[第24回]一次情報で勝負/わくわく感を大切に


2019.6.20

ノーベル医学生理学賞を受賞された本庶佑さんはインタビューに応えて『研究者になるにあたって大事なのは「知りたい」と思うこと、「不思議だな」と思う心を大切にすること、教科書に書いてあることを信じないこと、常に疑いを持って「本当はどうなっているのだろう」と自分の目で、ものを見る』ことの大切さを語っている。この言葉を聞いて、思い起した言葉がある。

一次情報で勝負!

一つ目は、青年塾を主宰されている上甲晃さんが「一次情報で勝負しろ」と言われていたことだ。一次情報とは、自分しかもっていない情報のことで重要だ。ネットで調べたような二次情報、三次情報では、みんなと同じ考え方しかできない。一次情報を得るためには現場へ行き、生の声を聞き、自分の肌で感じることが大事になる。また、二次情報や三次情報では、自分にとって都合の良い情報を集めて、自分の思考パターンは正しいと結論付けることもある。

私が、北米向けビジネス電話の設計開発に従事していた頃、営業の言うことを鵜呑みにするのではなく、米国の現場へ出かけ、現地の人から直接話を聞く機会を設けるように心がけた。一次情報として直接生の声を聞く体験を通し、設計者として製品の開発を我がこととして受け止めることができた。

二つ目は、JAXAで、「はやぶさ」プロジェクトマネージャを務めた川口淳一郎さんの言葉だ。川口さんには、人間力講座にも登壇いただいた。『教科書には過去しか書いていない。それは、いわば「過去を模倣しなさい」と言っているのと同じ。ある時期は模倣に励む時期があっても無駄にはならないが、人間には現状を肯定する保守性があるので、往々にして「過去の模倣主義」に留まってしまう』(川口淳一郎著「はやぶさ式思考法」)

私が設計開発に従事していた頃、前任者がなぜそうしたのだろうか、と考えを巡らせることを大事にしていた。そうすれば、過去の模倣ではなく、新しいことにもその思いを活かすことができると考えたからだ。

いずれにしても、共通することは過去の模倣ではなく「なぜだろう」「不思議だな」と思う心を大切にすることではないだろうか。

AIについても一言触れたい。持論ではあるが、AIは、過去の膨大なデータを分析し、傾向や対策を導き出すことを得意とするが、新しいことを生み出すまでは、辿り着いていないと言わざるをえない。

わくわく感を大切に

読者の皆さんは、仕事をやっていて、最近わくわくしたことはあるだろうか?

ここで、空想科学研究所の柳田理科雄さんの講演会に参加した時のことを紹介したい。子どもたちが中心の企画内容であったが、参加している子どもたちが目をきらきら輝かせ、「わくわく」しながら、楽しそうに聞いている姿がとても印象的だった。

出来事を目の前にして、心に湧き起こる「何故だろう?」「どうして?」「ちょっと、変じゃない?」といった思いに蓋をしないことの大切さを語っていた。目の前のことをスルーしないで、不思議だと掘り下げていくと、まったく違ったものに見えてくることがある。

それでは、目の前のことをスルーしないためにどうすれば良いのだろうか。いつも同じ環境の中にいるだけでなく、自分とは違う文化や考え方に触れる、本物に触れる、そして人間的な魅力に溢れた人に触れることが一助になるのではないだろうか。その出会いで得た、自分自身の内側からのひらめきや発見。人間力講座は、そんな自分の思考の癖を見直すための場でもあると考える。

あらためて、教科書に書かれていることも鵜呑みにしないで、「本当だろうか?」と自分の頭で考えてみたい。子どもたちの「わくわく」「きらきら」を思い起こしながら・・・。

東芝デジタルソリューションズ株式会社
ICTソリューション事業部 HRMソリューション部
真野 広

※記事に掲載の、社名、部署名、役職名などは、2019年6月時点のものです。


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