[第27回]学び続けることの大切さ~企業内大学の創設へ向けて③
2019.9.20
企業内大学「Toshiba e-University」を立ち上げるにあたっては、社員一人ひとりが自らの資産価値を向上させることに関心をもち、真剣であらねばならないとの考え方が根底に流れている。つまり、会社にいれば、会社が育ててくれるとの意識では、いくら企業内大学を創設しても、ことは進まない。
どうすれば、社員一人ひとりが自らの資産価値向上に関心を持てるのだろうか? そのために必要なことは、現状に満足しない生き方ではないだろうか。そのために今、自分には何ができるのか?
一方で、人生100年時代を迎えた現代にあってますます、どれだけ深く生きるか、どれだけ心豊かに生きるかが問われている。企業内でも企業を離れてからも社会人としてあるいは人生のテーマであるのかも知れない。
私自身が、学び続けることの大切さを実感した経験も紹介しつつ、どうすれば学びの場の必要性を実感してもらえるのかについて考えてみたい。
学び続けることの大切さを学ぶ
一つ目の経験は、率先垂範の思いから大学の通信教育に籍を置き、夏期・秋期スクーリングで、全国から老若男女が参加される講座に参加したときのことである。私よりも年齢的には先輩にあたる方も、講師の話を聞く真剣さや積極的に質問する姿などに大いに刺激を受けた。これまでの経験や知識を頼りに生きるのではなく、常に新たなことを吸収し、新たな発見に感動できる人は謙虚である。
スクーリング後には、課題レポートが待っている。それまで仕事上、長文でレポートをまとめることはなかった。久しぶりのレポート作成に、文章を書くことに慣れるまでが大変だった。久しぶりに使わない能力を使うことは大いに刺激になる。勉強の内容も勿論であるが、その環境に身を置くことの大切さを実感した。
二つ目は、キャリアコンサルタントの資格を目指したときのことだ。筆記試験はようやく通過したが、面接試験(ロールプレイ)を2度、3度と落ちた。私には能力が無いのではないか、キャリアコンサルタントは合わないのではないだろうかと思い悩み、さすがに、もう諦めようかと考えたことがある。「挫折経験があればこそ、キャリアコンサルタントとして、自らの経験が生きてくるのではないか」と先輩からの励ましを受けた。失敗にめげずに挑戦し続けてみようと、面接(ロールプレイ)対策コースを新たに受講し、自らを客観的に振り返ることができたことは大きかった。その結果、今まで自分のことは分かっているつもりになっていたが、それは慢心だったことに気づかされた。もっと、謙虚に学んでいかねばならないと感じた瞬間だった。その後、面接試験も合格し、今に至っている。
松下幸之助が生涯「素直」という言葉を愛したことは有名だが、真理に目を向ける素直さ、新たな学びに素直に挑戦し続ける心にも通じるのではないだろうか。最近、自分の周りにいる先輩方でも魅力的な人には、学び続けている人が多いと感じている。「今日よりは明日へ」の思いで、学び続ける人からは学ぶことも多い。過去の経験や知識だけを振りかざしても魅力は感じない。とすれば、自らも周りの人へ刺激を与え続ける人でありたいと身が引き締まる。
学び続けることは、人間的な魅力を増すこと
学び続ける人は、周りに良い刺激を与えることができるなど、人間的な魅力に溢れている。学びの象徴である企業内大学を、学び続けるための一つの手段として、社員自ら選択・活用してもらうためには、その効果がどれだけあるのかを知ってもらうことにもかかっている。
しかしながら、その効果はなかなか定量的には計れない。ご参考になるが、ここで一歩前進した事例の一つを紹介する。ある組織長が企業内大学を中心に据えて、人材育成に力を入れて取り組んだ。その成果が出る前ではあったが、他の組織にも飛び火して、取組み始めた組織が生まれた。その場面を振り返ると、組織には人材育成に熱い人が必ずいて、お互いにネットワークを介して、意識しあっているということだ。その人を種火として、その火を消さないように支援していくことの大切さを学んだ瞬間だった。
※記事に掲載の、社名、部署名、役職名などは、2019年9月時点のものです。
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