[第37回]人間力を磨くは何のため
2021.1.15
先日、私の父が95歳で穏やかに亡くなりました。生前の希望もあり、音楽を奏でてのお見送りとなりました。丁度、父の誕生日と重なったことから、お見送りにはバースディソングが流れ、みんなに誕生日を祝ってもらったのは初めてかなと思える素敵な旅たちとなりました。
「余生」よりも「与生」をとの言葉通りに駆け抜けた父。私も周りに希望と活力を与えられるよう、人間力を磨いていかねばと新たな思いに立つ機会となりました。今回は、その人間力を磨くは何のためについて考えてみたいと思います。
自分の思いは受け止めてもらっていますか
私の母校の先輩でもある山本五十六の言葉に『やってみせ 言って聞かせて させてみて 誉めてやらねば 人は動かじ』とあります。
自分自身をふり返ってみた時に、上司に信頼してもらったり、認めてもらった場面では、安心して思う存分に力を発揮することができたと感じています。
通信機器の設計開発を担当していた時のことです。製品出荷の〆切が迫るなかで、トラブル発生です。解決策を今か、今かと製造部門が待っている中で、なかなか解決策が見つからず、針の筵状態です。私も矢継ぎ早の催促に、困り果てていた場面でしたが、そんな時に、私の上司が「うちのエースを投入しているので、これ以上どうしようもない」と製造部門を説得してくれたのです。私は、その話を伝え聞いた時に、そこまで信用してもらっていることに感謝し、その思いに何としてもお応えしようと、スイッチが入りました。その解決へ向けて徹夜の連続でしたが、仕事の醍醐味を教えてもらった忘れ得ぬ金の思い出となっています。
このエピソードを通して、組織の中で思う存分に力を発揮するためには「安心して言いたいことが言える、安心してやらせてもらえる」その環境があればこそだと痛感しました。であるならば、今度は、自分がリーダーの立場になった時には、恩返しの思いでメンバーの環境づくりに徹しようと決意しました。
一方、トラブル発生で、厳しく指摘を受けたらどうでしょうか? プロとして仕事をしているわけですから、できて当たり前かも知れません。皆さんは、指摘を受けたその内容の良し悪しの前に「何故、この人から言われないといけない?」と考えてしまうことはないでしょうか。
もしも「自分のことは棚に上げて・・・」「この人からは言われたくない」と感じていたならば、いくら正しいことを言われたとしても、素直に受け止めることはできないはずです。一方、常日頃から尊敬し、自分の目標にしているような先輩から言われたならどうでしょうか?
リーダーとして、相手に自分の思いをしっかり受け止めてもらうためのポイントは、自身の人間力にあるようです。
定型コミュニケーションだけで十分でしょうか
少し、話は変わりますが、コロナ禍でテレワークが増える中、皆さんのコミュニケーションは自然発生に任せていないでしょうか? 平常時には気づかなくても、大変な時だからこそ、差がつくポイントがこの辺にありそうです。自ら前向きな、能動的なコミュニケーションが必要ではないかと感じています。
Web会議は必要な時に、必要な人とコミュニケーションをとることができる便利なツールです。しかし、定型以外のコミュニケーションはとれているでしょうか?
私の場合、職場を離れて先輩と懇談しているとき、廊下ですれ違ったメンバーと雑談しているときに、人間力を磨くためのヒントを得られたことがありました。人と触れることで刺激を受けたり、自分の思いを言葉にして話そうと思いを巡らせている中で、自分の考えが腹落ちしたりする経験は誰にでもあるのではないでしょうか。これはいずれも、定型ではないコミュニケーションで、自ら声をかけたり、かけられたりする場面と言えます。テレワークでは、なかなか発生しづらい場面であり、待っていても訪れてきません。
以前、雑談の大切さをお伝えしましたが、自ら積極的にコミュニケーションを取ることを心がけてみてはいかがでしょうか。コミュニケーションは、相手のいることですから、もちろん相手への配慮も必要です。
デジタルの世界ではオンかオフかの選択となるため、漏れ伝え聞くようなアナログの機会はなかなか作れません。余談ですが、音声をデジタルで通信する前のアナログの世界では、漏話という現象がありました。
能動的なコミュニケーションの機会を作るには、相手との関係構築が必要です。そのための第一歩も人間力に辿り着くのではないでしょうか。
東芝デジタルソリューションズ株式会社
ICTソリューション事業部 HRMソリューション部
真野 広
※記事に掲載の、社名、部署名、役職名などは、2021年1月時点のものです。
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