[第18回]仕事をゲームのように楽しむ


2018.12.20

先日、うかがったお客様から、本部主導で作成してきた人材育成の良い仕組みを現場で積極的に活用してもらうためにはどうすればよいのか?とのお話をいただいた。このお客様の人材育成へかける熱い思いをうかがいながら、当社で企業内大学「Toshiba e-University」を立ち上げた時のことを思い起こした。

人材育成と人事評価を連動させれば、アメとムチになって展開が進むかもしれないが、果たしてそれが正解なのだろうか?人材育成は、見える成果を急ぎ求めるのではなく、どこまでも自立と自律がベースでなければならない。自ら育つことにより周りの人への配慮が変わり、仕事の質が変わり、仕事の成果にも結びつき、その結果、評価されるというゆるやかな連携こそ人材育成に求めるべきではないだろうか、と思い悩んだ日々は無駄ではなかったようだ。

昨今、これまでの会社生活を振り返ると、逃げずに真正面から取り組んだ仕事は、どこかでその財産や経験が生きてくるように感じているが、皆さんはいかがだろうか。

今回は『仕事はゲーム <遊び心> 先を読む/自分の思いを込める/何故かを考える』を通して、仕事が楽しみになったら・・・についてお話しする。

遊び心を持て

仕事は真剣勝負で取り組むべきだと思われる方にとって「仕事はゲーム」「遊び心を持て」と言うと不謹慎だと思われるかも知れない。

以前紹介したN課長は「目の前の仕事に全力投球だけでは、いつかは使いものにならなくなるぞ」と教えてくれた。続けて、「どんなに忙しくても、目の前のことに100%を投入するのではなく、どこかに余力を持って、先をにらんで自分への投資を忘れてはいけない。今さえ良ければではいけない」と。

この言葉は、自身の仕事スタイルや取り組み姿勢を決めてくれた一言となった。 どんなに忙しくても心の余裕を持って、アイディアを特許提案にまとめたり、仕事を少しでも早めに切り上げ、帰宅してから英会話に取り組んだりしたのも、そのおかげだと思っている。

先を読む

上司を説得したり、関係者を味方に巻き込んだり、仕事は人との折衝で成り立っている。N課長は交渉するときに「何手先まで読んで、その場に臨むかで決まる」と教えてくれた。「フローチャートを書くように、相手がこう言ってきたらこう答えよう、別のことを言ってきたらその時はこのように答えよう、というシナリオを何手先まで考えているかで勝負は決まる。自分は十手先くらいまで読んでいる」と。

そのN課長が交渉する場に同席した時に、悠々とした臨機応変な対応に感心したことが何度もあったが、後から聞くと事前の準備で決まっていたのだ。自分には交渉力がないと決めつけていたが、どこまで入念に準備して臨んでいたのか?が重要である。私はこのことで幾度となく反省させられた。結局は、自分の中に「この提案を必ず実現したい」との熱き思いがあるか否かではないだろうか。

自分の思いを込める・何故かを考える

あるとき、ハードウェア設計担当として、他の人が書いたデジタル回路を改良することになった。人が作った回路図を眺めていてもまったく面白くない。そんな時に、「それぞれの回路には、必ず存在している意味や理由があるよ」と先輩が教えてくれた。こういうことがやりたいからこの回路があるのだ、と設計者の思いを感じることができてからは、回路図を眺めるのが面白くなった。
今度は、新たな回路に自分の思いを込めてみよう。自分の思いをちりばめることができると、回路への愛着も格段に高まった。この仕事スタイルは、回路設計だけでなく、どんな仕事でも大切にしたい。前任者の思いをくみ取り、そして自分が引き継いだ仕事へは“自分の思いをふりかける”ことに努めた。

このように仕事をしていると、自分の思いがなく仕事をしている人を見ると「仕事を楽しんでいますか?」と問いかけたくなる。

入社早々から職場の人間関係に悩み、この仕事は自分には合わないなと思い悩んでいた日々を“先輩のゲーム感覚”が救ってくれた。「仕事を楽しむ」智慧を大切にしたい。

東芝デジタルソリューションズ株式会社
インダストリアルソリューション事業部 HRMソリューション部
真野 広

※記事に掲載の、社名、部署名、役職名などは、2018年12月時点のものです。


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