特集・トピックス:スカイツリーより高い!?
落差714メートルの揚水発電所
スカイツリーより高い!?落差714メートルの揚水発電所
山梨県の山中、地下500メートルの場所に、クリーンエネルギーの発電所が存在する。といっても、太陽光でも風力でもなく、地形的な高低差を生かした揚水発電所である。
水力発電は、高いところから低いところへ水を落とし、その位置エネルギーを電気エネルギーに変換する発電システムである。その中でも揚水発電は、上下に貯水池を設け、電気の使用量が比較的少ない時間帯に下池から上池に水をくみ上げ、電気の使用量が多い時間帯に上池から下池に水を落とすことによって発電する。
とりわけ山梨県の「葛野川発電所」では、有効落差714メートルを使って1台で400MWを発電できる、世界最大級の巨大揚水式水力発電システムを備えている。水源豊富で山岳地帯の多い日本にとって、揚水発電は新たなクリーンエネルギーの有力候補になり得るのだろうか――?
電気を水の位置エネルギーとして蓄える揚水発電システムのメリット
「揚水発電では、ポンプ水車を水車として水の力で回し、直結している発電電動機で発電します。そして水をくみ上げる際には、この発電電動機を電動機として電気で動かし、ポンプ水車をポンプとして使って揚水しています。電気というのは使用量と発電量をそろえなければ、品質が悪くなってしまうもの。そのため電力会社は、電気の需要変動に合わせて、常に発電量を調整しています。揚水発電システムはこうした調整に、非常に長けた発電方式といえるでしょう」
そう語るのは、東芝・水力プラント技術部の森淳二氏だ。
揚水発電所は、電気を水の位置エネルギーとして蓄えることのできるシステムであり、いわば「水を使った巨大な蓄電池」と森氏は表現する。
同社が葛野川発電所に納入した4号機は、水を持ち上げる高さを指す「揚程」が785メートルと世界最高値を誇るだけでなく、可変速揚水発電システムとしても世界最大容量機であるという。
「例えば原子力発電所や大容量の火力発電所は、常に一定の出力で運転したほうが効率的であるため、夜間には余剰電力が生まれてしまいがちです。しかし、運転速度を任意に制御できる可変速揚水発電システムでは、時間帯に合わせて揚水量、つまり電気の使用量をコントロールできるため、調整用に無駄な発電をする必要がありません。」
現在、水力発電所は日本全国に2,000カ所以上あるが、そのうち揚水発電所は約40カ所と少ない。それにもかかわらず、設備容量では水力発電の半分以上を揚水発電が占めている現実があるという。今、あらためて揚水発電に着目し、有効活用する価値は十分あるといえるだろう。
【出典】TOSHIBA CLIP (http://www.toshiba-clip.com/detail/2989)(株式会社東芝)