発見や気づきに出会うこともあります。

主体性を目指すアクティブ・ラーニングには、人間力を磨くためのヒントがありそうです。

※記事に掲載の、社名、部署名、役職名などは、2019年12月時点のものです。


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