[第25回]企業内大学の創設へ向けて


2019.7.22

企業内大学を創設した件は、これまでにも触れたことがあるが、そのコンセプトやビジョンについてはあまり触れてこなかったので、ここでふり返ってみたい。

企業内大学構想の立ち上げ

東芝の社内カンパニー「eソリューション社」(当時)で企業内大学を立ち上げたのは2002年12月、いまから遡ること17年前となる。小生が人材開発部門へ異動して、最初に取り組んでテーマの一つである。

異動して早々に、上司のT部長から「企業内大学」構想を聞いた。構想を聞いてもポカンとしている状況だった。それと言うのもその頃の日本企業で、このような大学構想を採用している企業はほとんど無かった。しかし、アメリカでは既に約2,000社で導入していると聞き、英文の書籍「Corporate University」を購入して、手探り状態から始めたのも懐かしい。

その後、立ち上げた「企業内大学」は関心を呼び、お客様企業を訪問したり、セミナーや講演会、会社説明会でと、数えきれないくらい紹介の機会をいただいた。

「企業内に大学を創設と言っても、建物があるわけではありません」 「どの会社でも人材が宝と言いますが、その本気度を示すものとして大学を創設しました」 「大学には自分の進路や専門性によって、学部があります。企業内大学も自分の専門領域、目指す方向や仕事内容によって学部を決め、上を目指します」 「どこまでも自立を重視しています。組織長が自部門でも活用しないと損をすると思ってもらえるものを目指しています」 などと紹介した。

企業内大学が目指すもの

企業内大学「Toshiba e-University」の創設にあたっては、社内の人材開発部門のメンバーが集まり、皆の思いや志を表すものとしてビジョンを策定した。

  • 企業目標に合致し、世界に通用する人材育成の場と学習機会を提供する。
  • 従業員一人一人の能力や可能性を最大限に発揮できるよう「自ら考え」「自ら学び」「自ら行動する」自立・自律型の人材を育成する。
  • 東芝の良きDNA伝承と人材育成に自ら情熱を注ぐ新しい風土・文化創出を支援する。

これらのビジョンが示すように、企業内大学の目指すところとは単なる「学びの場」の提供ではなく、「学習する組織」「学び続ける従業員の育成」であった。

その根底には、社員が一律一斉の教育に慣れ親しんだ人材から、自ら考え、自ら学び、自ら行動する人材へ変身しなければ、絵に描いた餅に終わってしまうとの危機感があった。その意味でも、これまでも触れてきた人間力講座は「自分で気づかなければ、自分磨きは始まらない」との信念のもとに始めたもので、その根底を支えている。

一度学んだものが長く使える時代は良かったが、イノベーションが常に求められる昨今では、常に学び続けることが重要となる。しかし、学んだすべてが使えないわけではない。身に着けた技術やスキルは、イノベーションの波の中で、常に変化し続けているが、不変のものがある。それこそ、“人間力”ではないだろうか。

それにしてもT部長の先見性は今でも色褪せていない。そのような先駆の仕事に携われたことは、生涯の宝ものをいただいたようでもあり、T部長には感謝してもしきれない。

東芝デジタルソリューションズ株式会社
ICTソリューション事業部 HRMソリューション部
真野 広

※記事に掲載の、社名、部署名、役職名などは、2019年7月時点のものです。


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