“人間力”ある人づくりを目指して

[第40回]新たな職場へ異動する皆さんへ


2021.2.25

知識よりも情熱、気概

二つご紹介したいことがあります。一つ目は、城山三郎の著書「雄気堂々」についてです。皆さんにもお勧めしたい一書です。渋沢栄一はご承知の通り大河ドラマや新しい1万円札の顔です。その素顔をもっと知りたいと思い本著を手に取りました。

明治3年ころ富岡製糸場を設立する場面で渋沢栄一が、尾高新五郎に現場主任を任せようとする場面にこんなやり取りがあります。
「もともと自分は漢学と剣術の先生である。養蚕こそ知ってはいるが、機械製糸や工場の運営については、何の知識もない」と断ろうとする尾高に対して、渋沢は「知識がないといえば、日本中、誰も知識はない。だから、知識がないといってやらなければ、いつまで経っても日本はだめということになる。いま欲しいのは、国づくりに加わろうという情熱であり、気概である。あとは、互いに勉強し相談してやって行けばよいのではないか」と説得します。(出典:雄気堂々(下巻)城山三郎著)

尾高は、その後、富岡製糸場の初代場長を務めています。
日本中、誰も経験がないとの言葉が示すように、明治維新後の先の見えない時代だからと考えるかも知れませんが、果たしてそうでしょうか。現代に目を向けてみると、今もまさに先を見通すことができない時代と言われています。その渦中に生きる私たちは、貴重な経験をしているのかも知れません。経験が無いと躊躇するよりも、情熱と気概をもって一歩踏み出せば、新たな自分を発見できるのではないでしょうか。

素人を生かす

次にご紹介するのは、本稿でも何度かご紹介している松下政経塾 元塾頭の上甲晃さんが、松下電器産業(当時)の電子レンジ営業課長時代に、松下政経塾への出向の話があり、松下幸之助に直接、断る場面です。
「私は政治についてはまったくの素人です。本当に申し訳ありませんが、政治には関心も興味もありません」と断る上甲さんに、松下幸之助は「そうか君、素人か、そらええな。君、素人だからダメだと思って仕事をする限りは、いつまで経ってもそれが君の負い目となる。劣等感や。ちょっと壁に当たると、いやあ、やはり素人には無理か、素人の限界かと考える。結局、その考え方が足を引っ張ることとなる。だけど素人には素人の良さがあると知り、素人の良さに気づいたら、逆に素人が生きてくる」と応えます。
(出典:人生に無駄な経験などひとつもない 上甲晃著)

新たな職場や仕事を生かすも殺すも、自分の考え方次第ということを教えてくれています。その根底の一念は普段は隠れて見えませんが、いざという時になると、水面が下がるように顔を出してきます。丁度、コロナ禍で自分や社会の弱い部分が浮き彫りになるのと同じように。つまり、自分がどのような思いで仕事に向かっているのかは、順調な時には誰にも見えないし、気づきませんが、いざというときや壁にぶつかると、見えてくるというわけです。

毎年、私はこの時期になると、心新たにとの思いで、心に留めている松下幸之助の言葉があります。初出勤の日、家に帰って家族に何と報告するか。「期待はずれだ」と嘆くか、「いい会社に入れてよかった」と喜ぶか。この一点で、将来に天地の違いが生まれる。前向きな言葉を口にすれば、自然に心はその方向に定まっていく。

環境に振り回されるのではなく、自分が環境をも変えていく、環境をも味方にしていく、そんな生き方を目指したいものです。

東芝デジタルソリューションズ株式会社
ICTソリューション事業部 HRMソリューション部
真野 広

※記事に掲載の、社名、部署名、役職名などは、2021年3月時点のものです。


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