[第10回]社会人基礎力から見る人間力⑤
2018.4.20
新入社員を迎え、新年度が始まりました。一方、私の周りでは定年を迎える人が増えてきましたが、まだまだ元気で「ゆっくりしたい」という感じではありません。これまで以上に長くなる個人と企業・組織・社会との関わりの中で、一人ひとりが、自分らしく活躍し続けるためには、どうすれば幸せなキャリアを描けるのでしょうか。
そのためのヒントを求めて、今回は「情況把握力」と「発信力」の視点から考えてみたいと思います。
チームで働く力『情況把握力』
情況把握力とは、刻々と変化する情況に対して、迅速かつ最適な対応を主体的に行うために必要な力です。例えば、相手の立場や役割、相手の置かれている情況、相手の心理状態などから、自分の持てる時間的・能力的・職務的制約から自分の役割を考えます。
時には自分が自発的に考えた役割まで手を伸ばしてみることも必要です。仕事の守備範囲は、決まっているようで決まっていないものですから。自分の守備範囲を広げることは、自分の可能性を広げることにも通じます。
拙い体験ですが、私は通信機器の設計開発に従事していた頃、ハードウェア設計担当に所属していました。何か問題が発生すると、原因究明の場は、ハードウェア担当とソフトウェア担当のせめ合いの場でした。「ハードに原因があるはずだ」「ハードは問題ない。ソフトに原因がある」とお互いに譲りません。
両者の垣根を感じていた私はその後、自らソフトウェア設計レビューの場にも参加し、ハードウェアでできることと、できないことをソフトウェア担当者にも知ってもらうことに努めました。その結果、お互いの動きが分かるため、原因解析もスムーズになりました。
それ以降、ソフトウェアのレビュー会議にも呼ばれるようになり、自分の守備範囲が広がったことを実感しました。
話は変わりますが、アメリカの文化人類学者であるエドワード.T.ホールが提唱したコミュニケーション環境の識別方法に「ハイコンテクスト文化」と「ローコンテクスト文化」という概念があります。
コンテクストとは「共通の知識・価値観・ロジック・嗜好性」などを指しており、コミュニケーションにおいてこれらのコンテクストに頼り、言葉を省略する傾向が強い文化をハイコンテクスト文化、その逆をローコンテクスト文化といいます。日本は「阿吽の呼吸」「空気を読む」という言葉で表現されるように、ハイコンテクスト文化の典型といわれています。
しかし、ビジネスがグローバル化し、価値観も多様化している中では、ロジカルに物事を説明でき、自己主張をしっかりできる人材が求められます。
チームで働く力『発信力』
発信力とは、「自分の意見を相手に分かりやすく伝える力」のことです。
自分のことを少しふり返ってみてください。
あなたは「自分が話したいこと」と「相手が聞きたいこと」のどちらを優先して話していますか?
あなたが、どんなに良い意見を持っていたとしても、それを発信しなければ相手には伝わりません。さらに、どんなに巧みな文章で、上手に話したとしても、それが相手に理解されなければ、発信力があるとはいえません。
「正確に」「簡潔に」「わかりやすく」を心がけましょう。
正確に伝えるために大切なことは、事実と自分の意見や思いを分けて伝えることです。
わかりやすく伝えるためには「今日は〇〇についてお話しします。ポイントが3つあります。1つ目は・・・、2つ目は・・・、3つ目は・・・」と宣言してから、それぞれを順番に話す方法があります。聞く方も「あと一つか・・」と心の準備をすることができるし、メモも取りやすくなります。
立場や視点を変えて、「相手が聞きたいこと」から話し始めてください。何か、気づくことがあるはずです。
東芝デジタルソリューションズ株式会社
インダストリアルソリューション事業部 HRMソリューション部
真野 広
※記事に掲載の、社名、部署名、役職名などは、2018年4月時点のものです。
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